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クレイドル〜忘れられし天使の都〜  作者: アルス
第2部 クレイドル〜地底に眠りし龍の楽園〜
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第13章 * 地底に広がる空 *

ーーあれ?


私、普通に立ってる、よね?


見る景色が全て斜めになっていく。


もはや、私なのか、それとも世界が斜めになっているのかが判断できずにいた。


「フィ!! しっかりなさい!!」


シャルさんの叫びで意識が明確になる。


「はっ!」


私じゃない、世界が傾いている!


階層全体が傾き、張り詰められた鉄材が剥がれ落ちていく。


傾きは大穴へと全てを導いていく。


「バリス、フィ! これで脱出するわよ!?」


シャルさんから氷の魔術が流れ込んでくる。

足元に氷の板が生成される。


「わわっと!」


斜めになる世界に合わせて、氷の板で錆びついたクレイドルの階層を滑走する。


背後では、緑龍旅団の皆さんが脚部に風を纏わせ、唯一の進行方向である大穴へ私たちと一緒に走り始めていた。


めきめきと鋼鉄がひしゃげる音が迫りくる。


「さっきの鉄の番人を落としただけで、これ程までに崩壊しますか!?」


絶叫めいた声で疑問を呈する。


「わからねぇ! ただ、一面が錆び付いてたところを見ると、有り得るな!?」


このクレイドル全体を巻き込むほどとは思えねえがとバリスさんは叫びながら付け足す。


「二人とも、前!!」


シャルさんの声に釣られ、前を見る。


「光!?」


大穴の先には、暗闇とは無縁な眩しい光が溢れている。


「このまま突っ込むんですか!?」


地下にそぐわない状況に、不安を隠しきれない。


「行くしかねえ! 後ろにはアレが迫ってる!!」


背後の風景に絶句する。


廃材と化したクレイドルの階層が、鋼鉄の荒波としてこちらへ迫ってきていた。


「っ!!」


覚悟を決めて、再び前を向く。


氷板を操り、大穴の先端へと近づいて行く。


そして、光の中へと全員が突入する。


一瞬、眩しさゆえに目を瞑った。


ふと、暖かい風が頬を撫でる。


恐る恐る目を開ける。


「ここ、は……?」


私は、私たちはーー


巨大な大樹が如き、鋼鉄の塔が立ち並び。


地上にはいくつもの建設物が植物に侵食され。


地面は全てが雪が積もったように純白だった。


そして、そして。


――私たちは、それら全てを照らす太陽と同じ空へと飛び出していた。


「落ち、るッ!?」


全員が空中へと投げ出される。


背後には、崩れてきた廃材が雨のように追いかけてくる。


「フィちゃん!!」


「フィ!!」


バリスさんとシャルさんが手を伸ばしてくる。


吹き荒れる風の中、懸命に二人へ手を伸ばす。


あと、少し……!


指先が触れる、その時――


「ッ!?」


高熱の閃光が肌を掠めた。


全員が反射的にその閃光を躱す。


「うぅ……!」


閃光が掠めた右腕に火傷を負う。


動けない、わけじゃないけど!


じわりと引き攣るような痛みが片腕に走る。


遠く離れてしまった二人が何かを叫んでいる。

風の音で全く聞こえない。


私の、背後を指さし、て?


「うぁ!?」


紙一重で、飛来した鋭い爪を躱す。


「今のが、先ほどの閃光を発した正体?!」


旋回するように距離を空けながら飛ぶ影。


紅い体色に、鋼鉄のような鈍色の翼を広げ、空を翔けている。


あれも、龍種!?


紅蓮の龍は、思考を許さないとばかりに再び口へ、灼熱の閃光を充填し始める。


まずい!!!


直感のみが体を動かし、空中に散らばる瓦礫を蹴り上げて、無理矢理に姿勢を変える。


直後、私がいた場所目掛けて紅い光が真っ直ぐに貫いた。


その射線上に存在した瓦礫は全て、紅い光を放ちながら溶け落ちている。


灼熱の余波か、それとも生命の危機か。


どちらによる理由かは定かではないが、頬を汗が伝い落ちていく。


地上と空が目まぐるしく入れ替わる世界の中、次の攻撃に備える。


どこ! どこに!?


降り頻る瓦礫の中、一瞬だけ紅い影が見えた。


悟られぬように、結晶具足へ氷の板を氷の魔力へと再変換する。


目を閉じ、視覚よりも聴覚を研ぎ澄ます。


この瓦礫の中、奴の風を切る音が反撃への道標となる。


研ぎ澄ました聴覚は、すべての雑音を消し去った。


遥か遠くにこちらへと軌道を定めた風の音がする。


まだ。


崩れゆく建造物を避けて飛翔する音が迫る。


まだだ。


鋼鉄の翼が、私を真っ二つに切り裂こうと迫る。


「ここだ!!」


目を見開き、迫り来る深紅の龍へと結晶具足に纏わせた氷の魔力を蹴り込む。


KYURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


蹴りは鋼鉄の片翼を捉え、氷の魔力がその翼を凍てつかせた。

そのまま飛べぬ飛龍は、純白の大地へと墜落していく。


――はずだった。


「あれは!」


深紅の龍が死に際の一撃に、灼熱の閃光を解き放つ。


軌道は私から外れていた。


けれど。


「フェンさん!!」


瓦礫の中、気を失い落ちゆくフェイさんの姿があった。

閃光は、彼女こそが初めから標的だと語るように迫る。


「ッ!!」


言葉よりも先に、体が跳ねた。


落ちる瓦礫を蹴り、深紅の閃光よりもほんの僅かに早くフェイさんへと辿り着く。


「もう大丈夫で、すよ……?」


足に強烈な痛みを感じた。


左足を閃光が掠めていった部分が腕よりも深刻な火傷を残していた。


「くぅッ!!」


必死に痛みを耐えながらも、フェイさんを抱きしめる。


バリスさんも、シャルさんも姿が見えない。


瓦礫とともに、過去の都と純白の大地へと堕ちゆく。


どこまでも続く青空と、苔生した建造物、そして何故か存在感を放つ小高い山を視界に綺麗だなんて思う。


トライ、お爺ちゃん、お婆ちゃん、みんな……。


――そして、意識は暗転した。


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