第24章 * 救援 *
世界に完全に色がつく。
壊れかけの塔型クレイドルの群れ。
数多の骨に埋まる純白の大地。
圧倒的な強さを誇示する巨龍。
そしてーー
「凛斗……」
トライが消え入りそうな声で彼の名前を呼ぶ。
――そして、巨龍の心核に突き刺さるリンさんの槍と、
その槍から零れる僅かな風に舞う純白の粒子と化したリンさんの骨だけだった。
声なき咆哮が衝撃波のように辺りに響き、そのままその巨体を崩壊させる巨龍。
結末は静かに訪れた。
「やった、やったけどリンさんが……‘」
トライは俯きながらも、拳をギュッと握り締めて前を向く。
「これで、これで良いんだ。アイツも納得しているさ」
偽物の空にリンさんが舞って、そして散り散りになっていく。
「ワケありみたいだが、感傷に浸る時間はまだみたいだぜ?」
バリスさんが大剣を納刀しながらこの偽物の地下世界を見て言う。
巨龍のコントロールを失ってか、龍種たちも粒子となり崩壊を始めていた。
さらにーー
――さらにこの地下世界の上空がひび割れるように歪み始めていた。
「みんな!! まだ無事な塔を目指すんだ!!!」
トライがこのクレイドルからの脱出のために叫ぶ。
「トライ、あんた周りをよく見てみなさいよ」
シャルさんが息を切らしながら合流し、塔の群れを指さす。
「まさか、一つも残っていないのか!?」
塔型クレイドルは先ほどの、巨龍の咆哮を受けて地上部分と上部が別れるように崩壊を始めていた。
絶望的な状況が周囲を覆い尽くしていく。
――空に光る一筋の光を除いて。
輝く星のように眩い龍の影が見えた。
「また、龍ですか!?」
こんな満身創痍のパーティを狙ってきますか!?
各自が苦し紛れにも構える。
「おーい!!」
どこかで聞いたことのある軽い調子の声が龍の背から響いた。
「アールさん!?」
ホーリットクラン所属の騎士、アールさんの登場に彼を知る面々は驚きを隠せなかった。
「先走らないでください、アール」
「そうですよ。何よりすでに戦いは終わっているようですし」
静かな佇まいで二人が話す。
「イシュさん! シエラさん!!」
ホーリットクラン勢揃いの様相だった。
「何でここに!?」
トライが喜びと驚きを含ませ聞く。
「そりゃあ龍が狩れるってんだから急いでクレイドル探索の任を拝命頂いたってわけだ!」
散々、塔の中で迷いまくって結局一番でかいのは見れなかったけどな。
しょんぼりとアールは付け足した。
「簡潔に言えばそう言うことです。それよりも」
のんびりしている暇はないとシエラさんに目配せをするイシュさん。
「ええ、これよりこのクレイドルから、私の魔術で脱出します」
静かに、シエラさんは言った。
「私の魔力で具現化した龍に乗ってください」
そういうと聖なる気配を放つ龍の幻影は、ゆっくりと首を垂れ、乗り手たちを待つような状態で待機し始めた。
「わかった! みんな乗り込むぞ!!」
私たちとホーリットの皆さんが乗り終えたとこで、背後から声がした。
「頼みがある。この二人を連れて行ってくれないか?」
緑龍騎士団の強面の方が、こちらへ懇願するように頼み込んできた。
確かユアンさんの側近のような方でしたね。
思い出しながら、その様子を見る。
その腕には、フェンさんとレイさんが戦いの余波を受けて傷ついた様子でこちらを見ていた。
「副団長は、どうするんですか?」
力なくフェンさんが聞く。
「俺たちはここが終着点だ。団長を一人にはできない。さぁ、まだ生き残りの龍種を全滅させるぞ!!」
二人をこちらへ押し飛ばした副団長と言われた人物は緑龍旅団の生存者だけで、私たちを守るように陣形を組み直した。
「さぁ、行け!!」
怒号に似た叫びに、私たちは静かに頷き、シエラさんの出発を待った。
「……振り落とされないでください!!」
そう叫ぶと、幻影の龍が大きく翼を広げ、一気に偽物の空に突き刺さる塔のクレイドルを目指して飛翔を始めた。
「……行ったか。お前たち二人だけでも別の楽園を見つけてくれ」
副団長と呼ばれた男は静かに呟くと、剣を振り上げ龍種へと切り込んでいった。
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