04 生配信してみた後編
「じゃ引き続き法術行くよー」
『おー。8888。精霊かもん。ポーション見せて。四大属性全部行くきか』
「ん?」
右手首内側の水晶板でコメントを見たアスカが、スタスタと画角に近づき、手の平を添えて小瓶を映す。
フォーカスは、一瞬のボケも無く小瓶に吸い付き、小瓶の中の小さな煌めきまでも鮮明に映し出した。
「これが今飲んだポーションでーす。赤に近いほどマテリアル体に、黄色がエーテル体、白に近いほどアストラル体に効果があります。飲みすぎると頭痛や倦怠感が凄いでーす。がぶ飲み注意ですよー」
『ふぁ?。HPMP一緒?。あすとらるてなんぞ。別れてナイの????』
「……生命体のエネルギーは改めて別動画にした方が良いのかな? そっちの世界と違うかもだし……」
『いあいまよろ。もやもや。おk。ちょっとだけ』
「えーと生命体は第一体から順に、マテリアル体、エーテル体、アストラル体、メンタル体、コーザル体に分類されるのは皆さんご存知だと思いますが」
『ご存知ないです。メンタル弱いです。コーザル初めて聞いた』
「第一体のマテリアル体から順に傷つきやすく修復も簡単です。逆にコーザル体を傷つける方法は知られてないけど、コーザルの殻を破ることができれば、現次元世界の輪廻から脱するって言われてる。意味分かんないよねー」
分からないと言っているのに、とても爽やかな笑顔のアスカ。
『wかんなーい。イミフ。なるほど……さっぱり分からん』
「よーし、じゃあ次は氷の法術行きまーす!」
『88888。まってた。あいしくるくるーー』
駆け足で画角中央、さっきと同じ位置に戻ったアスカは、画角に背を向け静かに集中し言葉を発する。
「ユグドーよ、契約に従い繋がり給え……法はエーテル、術は事象、技は氷牢……関与せよ!」
配信画面ではエーテルを表すであろうバーが、一気に減少し、枯渇寸前でかろうじて止まる。
先程まで草原だった焼け野原の中空に、拳大の氷結晶が現れ、キラリと光ると次の瞬間2メートル立法の氷の塊が生成され、僅かに浮いていた地面にドスンと落ちた。
『おおおおおお。888888。すごーーーー。これでかき氷を』
賑わい流れるコメント。
どすん。
前のめりに崩れ落ちる勇者アスカ。
『ちょwwww。え。ふぁ????。な』
アスカは動かない。
炎の法術同様、時を迎えた氷の法術は突然にその姿を消し、氷の中央から、かすかに濡れた一枚の葉が、風に乗って飛び去って行った。
視聴者が見守るなか、エーテルゲージ(仮)は赤く点滅を繰り返し、釣られるようにその上のゲージまでもが低下を始める。
画角は徐々に色彩を失い。輝度を失い。そして画面にメッセージが現れる。
【配信が終了しました】
『ちょ!!!!!。wwwwwww。ワロス!。意外な終わり方wwww。マジカ』
『これって演出なん?。ちんだ??勇者ジメツ!。イミフ。帰ってこーい』
……そして流れるコメントも時を失ったかのように停止し、ライブ放送は終了となった。
◇
異世界通信アスカチャンネルを語るスレッド
名無し
ライブ見てた人おる?
名無し
見てた!意表を突く終わり方やった
ねこ
ライブしてたの?いつ?
名無し
さっき通信落ちて終了
ねこ
うわーマジですか。見たかったな-
サイコカリバー
俺に教えてくれたやヤツのツブヤイタ-貼っとく@XXX
ねこ
ありがとー
自称解析一課
ワイ思うにエーテル枯渇して心肺機能に異常きたした。血液不足でショック起こすみたいに
名無し
みてないわーーーーショック
名無し
スレ立ってたwwwワイも見てたで!
サイコカリバー
魔法のエフェクトは結構凄かった。個人のCGじゃないな。
名無し
映画の番宣?ハリウッド?
名無し
ちょっとスピリチアルネタ調べてきた。近いもんがあるみたい
http/XXXXXXXXXXX
ドラゴン
アスカファンが通りますよっと
名無し
割と本格的てきいた
グンダムF精鋭
グンダム新作でるお!
http/XXXXXXXXXXX
名無し
あーこのサイトAA不可かー
自称解析一課
次回の動画どう始まるんだろ?生きてるかな
名無し
アスカは勇者やで?タヒぬ訳ないだろが
フェアリー
勇者チャンネルのURL誰かはって@ツブヤイタ-は本人なん?
名無し
自分で探せや情弱
サイコカリバー
http/XXXXXXXXXXX
@XXX←ツブは有志
フェアリー
ありがとーーーw
名無し
やらせに盛大に釣られて
名無し
お前もな
チャンネル登録者数一桁の動画チャンネルに、500を超える程スレッドが伸びるという珍事は、ネット社会に置いてはまだまだ些細な出来事だった。
続きでしたので、連続投稿にしました。
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