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クレイドル〜忘れられし天使の都〜  作者: アルス
第2部 クレイドル〜地底に眠りし龍の楽園〜
43/59

第14章 * 純白の大地 *

また意識が揺らいでいる。

今日何度目の夢現だろうか。


また、聞こえてくる。

戦いの鈍い音が。


耳元では何かが擦れる音が僅かに聞こえる。


段々と、音が近くなる。


これは、呼び声?


「起きろってんだよ!!」


「ふわっ!?」


怒声に近い呼び声で勢いよく上体を起こす。


「あなたは、レイさん!?」


「そうだ! いや今そんなことはどうでもいい! 頼みがある!!」


そういうとレイさんは手に持った雷を纏う直剣に更に力を込める。

その対峙していた相手はーー


「骨の、龍!?」


レイさんの前には、様々な骨を鱗の様に纏った魚のような龍がいた。


GUAAAAAAAAAAAAAAAA


「くっ、俺がコイツを引きつけるから、気絶したフェンを安全な場所へ連れていってくれ!!」


襲いくる鋭利な骨の鋒を捌きながら、レイさんが叫ぶ。


横たわるフェンさんを抱え、一瞬背後を見て走り出す。


「……必ず戻りますから! それまでどうか!!」


背後では、雷と骨が砕け散る音が鳴り響いている。

その中で、天へ拳をかざしてレイさんは答えた。


何度も背後を振り返りそうになる。


――ダメだ、今はフェンさんを安全な場所に運ぶことだけを考えろ!


それに、バリスさんやシャルさん、緑龍旅団の方々も見つけないと!


集中したいけれど、様々な問題が頭を掠めていく。


「あッ!?」


足に走った火傷の痛みが、体勢を崩させる。


フェンさんを抱き抱えながら転がる。


「痛つつ……!」


すぐに体を起こし、再び走り出そうとした時に、気付く。


――この、純白の大地の正体を。


「全て、骨!?」


見渡す地面は全てが歪に尖り、混ざり合っていた。


目を凝らせば、それが様々な種の白骨であることが分かった。


「なぜ、こんなに大量に? それに空からこの場所を見た時も、大地全てが白に覆われていた……」


尋常ならざる地底の最奥で、冷や汗が流れる。


それにーー


「それに、何なんですか、この空は……?」


空中に放り出された時は、瓦礫の雨で気付かなかった。


晴天の空にいくつもの建造物が、それぞれを繋ぐ枝のように絡み合い空中へと溶け合っていた。


「これは、まるであの複製魔術のような……」


地上で見たジール国の結界魔術を思い出す。

あの魔術を最大まで拡張させたような風景が空と地上の両方に広がっている。


息も絶え絶えに駆け抜けた先に、今にも崩れ落ちそうな廃墟がぽっかりと口を開けていた。


不安を抱えながらも、その廃墟へ踏み込む。

中は竜種の類も見られず、栄華を極めた頃の名残を見せながら静かに横たわっていた。


急成長したであろう蔦だけが時間の流れを教えるように、血管のように建物内を装飾していた。


「ここなら……」


フェンさんをそっと柱の影に下ろす。


「必ず、必ず戻りますから……!」


――って。


駆け出そうしたところで、か細い声が廃墟に響いた。


振り返るとフェンさんがやっとの様子で上体を起こしてこちらを見ていた。


「フェンさん、今は体を休めてください! すぐに戻りますか、ら?」


話している間に体が魔法陣に包まれていく。

それと同時に足に負った火傷が緩やかに治癒していく。


「分かってる。だから、私の残りの魔力であんたをーー」


言い終わる前にフェンさんがゆっくりと倒れた。


「フェンんさん!?」


近づいて見ると、弱々しくも確かな寝息が聞こえててきた。


ゆっくりと柱の死角へ運び、再び廃墟の外へ視線を向ける。


少しです、ほんの少し。

待っていてください。


必ずレイさんと戻ります!!


心で叫ぶと、石造りの床を抉る勢いで駆けた。


火傷を負っていた足は完全に回復し、まるで意思を託されたように風の魔力が渦巻いていた。


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