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五章 新しい付き合い

 眠りから覚めると、いつも通りの天上だった。

 時が経つのは早いものでもう、明日は約束の土曜日になっていた。

 通学中に話していると、やはり土曜日の話に移り変わった。

 「明日は行けそうですか?」

 「はい、行けますよ。いつ頃からですか?」目を合わせて聞く。

 「そうですね。午後三時頃からでどうでしょうか。」少し考えてから斜め上を向いて聞いてくる。

 「良いですよ。抑々の話なんですが、なぜ河川敷に行きたいんですか?」

 「志村三丁目からだと荒川まで行くのは少し距離がありますが、天野くんの最寄りの西台だと丁度荒川と近くなって行けるんですよ。なので誘ってみました。見てみたいんです。荒川から見る景色。」

 「なるほど...。」(よくよくも考えずに別れてしまったが結局何で見たいんだろう。)

 いつも通り彼女とお別れた後教室に向かい授業を受けた。

 入学して二ヶ月が過ぎたにも関わらず、私は人との会話を一切取っていなかった。

 そのことについては何の問題もなく生活できているが、それは今だけの玉響の平穏であることを私は知っている。

 話しかけてきた人とは話術で乗り切れたが、グイグイ来る女子は相変わらず苦手だった。

 「天野くんはなんで誰とも喋らないの?」前の席の子がいないのをいいことに大石さんが座って話しかけてきた。

 「単に人と話すのが苦手なだけですよ。」言いたくないことまで言ってしまったと言う顔をして私は話す。

 「そうなんだ。私と友達になろうよ。」

 「私は基本的には友達は作らない。作ったとしても学友ぐらいだ。もしかして君も友達がいないのかい。」(こういう人間にはド速球に聞く方が良い。)

 「天野くんは面白いね。学友も友達も同じようなものでしょ。ところでさ、下の名前はなんて言うの?少しは話さないと高校生活楽しくなくなっちゃうよ。」(何でこうなったんだろう。)

 「余計なお世話だよと言いたいところだけれど実際楽しくない。下の名前は史佳って言う。」

 「史佳くんか。かっこいい名前だね//こういう風に周りの人とも話してみると楽しいよ。」

 「そんなこともないだろう。私が皆の中に入ろうとしても除外されるだろうし。そうされる前に自分から入らないの。学友なら君一人で十分だし。おっと申し訳ないがこの話の続きはいつか話すとしよう。」(何とか逃れようと話を無理やり切り上げてしまった。)

 「あっ!。ちょっと待ってよ。天野くん!。」

 なんとか逃げるために言い捨ててしまった。

 

 翌日

 (午後から水戸さんと河川敷にいかねばならないからな。準備をしなくては。それにしても暑いな。)

 白シャツに着替え、帽子を被り部屋を見渡してボーっとしていた。

 「お兄ちゃんどこに行くの?」

 「何でわかったんだい?これから荒川の河川敷まで。」

 「そう。気を付けてね。」そういった瞬間俯向いて見送ってきた。

 「では。行ってきますよ。」(何でだろうな。)

 ドアを閉めまっすぐ荒川に向かった。

 「水戸さん。」

 「天野くん。」河川敷は見えやすく直ぐに合流できた。

 「ここからの景色はやっぱりいいものですね。」辺りを見渡し話す。

 「来たことあるの?」

 「何回もありますよ。悩んだり思い詰めたりしたときに来ると、一気に晴れますから。」(なんだかんだ言って私も此の場所が好きだったんだな。)

 「慥かにそうですね。見てると気分が自然と晴れてきます。」

 暫く遠くの眺望に思い浸っていると「天野くんは今までに好きになった人とかいるの?」

 「急になんですか。それは秘密ですよ。」

 「そうですよね。急にからかったような事聞いてすみません。」少し笑いながら話しているのに違和感を覚えた。

 「別に聞くことは良いと思うよ。何でも聞いてくれればそれに答えられる問いだったら答えるから。」

 「では。私はあなたのことが好きです。付き合ってはくれませんか。」黙って水戸さんの顔を見つめる。

 「そうだね。私からも。私は元より心臓の病気を持っています。それでもその思いは変わりませんか。短い間しか会えることはできませんよ。」そんな事を言ってもどうにもならないことを知るながらも、どうしても知ってほしい事を打ち明かす。

 「勿論です。私は何かを黙っていても、私には見えない何かに気づくあなたを、好きになったんですから。」

 「では先程の言葉は取り消していただけませんか。」

 「え?」

 「私の方からその言葉を言いたいので。」

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