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クレイドル〜忘れられし天使の都〜  作者: アルス
第1部 クレイドル〜忘れられし鋼鉄の都〜
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第6章 * 繁栄せし過去の影と光 *

夜の街へ聞こえてきた叫び声を追って3人は駆け抜けた。


大通りに出ると、そこにはレイスタル国のクランがいくつもの影と戦闘を繰り広げていた。


影は幾重にも列を作り、こちらを取り囲むよに湧いてきていた。

その影の胸には、青い炎のような光が揺らめき、鬼火の様相を呈していた。


「なんだ、あれ!?」


「さぁな! 味方じゃないのはわかるぜ」


「早く助けに行くわよ!」


レイスタル国のクランと合流するために、影へ攻撃を仕掛けるバリスとシャル。


「なっ!?」


「えっ!?」


バリスの斬撃とシャルの氷弾は影に命中した。


しかし。


影はやはり、影であり攻撃がそのまま受け流されてしまう。


「その影には攻撃の類は通用しないわ! 灯りよ、灯りが有効よ!」


必死に火の魔術を展開しながら、レイスタルクランの女性がが叫ぶ。


灯り?


それなら……!


鞄から閃光弾を出し、空中へ炸裂させる。


夜の中に、眩い昼を築く。


確かに、影は一時的に消えた。


だが、再び夜がその場を支配した時、地面から再び湧き始めた。


「くそ、一時的な灯りだけじゃダメか!」


くそ、どうする……!?


考えろ、広範囲に照らし続ける灯り。


朝日までは時間があるし、皆の魔力も朝まで使うには限界がある……。


そこでふと思い出した。


夕焼けに照らされた街灯の群れを。


「シャルッ!」


「何よ!」


お互いが魔法や改造レンチで炎を作り、影を寄せつかせないように必死だった。


「あの街灯のエネルギー源がどこか分かるか?」


「何よッ、いきな……」


そこでシャルが理解したように頷く。


「そういうことね! 上出来!!」


すかさずシャルが目に魔力を集中させ、透視の魔術を行う。


そこに廃材を纏った影が2体向かう。


「「邪魔させねえよ!」」


キンッとその影が纏った鉄材をバリスと俺で防ぐ。


「あった! でも、離れた場所に4箇所あるわ!」


シャルが叫ぶ。


「レイスタルクラン! 雷の魔術は使えるか!?」


「雷!? ええ、使えるわ!」


「よし! シャル、それぞれのエネルギー源に氷の棘でマーキングしてくれ!」


「……そういうことね!」


シャルは理解したとばかりに、氷の棘で4箇所の壁を貫く。


「そこよ!!」


「レイスタルクラン、頼む!!」


「任せなさい!!」


レイスタルクランの1人が空中に巨大な結晶を創造し始める。


片方の1人が雷を纏う結晶の剣をその手に創り始めた。


「おい!! 2人とも影が来るぞ!!」


魔術に集中した2人に影が殺到する。


「させないわよ?」


そこへレイスタルクランのリーダーと思われる女性が割って入る。


腰のあたりから生えた9本の燃える結晶の尾が、影へ叩きつけられる。


廃材は吹き飛び、炎の明かりで影が一時的に消滅する。


「準備できた! いくわよティナ!!」


「任せて、トワラ!!」


トワラと呼ばれた女性が浮かび上がった巨大な結晶に雷の剣を投げ放つ。


剣が刺さった結晶は、急速に雷の魔力を上昇させ、氷の刺の箇所へ雷の魔力を解き放った。


氷のマーキングへ雷の魔力が迸る。


しかし、まだ変化が起きない。


「おい! そろそろやべえぞ!!」


バリスが焦りから叫ぶ。


影は先ほどより増え、じりじりと距離を詰めていた。


――影が全員を取り囲もうとしたした瞬間。


カッと一つ、また一つと街灯が灯る。そして、いくつもの看板にも明かりが灯った。


その灯りは次々と街を包み、恐らくはこの区画一帯を過去の風景へと引き戻した。


「す、すげぇ……!」


俺は過去の都の圧倒的なまでの華やかさに心を奪われた。


それはバリス、シャル、レイスタルクランも同じようだった。


からんと、廃材が地面に落ちる音が聞こえた。


街の暗闇と一緒に影たちも、その身に纏った廃材だけを残し、消滅していた。


「まるで揺籠ね……」


「え?」


シャルが唐突に呟いたので、少し戸惑う。


「クレイドル『ウォール』は、この過去の景色を守るための壁であり揺籠だったんじゃないかって思ったの」


「……確かにこの夢見たいな景色を守る揺籠だったのかもしれないな」


複雑な想いが胸中に広がる中、街は煌々と輝き続けた。


――そして。


「あっ、灯りが消えていく……」


シャルが次々に消える過去の灯火に気づいた。


「安心しろよ」


バリスが指差す方向を見る。


街灯や看板の灯りがエネルギー切れにより消えていくのと同時に、朝日が崩壊した街を照らし始めた。


まるで、過去の繁栄から現代の廃墟へと時を引き戻すように。


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