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 その者は退屈していた。

絶対の強者として魔界に君臨して、どれだけたったろうか。


魍魎うごめく、この魔界で、己の力だけで生き抜いてきた。


多くの魔物を率いる強者を、単独で打ち破った。


智謀あふれる、策士を、策などいらぬと、力で押し通した。


血沸き肉踊る日々だった。


我も傷好き、何度も倒れそうになった。

しかし、その度に困難を打ち破り強くなったのだ。


そのはてに、最強の王者となった。

けれど、今やどうだ、我に歯向かうものなどいない。


皆我に挑む事すらしないではないか。

 

 ふー、誰か我に挑む猛者はいないものか。

そうだ、かつて戦った強者達が結託して、向かってこればよいのではないか。


妙案を思いついた我は、かつての旧敵の居城へと向かう。


 城に近づいた、我の体は巨大なドラゴンだ、城に入るために人形へと変体する。


 窓にかつての旧敵、深謀のアスレテリアの姿が見えた。


面倒なので窓のそばにより、呼びかける。


「たのもう、アステリアよ、バルザスである、窓を開けてくれるぬか」


我の呼びかけに城が震え、窓がひび割れる。


 城の中のアステリアの顔が驚愕に揺れる。


「バルザス、頼むから入口から普通に入ってくれと何度言えば分かる」


アステリアが憤慨の表情を浮かべる。


「すまぬ、すまぬ、つい面倒での」

我は割れた窓からスルリとを部屋に降り立った。


「毎度来るたびに、私の城をこわしよって」

アステリアは端正な顔を、苛立ちに歪ませる。


「いや、今回は気を付けて、呼びかけてみたのだが、思ったより窓が脆くての」

以前窓を突き破って入って怒られたので、今回は気を付けたのだ。


「脆いだと、この窓が魔力で強化してある窓が脆いだというのか、並の魔物の攻撃なら、傷すらつかぬのだぞ、この歩く災害が、大人しく巣に引きこもっておれ」


アステリアの言葉に少し傷ついた、何もそこまで言わなくともよいではないか、僅かに精神がみだれる。

それに伴い魔力がもれでてしまう。


空間が揺れる、いや城全体に揺れが起きる。


「待て、落ち着くんだ、バルザス、悪かった、城が壊れる」

アステリアが慌てている。


「いや、すまぬ、我も、もう少し気を付けるとしよう」

何とか、精神を落ち着ける、今日は戦いに来たのではないのだからな。


「それで今日は何のようでまいった、言っとくがお主との戦いなぞ、私はごめんだぞ、戦う相手も紹介できん」

やれやれと言う表情をアステリアが浮かべる。


ふむ、やはりと言うか戦いたくはないらしい。

しかし、我にも案があるから来たのだ。

皆で、挑んでこればよいのだと。

そう話そうとして、気づく、部屋にもう一人いることに。

筋骨隆々の男が椅子に座って、こちらを見ている。

あれは万魔の王、ジルコニアではないか。


アステリアとジルコニア、かつて、我をもっとも苦しめた強者だ。


丁度よい、この二人が組めば、強力な戦力なろう。

我は内心でほくそ笑む。


「ジルコニアもおるのか、丁度よい、我から提案がある、そなた達が同盟を結ぶのだ、いや、そなた達だけでは、魔界のあらゆる強者達と力を合わせて、我を打倒して見せぬか」

我は高らかに宣言した。


我の言葉に二人は戦意を高めた表情を浮かべるはず……

であった。


「ぬ、なんだ、その顔は、妙案だと思ったのだか」

辟易したかの様な表情を二人は浮かべている。


「その策はもう、試した、以前、幾人かの魔王が結託して、主に挑んだ事があろう、あれは我の策よあのとき、我等は主に屈伏しているふりをしていたが、隙を見て攻撃するつもりであった、けれどお主は隙を見せるまでもなく、あっという間に、彼らを倒してしまったではないか」


アステリアの言葉に唖然とする。

そう言えばそんな事もあったなと思う。

あれもアステリアの策だったのか、さすがアステリアだとは思う、もしあのとき、他の魔王との戦いにてまどりアステリアとジルコニアに攻められたとすれば、我は窮地に…… にはならぬな、たぶん大丈夫だろ、そもそもあいつら弱かったし。


「すまぬ、何か、すまぬな」

我はいたたまれない気持ちになる。

微妙に空気が漂う。


「そうだ、用はすんだろ、もう帰るか、それともせっかく来たのだからお茶くらい飲んでゆくか」


「いや、帰る事にする、邪魔して悪かったの」

気落ちして帰ろうとしたとき、不意に机の上に見慣れぬものがおいてあるのに気づく。


何だあれは、何か札の様なものが何枚も置かれている。


「ぬ、それは一体何だのだ」

我は気になり訪ねてみる。


「これか、これはカードゲームだよ、最近魔界で流行っていてな、お主がくるまでやっていたのだ」


カードゲームか、よく見ると、カードの一枚一枚に色々な種類の魔物が描かれている。


「カードが魔物なのか、どうやって遊ぶのだ」

気になり聞いてみる。


「そうだ、魔物のカードを使って遊ぶのだ、簡単に言うと、魔物のカードを使って擬似的に戦うのだよ」

アステリアが少し自慢気な表情を見せる。


「戦う!!」

戦うと言うワードに興味を惹かれる。


「やけに食いつくな、だが、お主の様なものではできんよ、戦術を駆使しなければならぬからな」


「我にはできぬと申すか」


「そうだ、この戦いには本人の力は関係ないからな、いかにカードもとい、配下の魔物をよく使い、相手を倒すかが肝であるからな」


「アステリアの言う通りだ、そして付け足すなら、より良いカード、配下の魔物を揃え、組み合わせるのも重要になる」

アステリアにつぎ、ジルコニアが話す。


二人とも、何故か少し得意気の表情を浮かべる。

なるほど、確かに、戦術も配下の魔物も、我がしたきた、戦いにはないものだ。


しかし、尺には触る、策も戦術も配下も我には必要ないと思ってはいた、しかし出来ぬと言われたら、否ととなえたくなるものだ。


「やってみなくては、分からぬぞ、そなた等は我が力しか取り柄がないと思っているのか」


「思っているよ」

「思っているぞ」

二人は口を揃えて同意した。

「そ、そうか……」

まあ、確かにと思う、そう思われても仕方ない事しかしてないからの。


「バルザス、お主は強いよ、言いたくはないが、最強だよ、誰もが認めている、こんな事は魔界の歴史上、おそらくはじめての事だ。

悔しさもあるが、今では敬意や感謝すら感じでいるのだ」


「敬意、感謝?」

アステリアの言葉に疑問が浮かぶ、敬意はまだ、分からなくもないが、感謝とはいったい、どうゆうことだ。


「我等は主の力の前に、己の無力を知った。

また戦いの虚しさもな、戦いイタズラに傷つき多くの血を流す、その果てに何があるのかと、我等は王だ、民がおる、かつては戦いのためだけの配下だった、いつ、寝首を切られるか分からぬ敵ですらあった。しかし、今は違う、配下ではなく、我が国の国民なのだ、戦わせ血を流すより、民の、暮らしを守るのが王の責務と考えれる様になったのだ、これも主のおかげと言える」

アステリアがまるで、お伽噺にでてくる、聖人の様な事を言う。


我は衝撃を受ける。

これが、かつて、「我が神算鬼謀の前では、ただの力等無意味と知れ ふははは」

とか、高らかに笑っていた、アステリアだというのか。

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