平凡王子リュージュ
新作です、暇潰しに読んでいただければ幸いです。
「リュージュ、申し訳無いが王太子の座を弟のスカウドに譲って貰えぬか?」
「……はい?」
僕、リュージュ・オラルドはいきなりの父上でありオラルド王国の王の発言に思わず聞き返してしまった。
「えっと、それは全然構わないんですけど」
「構わんのかっ!?」
「自分で言うのもなんですけど国王なんて向いてないし興味が無いですから」
「興味は持ってくれっ! 一応第一王子なんだからっ!! ……まぁ、お前は昔からそうだったな」
そう言ってため息を吐く父上。
「で、他の貴族から圧力がかかったんですか?」
「察しが良いのぉ、有力な貴族達から毎日の様に嘆願書やら直接言われたりやらで儂も胃が痛くて……」
だろうなぁ。
「母上は……賛成してますよね」
「あぁ、スカウドを溺愛しておるからなぁ」
一応長男なんだけど生まれてから母上とまともに会話した事がない。
母上は僕の事が気に入らないみたいで態と避けているみたいだし。
その代わり父上が優しくしてくれたんだけど、残念ながら期待にそう事は出来なかった。
何せ兄の僕が言うのもなんだけどスカウドは優秀だ。
イケメンだしコミュニケーション能力は高いし頭が良いし完璧だ。
それに比べたら僕は『平凡』だ。
地味だし頭も普通だし体力も普通、コレと言った特技や能力も無い。
『存在感がない』、『空気みたい』、『いるかいないかわからない』、これが周りからの評価だ。
うん、普通に不敬罪だと思うんだけど否定は出来ない。
最初の頃は兄として威厳を保とうとしたけどすぐに心が折れた。
剣術で試しにスカウドと対戦したらボロボロに負けた。
こっちは習って1年、スカウドはまだ基礎も習っていない。
天才っているんだなぁ、とつくづく感じたよ。
「それで僕はどうなるんでしょうか?」
「うむ、お前には北にある未開拓の地に行ってもらう」
「そこって確か荒れ地で草木も生えない場所ですよね」
「おまけに魔獣がウヨウヨしている、と言う噂だ」
「僕に死んでこい、と?」
「違う違う、お前だったら治める事が出来る、と思っておる」
「そうですか……、わかりました。リュージュ・オラルド、辺境開拓に勤しんで参ります」
「うむ、よろしく頼むぞ。 これからは辺境伯として我が国の発展の為に腕をふるってほしい」
「因みにですが……、婚約者の件は?」
「あくまで『王太子』との結婚だからなぁ……、まぁすまん……」
そう言って父上は頭を下げた。
そりゃそうだよね、公爵令嬢を辺境に連れていく訳には行かないしなぁ。
それに正直苦手なんだよね、本人には悪いけど。
僕はこうして18年間の王族生活とおさらばして辺境へと旅立って行ったのだった。