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クレイドル〜忘れられし天使の都〜  作者: アルス
第2部 クレイドル〜地底に眠りし龍の楽園〜
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第21章 * 土煙と黒煙、崩落の塔 *

眼前に森林がそのまま、豪と鈍い音を響かせながら迫る。


天変地異のような銀竜の尻尾の攻撃を全員が辛うじて避ける。

避けただけで細い岩石や木の根は飛んでくる。


「へへッ、まるで土砂崩れじゃねえか!」


バリスさんは冷や汗を浮かべながらも、生き生きとした笑顔で身体強化の魔術で避けていた。


「バカ! 何嬉しそうにしてんのよ!」


シャルさんは足元に精製した氷板で、空中をくるりと滑空して攻撃を避けていた。


私はフェンさんの風の魔力の残りを全て使い切り、右脚で飛翔して迫る山脈のような尻尾を避けていた。


「って、トライは!?」


あんなにかっこよく登場して、まさか今ので!?

心の中で叫び出しそうになったところで、龍の絶叫が聞こえた。


GURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


「何!?」


見てみると土煙の中、先ほど猛威を奮っていた尻尾が円形にくり抜かれていた。


「避けないんじゃくて、避ける必要がないんだ」


土煙に混じって、本物の黒煙も一緒に立ち上っているのが見えた。


その黒煙の発生元は、竜の尻尾と、そしてーー


――焼き溶かす焦げた音をしながら紅く明滅するトライの灼腕からだった。


「フィ、灼腕の魔力はこう使うんだ」


片腕から黒煙を立ち上らせながら、トライは静かに言った。


「あれが、灼腕……!」


自分の腕にも宿っている魔力の効果を目の当たりにして、震える。


「俺が奴の攻撃を引きつけながら、天使の弱点の心核までの道を作る! みんなはその手助けをしてくれ!!」


トライが明確な指示を叫ぶ。


「はは、生意気になりやがって!」


お前にだけ美味しいところを渡すかよと笑いながら、トライへと続くバリスさん。


「生意気は元からよ、あの鍛治見習いは!」


シャルさんはいつもと変わらない毒舌に、僅かに笑みを浮かべながら飛翔していく。


「皆さん、待ってくださあい!!」


叫びながら、3人の背を追う私。


相変わらず、土煙に黒煙に、土砂崩れに落石に。


世界の終わりみたいな滅茶苦茶な状況なのに。


何なんだろう、この感情は!!


私もいつしか微笑を浮かべながら、白骨の大地を疾走していた。


ふと、空が暗くなった。


「ふふん、今の私なら、岩石くらいなら、溶かし、尽くし、て?」


空が暗くなるほどの岩石などなかった。


あるのは、銀龍の暴走による余波を受けた、天空へと伸びるクレイドルそのものが塔の形状を保ちながらこちらへ折れてきていたのだ。


いや、「のだ」じゃない!!


「フィ!!」


全員の声が入り混じりながら、私へ届く。


しかし、既にみんなは機動性が私よりあり、遥か遠くへいた。


「フィ、灼腕!! 灼腕で灼き貫けえ!!」


トライの声が暗くなった世界で響き渡る。


ギッと唇を噛み締め、籠手の魔力解放機構を操作する。


「らああああああああああ!!!!」


籠手が爆発するんじゃないかと思うほど、紅く輝く。

まるで、手元に小さな太陽を持っているようだった。


その太陽と化した腕を空へと、いや正確には塔型のクレイドルへと掲げた。


――直後。


全てを吹き飛ばしながら、塔は大地へと崩れ落ちた。

ズズンと鈍い崩壊音が多種多様な生物の骨を吹き飛ばしながら、白い大地へ巨大な傷跡をつけた。


生き残った全員が息を飲みながら、落ちた塔へと目を向けた。


そこには崩壊した建物から昇る土煙とーー


――陽炎のような紅い揺らめきを携えた黒煙が立ち上っていた。


「けほけほっ!」


うう、煙を思いっきり吸ってしまいました。


「フィ!!」


みんなが私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「みんなあ!」


皆が安心したような表情をしている。


違う! 違います! そうじゃなくて!!


「?」


私が必死に叫んで皆んなの背後を指差し、叫ぶ。


ゆっくりと皆んなが背後を振り返ると、そこには。


GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


目一杯に口を開き、その奥から銀色の揺らめきが絶望的な輝きを放とうとする銀龍の姿があった。


「皆んな、俺の後ろに!!!」


全員がトライの真後ろの軌道に避難する。


「来るぞ!!!」


トライが叫ぶと、トライの両脇を銀色の暴風が通り過ぎていく。

トライの背後から、銀色に染まる世界を見た。


空中の龍は骨ごと散り、木は枯れ、塔の群れは銀色の風に触れた部分だけが見事に消失していた。


銀色の暴風が過ぎ去っていく中、改めて恐ろしい力だと実感させられる。

その瞬間に、トライも膝をつく。


「トライ!!」


駆け寄って彼に話しかける。


「大丈夫!? 怪我は!?」


「フィ、大丈夫だよ。だけど」


「だけど……?」


息を飲み、次の言葉を全員が待つ。


「だけど、ちょっとの間バトンタッチ頼んでもいいかい?」


全員が、安堵した表情を浮かべ、不敵な笑みを浮かべた。


「あったりまえだ!!」


「しょうがないわね!」


「任せて!!」


さあ、私たちの出番です!!


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