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勇者系チューバー・今日も異世界生配信!  作者: クバ
第一章 PERSON
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06 レベル上げ

 ビア王国王都から3つ目の街スレラ。敵が1段強さを増したこの地域で勇者アスカはちょっとだけ真面目にレベル上げを頑張っていた。


 ちょっとした問題に直面したためである。


 【洞窟】─どうくつ─

 地中にある一定の大きさの空間。洞穴(どうけつ、ほらあな)とも言う。一般には地下空間のうち人間が入ることかが可能なものをいい、洞口の長径が奥行きよりも小さければ洞長2m程度でも洞窟と呼ばれる。


 この勇者を惹き付けて止まない謎の穴っぽこは、大陸各地に点在し、塔や滝壺などを一括にしてダンジョンとも呼ばれることもある空間である。


 ダンジョンの中には勇者を倒そうとするモンスターや罠が多数存在し、本来の勇者の目的である「魔王討伐」からすれば寄り道でしか無い。


 誰が準備したのか不明な宝箱から、時折優れた武具やアイテムが出ることもあるが、序盤のダンジョンで手に入る武具はそれほど希少な物でもなく、最終局面まで使える物など存在しないと言われている。


 それでも何故か、何故か勇者はダンジョンに引き寄せられる。もしかしたら宝箱に伝説の武具が……との期待からなのか。あるいはすべての道を通らなければ気が済まない何か特別な力が働いているのか。


 とにかくダンジョンは勇者達に大人気なのだ。


 ダンジョンはそのエリアの地上よりも敵が強い事もあって、ダンジョン最寄りの街は武具の調達や消耗品の補充、連泊などのダンジョン特需があり、勇者は経済の救世主として暖かく迎えられている。


 そして勇者アスカが直面した問題とは。


 「腕。足りないんだよねー」


 洞窟内は基本的に暗闇だ。光を反射しやすい苔が生えている事が多いが、それでも光源ナシで歩くのは難しい。

 殆どの勇者に洞窟の暗闇は問題にはならない。松明や光の杖を持てばそれで解決する。


 だが勇チューバーアスカはそうは行かない。左手には動画撮影用の水晶をはめ込んだ杖、名付けて「ソニーくん」を常に持たねばならない。腕を増やす方法を持たないアスカは、試行錯誤を強いられた。


 機械的なチャレンジは一通り試した。


①ソニーくん延長トーチ計画

 ソニーくんから二階建てに延長して松明を取り付ける原始的な方法は、松明の明かりが強烈に映り込みしてしまい動画が見にくて断念された。


②ソニーくんに下げランタン計画

 ソニーくんの途中にランタンを下げる方法だが、光源位置が低くなる為に見通しが悪くなり、天井付近の敵に気付くのが遅れ、度々奇襲を受けて計画見直しとなった。


③ヘルメットにトーチからランタン案

 ヘルメットを加工して頭上にトーチを設置したら低い天井につかえたのでランタンに変更も、敵の攻撃を受けた際に油を被って火だるまになり火傷で廃案。


④改良案ヘルメットに光水晶

 光の杖から外した水晶を鏡面仕上げの筒の中に入れ、ヘルメットに取り付ける事で光量と光の方向を制御。ソニーくんへの映り込みも最小限になり暫定採用。撮影に必要な光量を得るための4つ同時点灯の光法術をアプチャーと呼ぶことにした。


 ……で、何故にレベルを上げているのかというと。


 アプチャーのエーテル燃費が意外に悪く、短時間でエーテルが枯渇するのである。

 2つなら2倍、3つで4倍、4つなら8倍のエーテルを消費するようだが、何故そうなのかは不明だ。


 以前法術動画でエーテル枯渇を経験したおかげで、枯渇前の感覚は覚えている。そのかいあって洞窟内で意識を失う事は無かったが、動画一本撮影し切るだけのエーテルがポーションがぶ飲みでしか確保できそうにない。


 ポーションのがぶ飲み、特にエーテル回復をポーションがぶ飲みに頼った場合、二日酔いにも似た強烈なポーション酔いに見舞われる。個人差はあるが翌日全く動けない者もいる。


 そこで元々のエーテルキャパを増やすと共に、光水晶の使い方に長けることによる燃費効率向上を狙って、昼の野外だと言うのにヘルムの左右に光水晶を4つも灯してレベル上げをしているのである。


「洞窟内でエーテル切れたら暗闇ってのを想定して、外でレベル上げてたけど……」


 アスカはふとモンスターを探す足を止めて、首を捻る。


「ソニーくん使ってない今、エーテル少なくなったら松明持てば良いんじゃね?左手使わない戦闘訓練にもなるな」


 そう言うとアスカは、一応ポーチのポーションを確認してから、もう少し強いモンスターを求めて、足取りも軽く洞窟へと向かうのだった。



「よう!あんた確か……スマン誰だっけ?」


 入る筈もない長さの松明を数本、スルスルっとポーチに押し込み、洞窟前でダンジョンに潜る準備をするアスカに、野太い闊達な声をが掛けられる。


 顔を上げると、三人の男女が近付いて来るのが見えた。


「あ、どーもーアスカでーす。確かコジョさんでしたよね」


「おーそうだったアスカくんだ」


 野太い声の男は褐色の肌にボリュームある金の髪と金の瞳をしており、不思議な光沢を放つ軽鎧に身を包み、左右の腰には手斧を下げていた。


 鎧も武器もこの辺りではまだまだ手に入らない高級品だ。


 コジョの後に続く二人もそれぞれ得意とする武器だろう、弓とナイフを装備しているが、同様に高価な物と見て取れた。


 どの辺りまで進んでいるか、アスカに知りようは無いが、アスカよりかなりレベルが高く、かなり遠くまで進んでいる筈だ。こんな所に何の用だろう。


 そう思ったアスカは後ろの一人の様子がおかしいのに気付く。唯一の女性メンバーのアジョアである。


 不安げにキョロキョロして、弓に矢をつがえ、空ばかり気にしている。


「アジョアさん?何かあったんですか?」


 コジョはバツが悪そうに頭をかくと、驚きの言葉を発した。


「四天王ってのにヤラれてな……アジョアはメンタルに傷を負っちまって……」


不定期更新です。宜しくお願いします。

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