第26章 * 暗雲 *
最初に異変に気付いたのはアールだった。
――ん? クレイドルの底からデカい魔力を感じる。
俺が探していた大物の龍のような。
鮮やかに追撃してくる翼龍を槍で叩き落としながら、今は遥か下に見えるクレイドルの底を魔術で強化した眼で凝視する。
――ッ!?
悍ましい魔力の塊が龍の形を成してこちらへ迫り来ていた。
「みんな、多分だがさっき戦ってたでけえ龍がまだ追ってくるぞ!! 後方に戦力を集中しろ!!」
全員が一瞬、その叫びの意味を理解しきれずに動きを止めるが、咄嗟に陣形を立て直し始める。
「アール! あの巨龍が生きてるって冗談じゃ済まねぞ!?」
片翼にいたバリスがいち早く駆けつける。
「本当だって! 底からの魔力を感じないのか!?」
言われて、底を覗き込むように凝視する。
「うっ!?」
重力に逆らってクレイドルを構成していた鉄塊が、直前に迫ってくる。
ギィン!!
バリスは大剣でその鉄塊の軌道を逸らすように受け流す。
濃密な魔力を纏った暴風が、こちらを正確に狙っていることを理解する。
防御態勢を取りながら、バリスは静かに息を吐き出す。
「空中かつ、限られた足場で防衛戦しろってことかぁ!?」
苦笑まじりにバリスが吐き捨てるように言う。
ゴツン!!
「てッ!?」
バリスの頭に杖が叩きつけられる。
「泣き言言ってないで構えなさい! 来るみたいよ!!」
周囲に氷華を展開させながら、シャルも後方へ合流する。
「シエラ様は私が守ります。気兼ねなく戦ってください」
イシュがシエラとフェン、レイを守るように一対の大楯を構える。
「俺も、戦う……!」
レイが限界を感じさせる声音で言う。
「ダメです。ここで大人しくなさい」
シエラはピシャリとその申し出を断る。
「ぐ……」
レイが優しく、フェンの服の袖を引っ張り、大人しく座らせる。
「地上に出るまで、持ち堪えてくれないか!?」
前方でシャルと地上への道を切り開いているトライが声をあげる。
「あったりまえだ!!」
アールの快活な声が薄暗いクレイドルの中に響く。
――そして。
GUUUUUUAAAAAOOOOOOOOOOOOOOO
暗雲と化した銀龍が再び目前に、追いついた。
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