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クレイドル〜忘れられし天使の都〜  作者: アルス
第2部 クレイドル〜地底に眠りし龍の楽園〜
56/59

第27章 * 空中防衛戦 *

それは、雷鳴か咆哮か。

はたまた吹き荒ぶ風の絶叫か。


GUUUUOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAA


雷雲が龍の風貌を成し、眼前に顕現する。


「しつこいヤツだぜ……!」


バリスが大剣を握りしめながら、言う。


「俺はこいつとまともに戦えて幸運だ!!」


アールが場違いに高揚しながら、駆け始める。


「一番槍ィ!!」


叫びと共に、龍の頭蓋へ槍が突き立てられる。

突き立てられた箇所から暗雲が霧散していく。


しかしーー


「はは! 不死身か!?」


アールが目を輝かせながら叫ぶ。


霧散した龍の頭部が瞬時に、再形成されていく。

あくまであの巨龍の抜け殻としての不死性を有しているかのようだった。


龍の輪郭を取り戻した暗雲は、アールをその顎で噛み砕こうと迫る。


「なんの!!」


アールが槍を旋回させ、牙を弾き返す。

その瞬間、牙が明滅を繰り返し始める。


「ぐあッ!?」


牙を弾いた槍から青白い閃光がアール目がけて突き抜けた。


「おい、大丈夫か!?」


アールの前に立ち、龍が再び形成されていくのを警戒しながら、バリスは聞く。


「アイツを槍で弾いた時に、雷をお見舞いされた……!」


何とか立ち上がるアールの目の前に、バリスとシャルが割って入る。


「大人しくしてろ」


大剣の仕掛けを解き、透き通るような刃の刀を構えるバリス。


「ここからは私たちの出番ってこと」


シャルが空中に漂う氷の華を連れ添いながら、狙いを定める。


再び暗雲から龍が姿を見せる。

魔力を帯びた暴風に鉄材を絡ませ、こちらへ射出してくる。


「散れ!」


一言の詠唱で漂っていた氷華が一斉に、鋭い氷柱の形状に変化し、襲いくる暴風に紛れた廃材を撃墜していく。


風が止んだと思った次に瞬間には、アールを襲った雷撃の牙が迫っていた。


「そいつ、本当の雷じゃないな?」


バリスはそういうと、居合の構えから瞬時に雷の牙を全て切り伏せた。


「魔力なら、『薄明』は雷だって切れるんだぜ?」


「カッコつけてないで! 次来るわよ!!」


シャルが咎めながら、次の迎撃のために氷の華を再展開していく。


雷と暴風を二人でいなしながら、地上へとひたすらに魔術の龍は登り続ける。


「まだなの!? 魔力量がそろそろ……!」


シャルもバリスも満身創痍で防衛に徹している。


「地上まであと少しです! あと少し、持ち堪えてください!!」


クレイドルに突入して最初に見た階層に風景が似てきたのを理解し、私は叫んだ。


「フィちゃんに頼まれちゃあ!」


「断れないわね!!」


最後の力を振り絞って、二人は暴風と雷を受け流していく。


「私も、少しくらいなら……!」


シエラと一緒にいたフェンがか細くも決意を込めた声で言う。


「フェン、大丈夫なのか!?」


レイが心配する中、フェンは詠唱を始める。


最初は弱い風が吹くだけだったが、次第に風の勢いが強まり始めた。


暗雲で形成された龍が、僅かだが魔力で生んだ向かい風の影響で追撃の速度を落とした。

そして、こちらは魔力で生成された追い風に乗り、一気に地上へと上り詰める。


灼腕で溶かし進んできた階層がついに無機物的なものではなく、土層になり始めた。


近い! 地上まであと少し!!


トライと伸ばした腕の先が、地上の風に触れた。


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