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クレイドル〜忘れられし天使の都〜  作者: アルス
第1部 クレイドル〜忘れられし鋼鉄の都〜
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第8章 * 天を舞う獣たち *

橋から見えた空を飛ぶ獣たちの方向へ、3人は走り出した。


「翼の生えた獅子も、巨大な梟も初めてみたぜ……」


驚きながらも、率直な感想をもらす。


「ありゃ、魔獣の1種だろ。この壁の外側にも定期的に現れるんだが」


あんなのは俺も初めてだとバリスがこぼす。


「私たちみたいなクランの候補生や、王宮魔術師が防獣壁で処理するけれどね」


シャルが街に魔獣が現れない理由を教えてくれる。


「あんなのと戦ってたのかよ! バリスもシャルも……」


日々、危険と隣り合わせだったのだろう。

それ故に、初めての戦場でもこうして生きていることの理由なのだと感じた。


「そうだな。空を飛ぶのは翼竜位しか壁の外では見なかったんだがな」


「空中の大型魔獣となると、かなり手強そうね」


ここで、違和感に気付く。


「なあ、あの2匹は争い合っていたよな?」


バリスとシャルがハッとする。


今まで魔獣同士が争っているところは見なかったからだ。


「けど、探索式の時にあんな大きい魔獣を連れたクランはいなかったわよ?」


シャルが疑問を呈する。


「いや、一つだけ心当たりがあるだろ。太古から自然、そして獣たちと共存するクランがよ」


バリスが答える。


「リィンクラン……。魔獣を従えているというのは本当だったの?」


シャルも見当がついたみたいだが、未だに疑問の色は拭えない。


「見に行けばわかるだろうよ。急ぐぞ!」


橋を渡った後も、渡る前と同様に、周りには巨人が作ったような巨大な建築物だらけだった。


その巨大な建造物の合間を駆け抜ける。


上空では、獅子と梟が激突していた。

獅子の尾が蛇の形になっていることに気付く。


その蛇の尾が空中に魔術紋章を展開させ、いくつもの毒の槍が梟へと襲いかかった。


躱す梟だが、一発の槍が翼をかすめた。

みるみる梟は力を失い、地上へと落ちて行く。


地上に激突する瞬間、荒れた大地から一本の大樹が急速に生えてきた。

その木がクッションとなり、梟を包み込んだ。


「レーネ! すぐに解毒をします!」


梟がみるみる人の形へと変わって行く。


荒く息を吸う胸が揺れる。


「おい! 大丈夫か!?」


駆けつけたバリスの上空から獅子が急降下をしてきた!


「バリス! 上だ!!」


俺は喉が潰れるくらいに叫んだ。


「っらああああ!」


大剣を即座に抜刀し、獅子の突撃を防ぐ。


衝撃が地面へと伝わり、石で作られた道に亀裂が走る。


「ぐうおおおおおおお!!」


バリスは必死に獅子の突進を食い止める。


その獅子の横からぬっと蛇の尾が毒の魔術を展開しようとした時だった。


GURUUUUUUUUUU


銀色の狼が颯爽と現れ、蛇の尾ごと獅子の横っ腹へ突撃した。


獅子が吹き飛び、壁に衝突する瞬間、翼をはためかせ空へと上昇した。


「今のうちに、どこかに避難しよう!」


俺が叫ぶと、全員が梟の女性を守るようにして、建物の陰へ逃げ込んだ。


――廃墟と化した建造物の一室。


梟だった女性の顔色が落ち着いてきた。


「私はリィンクランのリーダー、リネ=ミシュールです。先程はありがとうございました」


深緑の髪を揺らしながら、リィンクランのリーダーが頭を下げた。


「よしてくれよ。この壁の中じゃ助け合わなきゃ生きていけねえ」


バリスが謙遜交じりに返答する。


狼は銀髪の男性へと姿を変えた。

無言でリネと梟の女性を見ていた。


「で、あの空飛ぶ獅子と何で戦ってたの?」


戦いを避けようと思えば、避けれたんじゃないのとシャルは問いかける。


「ええ、そうね。けれど、あの獅子が守っている区画の先に魔力の歪みを見つけたの。恐らくは結界の発生源ね」


リネはすでに結界の生じる場所を特定していた。


しかし、それはあの蜘蛛をも溶かした巨大な川で区切られおり、橋も周りにはなかったらしい。


「それで、空から行こうとしたのか」


納得はした。逆にそれ以外の方法で行くぐらいしか、俺にも思いつかない。


「ええ、そして空を飛んでいるときにあの獅子が現れたの」


「さながら、結界の発生源を守る守護獣ってところね」


シャルが相槌を打つ。


「なんにしても、梟のねーさんに空を飛んでもらいとこだ、が」


バリスがレーネと呼ばれた女性の様子を見ながら話を進める。


「……えぇ。分かっていますが」


リネは悲痛な面持ちで、レーネを見る。


「リネ、私は大丈夫です」


梟の女性が気がつき、返答をした。


「レーネ! もう起きても大丈夫なのですか?」


「えぇ、治癒魔術が効いたわ」


レーネは起き上がり、答えた。


「しかし、まだ戦うまでは回復していないでしょ?」


「それは……」


レーネは顔を伏せて、言い淀む。


そこで俺は伸びをして、バリスは大剣を担ぎ、シャルは杖を握りしめた。


「俺たちのこと、忘れてないかい?」


かくして、崩れゆく大都市の空中で熾烈な戦いが繰り広げられることになる。


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