二章 未知なる天津風
学校生活が漸く始まり、友人関係を広げてみようと考えながら朝がきた。
さてではいつも通り寂寥の路を通って電車に乗った。
{志村三丁目で停止する}
あの女の子が乗ってくる。
(結局名前も聞けなかったな。本当に覚えてしまうってことは厄介に付き纏ってくるな。)
そんな事を余計に考えてしまい、悄気げてしまった。
私の隣に立つなりバッグから水筒を取り出し飲んでいた。
そんな姿を横目に微分していると、電車がいつものカーブで揺れる。その時水筒から何滴かの雫が落ちる。それも私の革靴に。
雫が落ちたのが革靴に響いて足先が感じ取った。
「あっ、すいません。」焦りつつハンカチを取り出し、拭こうとしてくれそうだったが私が先に拭いてしまっていた。その時は遠慮がちに屈み込んでいた。
起き上がるとともに「大丈夫ですよ。」と成る可く優しく声をかけた。
「すいません。あの。昨日もカフェで会いましたよね。あの時は突然帰ってしまってごめんなさい。」まだ電車内に人が少ないからか、丁寧に御辞儀までして謝ってきた。
「いえいえ。全然気にしてないですよ。」ハンカチを衣囊に仕舞い込み黙って窓の外を見始める。
「あのいつもこ時間に乗ってるんですか?」黒色の不織のマスクを付け直し聞いてくる。
「はい。そうですね。いつも決まった時間に乗ってますが。」電車が揺れて眼鏡の縁が柱にぶつかる。
「大丈夫ですか?」頭を見上げるように見てきた。
坊主頭だから頭と額と顔のどこを見ているのかがわからない儘だった。(頭を見られると気にしてしまうな。)
「大丈夫ですよ。偶当たってしまっただけなので。」そう言って私は眼鏡を元の位置に戻した。
「そうなんですか。会って直ぐですがお名前聞いてもいいですか。」
「はい。私は天野史佳と申します。」
「私は水戸静香です。今年の三月に宮崎の方から引っ越してきたんですけど。今は高校二年生です。天野くんも高校生ですよね。」
「はい。帝國第五高校に入ったばかりで。」謙遜しながら言う。
「帝五にですか!頭いいんですね。」大きめの声で思わず話していた。
(よく話してくるな。電車の中で吃驚してしまうよ。)
「それでなんですが、私に勉強を教えてもらえないでしょうか。」
「別に良いですが、北野女子高校も頭いいではないですか。」(そして何がそれでなんだろう。)
「私はその中でも成績が良くないんです。頑張って勉強して何とか北女に転校が決まったんです。」
(衝撃発言の連続で肯定するしかできていない。)
「一先ず降りましょうか。」電車内が込み始め開けた所なら話しやすいと思い場所を移した。
山手線のホームに向かう途中で「わかりました。勉強を教えましょう。」決心を着け覚悟も決めて。
「ありがとうございます。」水戸さんが初めて私に笑顔を見せながら言う。
地上に出られた。
いつもと同じ時間というわけではないが、結果は基本的には変わらない。
けれど今日は知らない人に声をかけられたという新しいことがおきた。
「昨日願ったのが効いたのかな。」昨日の夜を思い出す。
(水戸さんはなんで走っていってしまうのだろうか。人見知り過ぎるのかな。)そんな事を考えていたら全く持って予想もしていない人に声をかけられた。
「あの、すいません。」
「はいなんでしょう。」眼の前には都警と書かれた金色の紋章が正面に貼られた軍帽を被り、紺のスーツに三つの衣囊の付いた東京都警察と胸の位置に書いてある服を着た、二人の男性がいた。
「こういうものなんですが、あなた何かしてませんよね。」なぜか人を怪しむ眼で私を見てくる。
「警察が一体何の御用ですか。私はこういうものですが。決して反社的な者ではありません。」自分の生徒手帳を見せた。
「失礼しました。けれどその服装はどうして。」
「これは私の私服ですが。」本当のことを言えば大丈夫な筈。そう思っていた時期が私にはありました。
「はぁ、そうですか。本当に失礼しました。」そういうと蒼惶と帰ってしまった。
(あちら側からから聞いといて何なんだ。)正門前で呼び止められたがすぐに帰ってしまった。
(何が変だったんだろうな。)学校の教室で考え。
(学校生活に突入してから、唯一話しかけてくれたのは水戸さんだけだったな。)
自分でも自分がかなりの変人であったり狂人であるとよくわかっている。
けれどそれだけで人は決めつけてしまうのか。
結局誰とも会話せずに学校が終わってしまった。
教室ではみんなが少しづつ仲良くなっている。そんな事を見ていると自分が心底変わった人間、だということを自覚してしまう。
授業も阿呆程簡単だったし、高校生活って何でこんなに代わり映えしないんだろう。
「はじめましてだね。名前なんて言うの?」如何にも校則がないのを楽しんでいるような女子生徒が話しかけてきた。(私に話しかけられるって、凄い根性してるな。)
「天野と申します。」
「天野くんか。私は大石瑠美子。」頬を両手で抑えながら話してくる。
「大石?あぁ、警視総監の娘か。」大石健三郎。日本の警視総監をやっている。
「そうなの。よくわかったね。でもそんな事気にせずに接してほしいな。」支度が終わって帰る生徒がいる中、私と大石さんは教室に座っていた。大石さんは両手を頬で抑えながらこちらを見てくる。
「抑々気にしていませんけどね。」
「面白いね。君。友だちになろうよ。」
「別にいいですけど。なぜ私を構うんですか?」何が面白いのだろうと謂わんばかりの顔をして言う。
「え。そんなの決まってるじゃん。ひと目見ただけで格好良いって思ったからだよ。」
(何を言っているんだ。一先ずこ場から立ち去るか。)
「おっと申し訳ないが時間がこんなに立ってしまっているね。こ後用があるんだ。ではまた明日。」
「あ、ちょっと天野くん。」廊下の後ろの方から私を呼ぶ声が、小さく聞こえたが今はちょっと無理だな。
衣囊からスマホが震える。
「誰からだろう。」スマホの画面を見るとメールが届いていた。
開いてみるとそれは水戸さんからだった。
「大塚駅周辺の上池袋図書館で勉強を教えてくれますか。」成程
「大丈夫ですよ。今から向かいますので暫くお待ち下さい。」っと。
「良し。行くか。」




