4.
城を飛びったバルザスは配下を探しにいく。
配下を探すと言っても、何をしたらよいのか、勢いで言ってみたものの、勝手が分からぬ。
ふいにバルザスは思い出す。
そう言えば、以前我の配下になりたいと言っていた者たちがいたな。
たしか、あやつらの住処はシズノア樹林だったはず。
当てを見つけたバルザスは、翼に力を込めてシズノア樹林を目指す。
広々とした樹林がバルザスの眼下に見えてきた。
晴れやかな日差しにシズノア樹林は照らされている。
なかなかに眺めがいい。
この、シズノア樹林には、それほど強い者はおらず、バルザスは昔一度通りすがりでよったきり、さして興味はなかった。
あの頃は戦う相手に事欠かず、眺めなど気にしてなかったが、落ち着いてみると良いところだ。
なるほど、これが戦い以外の良さと言うことか、少しだけアステリア達の言っていた意味が分かった気がした。
バルザスはハッとする。
自分まで、このまま穏やかなになってしまう気がしたからだ。
悪くない気もした。
我もまた、戦いに飽いていたのかもしれね。
もう、これでよいのか。
バルザスは、自問自答する。
いや、我は何を考えておるのだ、まずは配下を集めてるのが先決だ。
我とした事が、くだらぬ事を考えてしまった。
しかし、そう考えてしまう程に光に照らされた樹林は美しく見えた。
バルザスは人の形態に変化すると、樹林の中に降り立った。
以前の、バルザスなら変化などせずに地響きを立てながら降り立ち、樹林を破壊していただろう。
しかし、今日は無駄な破壊をする事が躊躇われた。
アステリアに窓を壊した事を怒られたせいかもしれぬな。
樹林の中は、高い木々に遮られ、木漏れ日が少しあるぐらいで、薄暗い。
風は僅かに吹いてバルザスの体を撫でる。
さて、以前あったあの、小鬼共はまだおるであろうか?
バルザスは思案する。
以前バルザスがここを訪れたおり、偶然小鬼の集団とであったのだ、小鬼達はバルザスの威風を見るなり、頭を下げ、配下になるといいだした。
当時のバルザスはつまらぬやつらと、思い、すぐに立ち去ったが。
戦いもせずに、相手に下るなどバルザスには理解できなかったのだ。
小鬼達とあったところは、どのへんだったろうか?
あまり記憶も定かではないので、てきとうに歩きまわる事にしよう。
小鬼達以外に配下にできそうな魔物も見つかるやも知れぬしな。
しばらく歩き回ってていると。
「何者だ、ここは私の縄張りだぞ」
頭上から声が聞こえ、見上げると木に巻き付いた大蛇が、そこにはいた。
「我はバルザスよ、配下にできる魔物を探しておる、どうだ、お主、我の配下にならんか」
一応、聞いてみる、何といえば良いかも分からぬので、シンプルに聞いてみた。
「くはっ! バルザスだと、それは恐ろしいな!くはは しかし、バルザスは配下を持たぬ事で有名であろう、あの戦の激しい時代にすら、配下を持たなかった者が何の理由があって、今ここで配下を探す」
「理由か、説明しずらいのだが、配下がいないとできない事があるのだよ」
「ふふふ、お前が何のつもりでバルザスの名前を騙ったのかは知らぬが、ここは私の縄張りよ、平和な世とはいえ、ここは樹林、縄張りを侵したものには、制裁をせねばな」
大蛇はシャーと威嚇音を上げる。
「ふむ、我を偽物だと申すか、まあよい、ならばかかってくるがよい」
「おお、威勢だけは、本物バルザスのようだな」
そう言うと、大蛇は木から飛び離れ、バルザスに向かう。
大蛇の口が開き、鋭利な牙がバルザスを襲う。
ガギィと甲高い音がする。
突き立てれた牙は、バルザスの体を裂く事は叶わなかった。
バキリと音がして牙がひび割れる。
「なっ馬鹿な、まさか本当にバルザスなのか」
大蛇は冷や汗をながしている。
「そうだ我はバルザスよ、破壊の化身と言われた我に向かって来るとは見上げた度胸よ、覚悟はよいか」
「待て、いや待って下さい、まさか本当にバルザス、バルザス様だとは思わなかったので、まって、本当に許して」
大蛇が慌てている。
そうだな軽く、そう軽くですませてやろう。
そう思い、我は大蛇の顔を軽くはたいた。
ベチコン!!
顔をはたかれた大蛇は吹き飛び、木にぶつかり、木々をなぎ倒しつて、倒れていった。
軽く叩いたつもりだが、倒れた大蛇を見に行くと、気を失っていた。
むう、手加減は難しいな。
さて、どうしたものか?
大蛇をほかって小鬼を探しにゆくのがいいか?
大蛇が目を覚ますのを待つのがよいか。
ふむ、どちらが良いものか?
大蛇が配下にできる可能性はあるだろうか?
しかし、弱かったなとも思う。
けれど小鬼達もそれほど強くはないだろう。
うむ、待つ事にしよう。
大蛇が配下にならずとも小鬼達の居場所を聞けるかもしれぬしの。
近くの木を背もたれにして、地面に座り待つ事にする。
そうだ、回復魔法を使えばよいのだ。
回復魔法、一応覚えたはいいが、ほとんど使う事もなかったので忘れておったな。
立ち上がり、大蛇に癒やしの魔法をかざす。
大蛇の体についた傷が癒えていく。
大蛇は目を覚まし、ゆっくりと顔を上げる。
バルザスと視線があう。
「ギャー、やめてくれー」
叫び声を上げ、飛び上がる。
おー、元気そうだな。
「落ち着け、もう何もせぬ、今も回復魔法をかけてやったところよ」
「え、回復魔法? 確かに痛みがない、本当にもう、何もしませんか?」
「せぬ、ちょっと聞きたい事があるだけだ」
「聞きたい事とは? 私にですか?」
恐る恐るという感じに大蛇は話す。
「うむ、ところでお主名は何と言うのだ、後口調がえらく変わっておらぬか」
ふとした疑問だった。
「私はオルガと申します、口調は、はい最初は、まさか本物のバルザス様とは思わなかったもので、すいません」
へへっと、オルガはへりくだる。
なんだか情けないやつよの。
昔の我なら歯牙にもかけなかったろうな。
しかし、今はまず、配下集めの初期段階である、贅沢はいえまい。
「そうだ、まず最初の話しに戻すぞ、オルガよ、我の配下にならぬか」
「はっ、配下ですか私をですか? そういえばおっしゃってましたね、えー、何というか、バルザス様に配下は似合わないと言うか必要ないとおもうんですが」
ハッキリしない答えをオルガが返す。
「我の配下にはなりたくないと申すか」
バルザスは再度、問う
「ヒィー!! いやなりたくないとか、何ていうか、孤高にして最強の魔王であるバルザス様の配下に私がなるなんて、何ていうか、その……」
オルガが言葉につまる
「その、なんだ」
バルザスは言葉の続きを問うた。
「えー、その、ぶっちゃけ何をさせられるのかなと心配でして」
勇気をだしてと言う感じでオルガが答える。
「そうだな、まずは説明しなくてはならないな」
バルザスはオルガにカードゲームのために配下を集めている事を説明した。
「カードゲームですか、街の方では、そんな物が流行っているのですね」
オルガが感心した様子を見せる。
「それでしたら、配下になります、実質私がする事はないのでしょう」
「まあ、そうなるな」
確かに、我はカードがほしいだけだからな。
何か引っかかる気もするが、早速オルガを魔石の登録するために、小箱を取り出す。
「この魔石に魔力を込めてくれ」
「これにですね、分かりました」
オルガが魔力を込めると、魔石が輝く。
ピーと音がなる。
小箱の上にスクリーンが現れる。
スクリーンには、エラーと表示されている。
そして、貴方を主と認めていない者のカード化さできませんと表示されている。
「何、オルガ、我を主と認めてないのであるか」
「いや、いや、認めてますよ」
オルガが、慌てている。
オルガが嘘をついている様には見えない、けれど、どうゆうことだ。