第15章 * 走るは風、貫くは雷 *
レイさんのもとへ辿り着く。
レイさんは奮闘しているが、雷を纏った剣撃が骨魚龍へ効いていなかった。
「レイさん!」
「はえーじゃないかよ……!」
こちらに気づいたレイさんが骨魚龍から距離を取る。
「あの龍は骨を鱗にして雷も斬撃も受け流しちまう」
レイさんが息を切らしながらあの龍の生態を話す。
その間に骨魚竜は骨の海へと潜る。
「ああやって、剥がれた骨をまた纏う!」
骨の海が激しく波立つ。
「来るぞ!」
背後で鋭利な骨が隆起する。
思いっきりその場を蹴り、躱す。
「これでも!!」
フェンさんの風の魔力を纏った右脚を骨魚竜へと撃ち放つ。
「え!?」
疾風の蹴りをその身に受けた骨魚竜は砕け散る。
今の感触はーー
不穏な違和感が脳裏を過ぎる中、現実の叫び声が耳を打つ。
「そいつは紛い物だ! 後ろだ!!」
直後、背後から真っ暗闇のような大穴が開いていた。
私は身動きせずに、その場で立ち止まる。
「おい、逃げろ!!」
鬼気迫るレイさんの声が遠く響く。
骨とは比べ物にならない、生きた巨大な牙が私に無数の穴を穿とうと迫る。
ーーここだ。
恐ろしく冷えた脳内で呟く。
迫りくる巨大な牙に合わせるように、背後へ静かに身体を倒す。
勢いよく閉じられた牙には、私ではなく空を噛み砕いていた。
緩やかに弧を描いた私の身体は、空中で一回転しーー
「吹き飛べ!!!」
一振りの鞭のように撓った脚は、骨魚竜の顎を正確に捉えた。
風の魔力を纏った脚は、張り付いた骨の鱗ごと骨魚竜の顎を砕いた。
「レイさん!!」
「分かってる!!」
骨の鎧が剥がれ落ちた頭部へ、深々と直剣を突き立てる。
GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
絶叫しながらも暴れようとする骨魚龍へ、迸る魔力の雷が止めを刺した。
骨の鱗の隙間から黒煙を出しながら、骨魚龍が横たわる。
「なんとか、なりました!」
ふぅと息を吐きながら声を出す。
「ああ、いやそれよりフェンは!?」
勝利の余韻を感じることのない鬼気迫る表情に気圧されながらも、避難させた場所を案内する。
「フェン!!」
再び戻った廃墟にレイさんの叫びが反響する。
「……お前らか、この楽園に足を踏み入れた輩は」
長槍を手にした黒髪長髪の少年が、フェンさんの喉元へその槍の切先を突きつけていた。
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