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名称変更します。
呪い→異能
祝福→権能
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「お、おい『爆炎』のバルガだぞ……」
「こればっかりはミシェラちゃんとあの新入りが可哀想だぜ……」
『爆炎』のバルガ?名前からして火遊びが得意らしい。
「その様子だとまたダメだったらしいなぁ……?」
「っ……」
こいつもか。
「おいデブ、口臭いからどっか行けよ」
「は……?」
「『はぁ』とかすんな。臭い息が掛かる」
コルト村直伝の煽りスキル、少しは効くだろ。
「新入りィ……お前いい度胸してんなァ、エェ? せっかくだから教えてやるよ……魔法の使い方ってのをよォ!」
と、バルガが『焼き殺せェ!』と唱えると人1人位なら消し飛ばせそうな程の火球が現れる。
どうやら煽りが効きすぎたらしい。
「まずい! バルガの得意魔法『爆炎』だぞ!」
そこのヤジ、解説する余裕があるなら手を貸してくれ。
「プレゼントだ、受け取──グフッ!」
「!!」
バルガが急に倒れる。いや、押さえつけられたのだ。持っていた火球はどこからともなく現れた水球と相殺して蒸気となって消えた。
「登録番号1993、バルガ・フレア」
上に乗っていたのは18番。水球もおそらく彼が出したのだろう。
「クソッ、いつの間に……」
「度重なる迷惑行為で前回忠告を受けたはずですバルガ・フレア。いいですか? 今回は警告、次はないと思いなさい」
「いてて……わかったよ離してくれよ」
バルガの巨体から降りようとしたその時。
「オラァ!」
グッと上体を起こし、18番が宙を舞う。
「……三度目、粛清対象です」
「生きてたらやってみろよ馬鹿が! 空中じゃ受け身は取れないよなぁ! 死ねぇ!」
どっちが馬鹿だ、こいつ周りを見れていないな。
巨大な拳が18番に当たると思われたその瞬間。
「はぁ、アウトだバルガ」
「おれたちマスターの秘書を舐めすぎっス」
18番と同じくらいの背丈の男がバルガの首に太刀を突きつけ、バルガの肩には12才ほどの男の子が乗っかって頭にマグナムを突きつける。動いたら死ぬという本能がバルガの体を駆け巡り動けなくなっていた。
そこに居たのは2人の秘書。
「なぜ邪魔をしたのです、12番、23番」
空中から華麗な着地を決めてカツカツと革靴を鳴らしながら二人へ詰め寄る18番。
「止めなかったら殺してただろ」
12番と呼ばれる男は、18番と同じく20代後半くらいの男性。
「そうッスよ」
23番と呼ばれる……男の子か? そう呼んでもいいくらいの年頃の子だ。こんな子が元受刑者……? 信じられん。
「ギルドの掟では──」
と、言葉を続ける。
「『第一項、秘書は原則人間を傷つけてはならない。ただし、第四十三項に該当する者であればそれに限らない』
『第四十三項、ギルドの違反者には以下の対応をすること。一度目、忠告。二度目、警告。三度目、処罰の対象とする。』ルール上問題ないでしょう」
「ちゃんと覚えてるっスか? 『更生又は処罰の対象』っス。そんなに殺そうとするなんて珍しいっスね、私情っスか?」
「……」
「へっ、なにが更生だよ、お前ら甘いな……」
武器を突きつけられ身動きが取れない状況にも関わらず軽口を叩く。
「自分の立場分かってないのか?」
「ぐっ」
12番に倒され押さえつけられる。
「イテテ……別に『能無し』をからかっただけじゃねぇかよ……あれか? お前ら『能無し』抱いてもらったから怒ってんのか? わかりやすいなぁ」
ケヒャケヒャと気持ちの悪い笑い声をあげるバルガ。
「更生の余地無しですね」
倒れてるバルガに向けて18番が拳を振り上げた瞬間、マグナムの銃口が18番に向かれる。
「こいつ無防備っスよ」
「その場合、処罰の対象は貴様になるぞ18番」
「ハハッ、『能無し』の取り合いか?」
直ることのない態度についに我慢ならず──
「あいつ救いようが無いな」
「リヴェンさんやめてください、お願いですから……」
袖を捕み小声で頼むアシェラ。
トラブルにしたくない気持ちはわからない訳では無い。でも、こいつは……クソ、本人の気持ちを尊重するか。
「わかってます、手は出さないです」
「あれだ、なんなら俺が抱いてやっても──」
「……お前まじで黙れよ」
全てを言い切る前にバルガの顔面をぶん殴ってしまう。
「あがっ……」
突然のことに備えてなかったのかクリーン入ってしまい意識を失ってしまう。
バルガほどの実力者がなぜ警戒していなかったのか。秘書に囲まれていたから? それもあるだろう。しかし、1番の要因は俺がバルガを殴る事など不可能だったから警戒しなかったのだ、何故なら俺とバルガの距離は20m程離れていたのだから。
「無防備な人への攻撃は処罰の対象と言ったはずっスよ」
「どなたか存じませんがこれはギルド側の問題です。どういうつもりですか?」
切っ先と銃口が向けられる。
「リヴェン様ッ! お戻りください!」
18番が叫ぶ。安心してくれ、ちゃんと言い訳は考えてある。
「なら、止めない方が良かったですか?」
指さしたのは焦げついたカーペット。
「あなたたちが身内の諍いで目離したスキに抜け出そうとしてたから無力化させたですが……なるほど、彼は『無防備』だったと」
自分たちの失態に気づいたのか武器を下ろし頭を下げる。
「っ、これは失礼しました!」
「申し訳ございませんっス!」
「……」
この場は凌げたがかなり不味い状況にある。実はあの時奪った【感覚支配】とは別のもうひとつの権能を明かしてしまったのだ。
それは【超高速】。
あの時の依り代野郎がもし本当に【感覚支配】しか使えないのであれば、あの一瞬で村人全員を殺すなんて不可能だと思い死体を調べてみたら、思った通り権能はそれだけじゃなかった。
あの一瞬で村人を全員の首をとる方法なんて限られてくるから、消去法で超高速移動かと考えたら強欲が反応して権能入手って経緯、どうやら能力を予測して大方的中させると解析したという判断になるらしい。
それはいいとしてミシェラには悪いことをした。どうせ止めるだろうから【感覚支配】をかけてしまった。今彼女が見えてるのは12番が急にバルガをぶん殴った光景のはず。
などと考えてると二階から声がする。
「おう、お前らもういいぞ」
「「「クロエ様!」」」
ギルドの二階から階段で降りてきたのは金髪の女性。
「ん、それよりそいつぶん殴った奴、話がある。来い」
雰囲気でわかる。ギルドマスターか……面倒な事になった。
「……それってここじゃ話せない内容なんですか?」
「困るのはお前だと思うが」
やはり見てたか。
「わかりました」
仕方ない、ミシェラには悪いが適当な場所で解散するような幻覚を見せよう、多分もう二度と合わないだろうか……ら……は?
この時点で奇妙なことが2つ起きた。
一つ目はミシェラと目が合ったこと。
そしてもう一つは──
──【感覚支配】の手応えが無い事。
「え、さっきまでここにいたリヴェンさんは……? あれ?」
本当に面倒なことになった……
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