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一章 不変の日常?

 世界は成功を嫌うだろう。

 たくさんの正解・成功を治めた研究者が、たった一回の失敗や間違いを功績以上に過大に見てしまう。

 たった一回の失敗のほうが世間というものは注目する。

 ではそんな失敗を恐れて、失敗しないようにやれる人間はいるだろうか。

 失敗や間違いを侵さない人間というものはたしかに存在する。

 それは何もしない人である。

 何もしない人になるよりかは、失敗するかもしれないけれどなにかする人のほうが良いだろう。

 

 全員が全員何もしなければどうなるだろうか。

 人並み以上や以下の人間を世間はどうして切り取り嘲笑うのだろう。

 どうして勝手に自分基準に考えてしまうのだろう。

 それは..。


 私の何気ない朝は五時から始まる。朝の風に打たれて、舵を切る。

 「史佳〜。降りてきなさ〜い。」一階から大きな女性の声が聞こえた。いつもの甲高い声で。妹はまだ寝ているだろうか。

 朝の母の目覚めの声は、愛の挨拶のように部屋に広がっていった。

 この悠久の感触はいつまで経っても変わらない。

 「今日は高校初の登校日なんだからそばつとしないと。」なんとも難しい言葉を使うものだ。普段というのは恐ろしいほど退屈だと感じてしまう。

 「わかりました。では行ってきます。」玄関のドアを開き大きく一回息を吸い込んだ。

 まだ冬の残寒が春に入るため、残滓ざんしの如く溜まっている。

 その御蔭おかげか私の服装もいつも通りの喪服のようだと云われている正装に、ズートスーツを纏い縁の広い黒色のフェルトハットを被った防寒着になっていた。

 この様子を見る限り私は通常とは逸脱している。けれどそれで尚良し。

 坂道を歩き信号を渡る。車を待ち、緑道沿いを歩く。

 中学生の時も通っていたこ路こそも全く変わらないものだ。

 西台駅に着くと掲示板には大和行と掲載されていた。

 いつもと同じ時間いつもと同じ号車の同じドア。六時五十六分発大和行二号車三番ドア。

 なぜかはわからないがこ場所が私の定位置となってしまった。このことは今に始まった話ではない。

 乗り込むといつもと同じ発進向きの右側に立ち前に座る人を待つ。座ってしまうとドアまで行くのが面倒になってしまうのもあるが、一番の理由は他の乗客を搔い潜っていかなければならないこと。之が一番の理由になってっしまう。

 立って揺られている最中も、基本古典力学の本に載っている問題を暗算している。

 こ問題が常に変化することがいつもの楽しみでもあった。

 朝が曇りの時は基本本しか見ない。晴れている時や、雲が横から見える時は食い入るように見る。空を見ているとなぜだか気が落ち着いて一日が楽に感じる。

 {志村三丁目で停止する}

 (今日もなにか特別なことは少ないかな。)そう思いながら暗算を楽しんでいた。

 ただ一度見たものを数日間忘れられないことは非常に困っている悩みでもある。

 これだけは自分で意識していても、余計に気になってしまって忘れさせてくれない。

 (電車のいつどんな人が乗ってきたかを知らずの内に覚えてしまう。これがなんとも厄介なことか。)

 それから巣鴨まで揺られ下車。

 トンネルという殺風景の同じ景色というのは飽きてしまう。

 そのまま山手線に乗り換え大塚まで移動。山手線は本当に良いものだ。外の外観が見える電車に悪いものはあんまりない。

 下車して南口で地上に出て、帝國第五高等学校まで暫く歩く。

 驚いたのはこ道順全てで、私の後ろをついてくる子の存在だ。

 今までずっと気になっていたけれど、彼女はどこに行くのだろうか。

 襟元のところに紺と浅青色のクロスタイプ柄の蝶ネクタイにハート型の校章。

 恐らく北野女子高校の子だろうな。もう入口は眼の前だけれど。

 正門の前には入学式と書かれた板が立て掛けてあり、そのまま校門から入る。

 指定された教室に入ると、中学去る事ない生徒が誰もいなかった。

 まさかのこ時間は私一人だけ。

 黒板には入学を記念する芸術がなされているが、目もくれず席の順番表を確認して一人教室にいた。

 それならまた数学の本でも読んでいようかな。再び鞄から本を取り出して読み始めた。

 漸く一人目と教室に来た所で違う教室でも人が入り始めてきた。

 そのまま時間が流れて全員の出席確認が済んだ。

 配るものを配り終え今日のところは解散となった。(少し早いな。)

 校門を出て朝は見れなかった天道様を見上げる。

 「まだ時間があるな。どこか時間を潰せる所。」

 近くで本を読める場所を探していると、良さげなカフェを見つけた。

 (ここなんて良いところだな。)

 街中にある白十字という喫茶店に足を踏み込んだ

 入って見ると二階の席に座り、キリマンジャロコーヒーを頂いた。

 人が座ったり立ったりを繰り返し、入れ替わっていった。

 そんな所で見覚えのある女子高生が私の隣りに座った。

 白いシャツに蝶ネクタイ。鞄には下の方に白いラインが一本と百合の紋章が入っていた。

 今日電車から高校までずっと私の後ろを歩いていた人だった。(やっぱり北野女子高校だったか。)

 予想が的中し満足感に浸っていると少し声をかけられた。

 実際問題的に私は初対面の人と話すのが、あまり得意ではない。

 「あの。すいません。」首を傾けて背を縮みこませながら言う。

 「はい、なんでしょう。」

 「今日どこかでお会いしたように思いまして。」後ろ髪を気にしながら話す。

 「はい。会ってますよ。早朝の大和行二号車三番ドアの左側に立っていました、それがどうしましたか?」取り敢えず聞き入ってみよう。

 「いえ、私も見覚えがあるなと思っただけで。すいません。」おもむろにかがみながらバッグを持って立ち去ってしまった。

 「結局誰だったんだろう。」名前を名乗ろうとしたが早々に立ち去られてしまった。

 結句わからない儘終わってしまった。

 今日という一日も終わり帰ってご飯を食べて寝る。

 こ動作すらも普段と変わらない。

 「なにか平素以上のことが起きてくれたら良いのに。」退屈そうな表情で布団に寝っ転がる。

 「お兄ちゃん?」ドアから顔を覗かせながら妹が話しかける。

 「何?どうしたんだい。」首だけ枕から浮かして耳を傾ける。

 「私の話聞いてくれる?」

 「結局どうしたんだい?」

 「先週から新学年が始まったでしょ。その時にお兄ちゃんの話になって、私の友達が会いたいって言うの。」

 「そうか。別に会うぐらいなら良いけど。」

 「そう?ならそう伝えておくよ。時間は追々伝えるね。じゃあ、お休みなさい。」蒼惶そそくさと自室に帰ってしまった。

 「はい。お休み。」(絶対何か思いながら帰ったな。)

 そう考える日間もなく寝てしまった。

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