四章 ズル休みでの誓い
(努々昨日の夜の夢は銅色だった。それだけは強く覚えている。今日も学校か。)
「良し行くか。」大きなブリーフケースを肩に掛け家族全員が寝ている家の玄関を閉めた。
駅に行く道中に爆蘭の華が小さく々々々咲いていた。
華とは裏腹に西台駅に着くと喧騒としていた。ダイヤの大幅遅れによるものだった。
これは非常にまずい。
「申し申し。帝國第五高等学校ですか。私は一年一組一番天野と申します。最寄りである三田線の大幅の遅延により遅刻してしまいます。」スマホを肩に掛けながら人混みの中を進み、出口付近の柱に立ち靠れた。
「はい。先程からいろいろな生徒から連絡が来ています。今日の授業は三時間目からの開始になる模様なので落ち着いて行動してください。」
「はいわかりました。」電話を切り次はっと。
「もしもし?」
「こちら天野です。水戸さんのところは遅延大丈夫ですか?」(同じ路線だから止まっているだろうが念の為聞いてみよう。)
「こっちも無理そうです。私は学校に欠席の連絡をしたので大丈夫です。」それなら良かったと電話越しで胸をなでおろす。
「そうでしたか。大丈夫で何よりです。」ホッとして電車を待っている。幾許の時間が経っても電車が来る様子は毛頭見受けられなかった。
「それよりも天野くんはこの後学校に行くの?」
「はい、そうですね一応行く予定になっていますが、この調子では学校まで着けなさそうなんですよね。」冷静に判断して言う。
「欠席はできるんですか?」
「そうですね。欠席するかどうかということも考えてはいます。」
「なら私と一緒に勉強はしていただけませんか。」(少しも迷う必要はないな。学校は退屈だしあんまり良い事もないだろうし。今日ぐらいなら大丈夫だろう。)
「別に問題はないですよ。どこで待ち合わせますか。」結局欠席し勉強を教えることを引き受けた。
「蓮根まで図書館まで私は行きたいですね。」
「わかりました。ここからだと五分程度で着いてしまうので先に待ってますね。」
「わかりました。」
電話が切れ西台駅から脱出し図書館の方に向かって歩き始めた。
蓮根図書館で待つこと二十分ほど。
「お待たせしました。」
「全然大丈夫ですよ。」流石に春も終わりに差し掛かり、二人共が半袖シャツになってきた。
「今日は学校でやるはずだった教科を教えてください。」リュックの中から教科書類を広げた。
「勿論良いですよ。」
暫く勉強に夢中になっていると「すいません。学校休んで本当に大丈夫だったんですか?」
「大丈夫ですよ。行っても授業は阿呆程簡単ですから。」
「帝五なんですよね?」
「はい。そうですよ。」
「本当に頭いいんですね。憧れちゃいます。」そこまで言われたことはないので、黙ったまま照れてしまった。
「少し気になったんですけど、昨日の電車で話していた事ってなんだったんですか?あの、時間を大切にしないといけないってやつです。」
「あぁ、それはですね。」(本当のことを話したほうが良いのか。厭今はまだ隠しておかないと。)
「時間の大切さの自覚ですよ。お金があってもそのお金を使う時間がなかったら意味がないでしょ。時間を有効に使うじゃなくて、時間を有効に作るが正しいと思うんですよね。」(何とか誤魔化せただろうか。)心配そうに返答を待っている。
「よくわかりました。」
「?」(本当に納得してくれたのだろうか。)
「話は変わるんですが来週の土曜日は空いてますか?」一間を開けて私は考えながら答えた。
「はい。空いてますよ。」
「良ければその日荒川の河川敷に行きたいんですけど良いですか。」
「良いですけど何をするんですか?」
「いえ、有効に時間を作ろうかなと思いまして。」
「成程。わかりました。来週の土曜日ですね。」(私の言ったことは殆ど聞き漏らしていないのだと感心したよ。)
その日は一日中図書館で話しながら勉強をし別れて帰った。
シャワーを浴びている最中(本当のことを言おうか迷うな。本当のことを言ってしまったら水戸さんまで離れていってしまうような気がする。)葛藤していてもどうにもならない。
自分の部屋に戻ってじっくり考えていると「お兄ちゃん。今空いてる。」妹の華が何かしにやって来た。
「大丈夫だけど。」
「良かった。お兄ちゃん私来年から高校でしょ。もう着ない制服を私に頂戴したいなって。」
「別にいいが新しいものじゃなくていいのかい?」
「良いの。お兄ちゃんのだから良いんだもん。」小声で何かを言った。
「なんて言ったんだい。」
「なんにも言ってない。」
「そうかい。」
今日はこの調子で眠れそうにないな。




