表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者系チューバー・今日も異世界生配信!  作者: クバ
第一章 PERSON
3/69

03 生配信してみた前編

「はーい! 聞こえてますか?はーい?」


 画角に向かって指を伸ばし、ゴソゴソしてから勇者アスカは再び笑顔を作る。


 背後に映るのは広々とした草原。

 頭上にあるだろう太陽が緑の大地を燦々と照らし、風が通る度に草原は水面の如く光る波を描き出す。


「はーい? 誰か来たら分かるのかな?初めてってワクワクするよねー。って集まるまで待つの?」


 右手首内側に装着した配信確認用の水晶板を覗くアスカ。


 水晶板を固定した手甲を覗くその姿は、閉じられた肘と首の角度からまるでポーズを取ったモデルのようでもある。


 その時、一つの文字列が画角を右から左に流れる。


『こんちは!』


「おおおおお!?こんにちは異世界の人!! 初めましてこんにちは!聞こえてる? 見えてる?」


『・・・・・・』


「あ、あれ? なんか駄目?」


 しばしの間の後、文字列が再び流れる。


『映ってる。聞こえてる。今』


「え? 今? ……」


 右手首の水晶板を食い入るように見るアスカ。


『ツブヤイターしたから直ぐ集まるかと』


「お? 招集用の法術かな? 異世界の法術って興味あるよねー。どんなのがメジャーかコメント欄に書いといてよー」


『こんにちは!。おじゃまします。生配信ときいて……。らいぶきたーーーー。おめー。8888」


 様々な文字列が画角を右から左に横切る。


「おおおおお! 凄い凄い! 皆ありがとねー違う世界が繋がるって不思議だよねーいいよねーありがとねー。読める! 読めるよーめっちゃ勉強したもんねー。勇者の急成長の全てを注ぎ込んだからねー」


『よろすくー。参るよねー。ちゃす。こちらこそー』


「始めて良いのかな?」


『いよー。おk。どぞよろー』


「はーい! 異世界通信アスカチャンネルへようこそ! アスカでーす! 今回はなんと異世界とライブでつながっちゃいましたー。これって凄いよねー」


 アスカは爽やかな笑顔で、キラッと笑った。

 

「さて今回は前回のコメントで非常に多かった『魔法や!』に生配信ならでは、リクエストされた法術を使ってみた!で行ってみたいと思いまーす」


『おおおおおおおおおお。やたーーーーーーー。888888』


「まず先に魔法ってコメントされてたけど、前回の動画で俺が使ったのは【精霊術】ね、んで言葉や図形で契約を履行してもらうのが【法術】で、魔法って言葉はこの世界では無いねー」


『ほーーーー。メモメモ。なるる』


「んじゃまず何が見たいかな?」


 体操のお兄さんバリに、画角に向けて耳をかざすアスカ。真っ直ぐな鼻筋、少し厚みのある下唇、長いまつ毛。イケメンは耳の形までイケていた。


『ファイアボールでそ。ライトニングアロ。下級。ひのたま。アイスジャベりん。ファイア』


 たくさんの文字列が画角を流れる。


「わーお! 凄いね! んじゃまず火の法術からねー」


 水晶の杖を地面に刺したのか、画角は固定され、アスカは少しだけ離れた草原で画角に背を向けて立った。


 小さいながら、アスカの声が聞こえる。


「ユグドーよ、契約に従い繋がり給え……」


『おおお!。MPバー光った。わくわく』


「法はエーテル、術は事象、技は炎渦……」


『MPごっそり……。ちょっww。おいおいおい』


「関与せよ!」


 最後の言葉と共に、アスカの右手から炎の渦が螺旋を巻いてほとばしる。その光景はまるで炎の龍を産み出したかのようだ。


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお。まじかーーーーーーーーーーーーー。キターーーーーー。ヤベーーーー』


 炎の渦は前方の草原を扇状に焼き払い、地中の根を燃やし、含有物の多い石が割れ弾けるまで続き、時を迎えると唐突に消えた。


「……ふう。結構ぐったり。参るよねー」


『スゴスゴスゴ。キャーーーーーーーーー。ヤベエ……。うほおおおおおおおい。かっけーーーーー』


 画角は驚愕を表す文字列で溢れた。


「んじゃ次は氷系ね」


 アスカはポーチに手をやり、取り出した小瓶を一気に飲み干す。


『MP大丈夫?。ゲージ半分以下だぞ。』


 の直後。

 シャキーン。


『おおおお。MP回復!。ドーピングや。異世界だなぁ』


 の文字列が流れ、水晶板を覗き込んだアスカが首を傾げる。


「ん? ゲージってコメントあるけど画面に何が映ってるの?」


『え。は?。???』


『見えてないんか。体力と魔力?のゲージが頭上に出てますが。頭上にでてますよー』


 コメントを確認して、頭上を見上げるという動作を数回繰り返すアスカ。

 だがアスカは再び首を傾げる。


「またまたー。そんなの無いよー」


 爽やかに笑うイケメン。


『ええええええ。あるから!。これ割合?。レベまだ15なんですねー』


 このコメントを確認したアスカは、スタスタと画角に近づき、アップで異世界の視聴者に問いかける。


 「本当に見えてるんですか? レベルも表示されてるの? どうなってんの?」


 珍しく真剣な表情のアスカ。





 コメントが流れる。




『参るよねー』


 その文字列に心の余裕を取り戻したアスカ。ちょっと恥ずかしそうに頭を掻いた。


「ま、参るよねー」


『参るよねー。まいるよねー。ねーー。マイルヨネー。参るよねー』


 たくさんの文字列が、画面を流れるのだった。


不定期更新中です。

評価、ブックマーク嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ