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勇者系チューバー・今日も異世界生配信!  作者: クバ
第一章 PERSON
18/69

18 帰ってきた生配信

 大森林の浅い地点。パーティがベースキャンプとしてよく使う、泉近くの広場にアスカは居た。


 一脚杖を地面に突き立てて、ソニーくんに向かって満面の笑みを見せる。


「じゃ、そろそろ始めるよー。はーい! 異世界通信アスカチャンネルへようこそ! アスカでーす! 今日は久々の生配信。条件がまだ良く分からなくて、なかなか生配信できないけど、今日も楽しんで行きたいと思いまーす」


 右腕内側に付けた水晶板でアスカはコメントを確認する。


『おひさーー。生配信と聞いて。兄貴―!!!!!!!。あれ? ドローンも居ない?』


「そうなんだよねー。ドローンとミズリ神官は王都へちょっと用足に行ったんだよねー、間が悪いよねー」


『兄貴いねえのか涙。兄貴の胸筋……。三角筋……』


 何故か異世界の人に兄貴と呼ばれるミズリ神官の人気の高さに驚きながらも、アスカは異世界人と交流出来る事が楽しくて楽しくて最高の笑顔をしている。


「今いるのは通称【大森林】。この世界に慣れてきた勇者達が、じっくりと経験を蓄えるのに適した場所さ! この大森林は手前と奥でモンスターの強さの差が激しくて、少ない移動時間でかなりのレベルアップが期待できるオイシイ狩場さ!」


 両手を大きく広げて、まるでショーをするように大森林を紹介するアスカ。


「今日は久しぶりの生配信! 配信時間はちょっと分からないけど、可能な限り皆の質問やリクエストに応えるからね!」


『おーーーー。8888888。こんつあー。今度は倒れんなよ。レベル結構上がっとる。モンス狩って』


 アスカには見えないが、異世界の画面には相変わらずアスカのレベルや状態が表示されているようだ。


『新武器ある?。精霊召喚して。ナンパしてみて。兄貴して。装備変わってないねーー』


「えーっと兄貴ってどうやるんだろ? まず武器だけど、大森林攻略の拠点になるマッシーの街には複数の武器屋や防具屋があって、種類はナイフからハンマーまで多種多様、値段もお手頃から伝説級まで、本当に沢山あるんだ」


 画角は流れ始め、大森林の中へと獲物を求めて分け入る。


「あれ? もしかして装備もそっちから見れるの?」


『みれるー。アイテムもステータスもみれるで。光だけたっか!』


「不思議だねー! 楽しんで貰えるならオッケーだけと、プライバシーが無いねー。ある意味こっちでも一緒。まいるよねー」


『まいるよねー。マイルよねー。まいるキターーよねーーー』


 アスカは光の熟練度が高い理由はアプチャーの影響だと説明する。

 光法術を繰り返し酷使した結果、エーテル効率だけでなく光精との親和性が高くなった。

 そうすると、いつもの光精がいれば光水晶の無い場所にも「アプチャー」の掛け声だけで光源を生み出せたり、複数の光源を任意の場所に飛ばすことも出来るようになった。


「おかげで頭装備毎に光水晶を付けなく良くなったよー」


『装備更新せんの?。鋼の次は?。ダイヤだな。ファイアソード。ミスリルっしょー!』


「燃える剣なんてたっっっっかくて! とてもじゃ無いけど買えないよー。ミスリルソードだって相当高いよー!」


 アスカは満面の笑みで、金欠をアピールした。


『なんでそんなに金無いん?。モンス狩れば増えるんでそ??。クエスト報酬とか。冒険ギルドある?』


「クエストやってないんだよねー。冒険者ギルドってのはちょっと分からないですー調べときますー」


 そう。アスカはクエストをしない。

 それは動画視聴者の共感を、得られないと思うから。


 王城から出てすぐ受けるクエストがある。

 迷子の子犬を探すクエストで、子犬を探す過程で王都の道を覚えたり他のクエストを受けたりする定番クエストらしい。


 定番……。それはつまりほぼ全ての勇者が受けると言うこと……。


 ワンコの管理どうなってる?


 大切で可愛がってるならそうそう迷子にはしないだろう。

 しかも先輩勇者方の話では、子犬の居る場所は決まっているらしい。


 ボク……自分の子犬は自分で探そうな。


 てか、いちいちリリースしてるんだろうし、子犬も「はいはい」って様子でいつのも場所に迷子になりに行くんだろ?


 茶番に付き合わせての端金なぞいらん。時間がもったいない。動画の企画構成や撮影準備に当てたいです。


 協力すれば自分達でも出来る事を、困った困ったと勇者が来るまで放置してあるのがクエストである。


 死ぬ程忙しく、それでも何とか頑張ろうと努力し改善し前進する異世界の視聴者からすれば、人頼みで待ってるだけの困り事へのお使いなど、ストレスの元だろうとアスカは考えていた。


 実際にはチェーン派生するクエストがたくさんあり、報酬はそれなりの金額になってゆくのだが、最初で悪印象を持ってしまったアスカはクエストというお使いには見向きもしなくなった。


 仮にやる気になったとしても、ポータルを使えないアスカにとってクエストは非効率甚だしい金稼ぎ方法だったりもする。


 いつもの動画より移動がゆっくりな辺りに緊張感を滲ませながらも、アスカは説明をしながら周囲に気を配り、奇襲を警戒しつつモンスターを探す。


 そう。今回は準備不足。モンスターの種類や生息地、特徴や効果的な戦い方も分からない。


 だが生配信を逃すとかありえない。


 ライトでイージーでハッピーに! 少なくとも画面の向こうにはそう見えるように、警戒しても慎重に進んでも、アスカは笑顔と余裕を絶やさない。


 だが……。


「ちっ」


 アスカは誰にも聞こえない小さな舌打ちをした。


 前方の藪からトカゲ族が現れ、アスカを発見すると鳴き袋を膨らませて独特な鳴き声を響かせたからだ。


 さっき戦っていたトカゲ族だろう。たぶん。

 散開してアスカを探していたのかも知れない。たぶん。

 顔の違いとか分からないが向こうもそうだろう。たぶん。


 そして確実な事は、アスカにとってなかなかに厳しい敵だという事。鳴き声で仲間が集まって来るであろう事。そしてライトでイージーでハッピーに振る舞わなければならない事。


 「おっとあれはトカゲ族だ! あの鳴き声で仲間を呼ぶんだ」


 努めて明るい声を出すアスカ。

 緊張が伝わってしまっていないか、反応が気になって水晶板をチラ見する。


『敵やーー。リザードマン!!!!。鎧ドクトカゲって。毒とかww』


「え!?」


アスカは思わずソニーくんに顔を近づける。


ドアップになる画角。


「モンスの情報も表示されてるの!?」


 鋼の剣を抜きながら、アスカは素っ頓狂な声をだす。


『されてるおー。レベルもステータスもアスカよか低い。噛まれたら毒』


正面のトカゲ族は、仲間が集まるのを待っているのか攻撃してこずに、距離を保っている。


「鱗が固くて鋼の剣じゃ攻撃が……」


『弱点油だってよ。なに油よw。カラッと揚げちゃう?』


「え!?」


 アスカは水晶板に流れる文字を二度見する。

 そこには確かに「弱点」の文字が流れていた。


 生配信……無敵なのでは??

21話が何度書き直しても納得行かず、投稿を引っ張ってしまいました。

遅くなってごめんなさい。

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