第25章 * 生還、そして *
傷だらけの紅い殺意がこちらを狙っている。
その巨躯は今までより更に傷つき、そこには見覚えのある槍も深々と他の武器と同様に刺さっていた。
――あれはアールの槍!
ホーリットクラン、無事だよな!?
嫌な想像を振り切り、殺意から逃れるように空を駆ける。
――このままじゃ……!
このままじゃ、あの魔力爆発に巻き込まれるかもしれないのに!
ここに来てあいつと決着をつけなきゃならないのか!?
晴天が覗き始めた空に、真紅の炎弾が踊る。
「くうッ!!」
ギリギリで姿勢を変え、高温で射出された炎を避ける。
GUOOOOOOOOOOOONNNNNN!!!!!
紅龍は連続して炎弾を吐き続けた。
高温の死が幾重にも迫る。
ギリギリで避けながら、空中で旋回する。
このままじゃ、天使の着弾の爆風か紅龍の炎弾で消し炭にされる……!
――それなら!!
覚悟を決めると、上空で旋回し、そのまま紅龍へと急降下する。
紅龍も対抗しようと、急上昇を始める。
「うおおおおおおおおおお!!!」
GRUAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!
2つの咆哮が重なる。
すまない、ヴァルト。
ここでお別れだ。
次の瞬間、トライが紅龍の胸を蒼腕で突き破り、街の地面をすれすれで飛行をする。
紅く染まった手には、まだ暖かい鼓動の感触が残る。
……ヴァルト?
ああ、そうか。
お前はあの時からずっと、俺を覚えててくれていたんだな。
――すまない。
こんな形で互いに青空を見たかったわけじゃないのにな。
思い出される記憶。
今はそれを胸にしまい、堕ちゆくヴァルトを背に、フィたちの元へ急いだ。
間も無くして、街を駆け巡る光に気付く。
「あれは……?」
橙色の光が高速で出口へと向かっていた。
あれは、魔道具の光か!?
間に合ったんだ!!
確信と共に、より一層速く空を駆ける。
『ウォール』の出口上空に辿り着く。
「フィ、バリス、シャル!!!」
全力で叫ぶ。
「トライ! ここよ!!」
フィが歓喜の声を上げる。
「フィ!」
フィ達の元へ降りていく。
バリスとシャルも無事のようだった。
「無事だったか!」
俺の無事を確認し、安堵するバリス。
「トライ、あの赤い光は何なの!?」
天使と塔の狭間で輝く赤い光について聞くシャル。
「あれは、あいつデルタが1人で天使を止めているんだ……」
息を呑む3人。
「2人で天使を消滅させても、デルタも俺も消滅するからって……」
涙を堪えながら、状況を説明する。
「あいつ……」
バリスは複雑な表情で塔を見る。
その時だった。
塔と天使が衝突し、凄まじい爆風が生まれるのが見えた。
「まずい!! 早くみんなは出口へ!!」
「トライは!?」
落ち着いて、フィへ話す。
「あの爆風を無力化する。その間にフィはバリスとシャルと一緒に脱出してくれ」
あくまで笑顔で話す。
「そんなせっかく会えたのに!!」
フィは泣きじゃくりながら俺を抱きしめた。
「大丈夫さ! また会えるよフィ」
優しくフィを抱きしめる。
背後に大量の魔力圧を纏った爆風の音が聞こえてくる。
「さあ、フィ行くんだ!」
「……うん、トライ絶対また会おうね! 約束よ!!」
「ああ!! 絶対だ!!」
バリスとシャルがフィを連れて出口へ向かう。
「トライ、お前にたくさん助けられたな。次会う時は俺の剣の調整、頼むぜ!」
「トライ、絶対戻ってきなさいよ! フィちゃんを泣かせる真似したら許さないからね!」
バリスとシャルが別れ際に言葉を残す。
「ああ! 2人ともありがとう!! フィを頼んだ!!」
3人を見送った後、静かに両手を爆風が迫り来る方向へ向ける。
「色んな事があったな……」
両腕から蒼腕が形成されていく。
「少しは成長できたかな、俺?」
形成された蒼腕へありったけの魔力を込める。
「フィ、バリス、シャル、爺ちゃん達、リンネ国のみんな……」
紅い光を纏う爆風が冒険してきた場所を全て飲み込み、眼前へ迫る。
「俺が絶対に」
蒼腕と紅い爆風が衝突する。
「守る!!!!」
蒼と紅の光が交わる。
「ぐうううううううううう!!」
蒼腕を形成する義手がぎりぎりと悲鳴を上げる。
「あと少しなんだ、持ってくれ……!!」
蒼腕の周囲の風景が爆風で吹き飛んでいく。
このままじゃ……!
――トライ、絶対また会おうね!! 約束よ!!
フィの言葉が頭の中で響く。
「……っうおおおおおおおおおおお!!!!!」
蒼と紅の光が交わり、そして景色一面が白色に染まった。
――リボン、返しそびれたな。
ふと、ポケットにしまっていたリボンを思い出した。
その感情を最後に、意識は途絶えた。
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