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クレイドル〜忘れられし天使の都〜  作者: アルス
第1部 クレイドル〜忘れられし鋼鉄の都〜
24/59

第23章 * 決戦 *

蒼と紅の閃光が迸る。


トライとデルタによる魔力衝突の余波が塔の頂上に満ちていた。


「どうした? 手加減しているのか?」


デルタは冷たく笑うと、さらに紅腕の力を増していく。


――このままだと!!


じりじりと塔の外側へ押されていく。


広いとはいえ、一歩踏み間違えれば壊れた街へ真っ逆さまだ。


蒼翼の形成は未だに何がトリガーか分かっていない。


紅腕の紅い輝きが増していく。


くそ!


何か策は!?


そこで、橋の上での出来事を思い出した。


――この腕に封じていた地獄のような灼熱の炎を。


「燃えろおおおおおおおおおおおおお!!!」


両方の蒼腕から赤龍の吐いた炎が繰り出される。


「ちっ……!」


デルタは咄嗟に蒼腕を離し、距離を取る。

鎧が焦げ付きながらも避け切る。


「ならば、これならどうだ?」


鎧は背中に格納されていた機械仕掛けの翼を展開し、猛スピードでこちらへ突っ込んできた。


「くっ!」


蒼腕で防御体制を取る。


「特別席へ招待しよう」


蒼腕が紅腕に掴まれ、空へとトライを連れて行く。


「くそっ、離せ!」


空中でどうにか振りほどこうとするが、紅腕は離れない。


「降りたいか?」


デルタはそう聞くと、スッと紅腕を離した。


「うぁ!」


女神の塔の頂上よりも、さらに高い高度からいきなり空中へと放り出される。


やばい!


このままじゃ、地面へ激突する!!


「何やってんのよ、トライ!!」


凛とした声が響いた瞬間、いくつもの氷の足場が空中に形成された。


「くっ!」


何とか氷の足場に着地した。


「この魔術は!」


振り返ると、そこには傷だらけながらもシャルとバリスが頂上へと到着していた。


「よお! 生きてるか?」


「バリス!!」


2人とも生きて頂上へ到着したんだ!


「何人増えようが変わりはしない」


デルタは方向をシャル達に変え、一気に紅腕で掴みにかかった。


「させないわ!」


シャルの首からかけた氷魔石が青い輝きを放つ。


いくつもの氷の棘が鎧へ襲いかかる。


「ふん、無駄だ」


紅腕で容易く氷の棘を砕いて行く。


「それは、どうかな?」


バリスが不敵な笑みを浮かべた。


氷の棘の中に炎を纏う刀が鎧へと飛んでいく。


「奇襲のつもりか」


デルタは首を横に少し動かすだけでかわす。


「今だ! 受け取れ、トライ!!」


「なに?」


デルタが振り返ると、そこには炎を纏う〈幻刀・薄明〉を掴み取り、そのまま振り上げているトライがいた。


「うおおおおおおおおおおお!!」


「くっ!!」


紅腕で刀ごと抉り取ろうとするデルタ。


その紅腕が形成される前に、バリスの魔力を宿した薄明が片腕を切り落とす。


「ちぃ!!」


もう片方の紅腕がトライへ襲いかかる。


蒼腕で防ぐが、展開された氷の足場から落とされる。


「うああああああ!!」


落ちる!


崩壊した都市が逆様に目に映る。


ここまでなのか!?


バリスやシャルの叫び声が遠くなって行く。


「トライ!!」


その時、懐かしいあの声が聞こえた。


――そうだ、ここで終わりじゃない。


崩壊した街の中で共に戦った戦友達がまだここに残っている。


そしてーー


背中から熱い魔力の本流が迸るのを感じた。


――フィがいる!!


「……ふん、あっけないな」


トライが塔から落ちたのを見て、バリス達の方へ行こうとするデルタ。


「待てよ」


背後からかつて感じたことのある恐怖を感じた。


紅龍と共に追撃しても、倒しきれなかったあの恐怖を。


「な……」


そこには、蒼翼を羽ばたかせながら、塔の頂上まで浮上したトライがいた。


「あの時の強さに戻ったか……!」


いや、その時よりもーー!!

動揺を隠しきれないデルタ。


「フィ!!」


俺は勢い良く塔の頂上で意識を取り戻したフィへ叫ぶ。


「トライ!!」


フィも無事のようで、俺の名を叫び返す。


「今からこいつを倒すから! もう少し待っててくれ!!」


フィは勢い良く頷く。


「出来るか、お前に?」


デルタが気に食わないと言うように残った紅腕で突撃してくる。


「ぐぅうううう!!」


再び蒼腕と紅腕が衝突する、


空で巻き起こる紅と蒼の火花はまるで夜空に浮かぶ星々の輝きのようだった。


片腕の蒼腕で紅腕を抑え込み、もう片方で握っていた〈薄明〉で鎧の片翼を斬り落とす。


「くっ!!」


落ちながらもデルタは蹴りで刀を弾き落とす。


蒼と紅の輝きが落ちゆく天使へ着地する。


「因果なことだ。ここが決着の地になるとはな」


デルタは片翼でバランスを取り、天使の表面へ着陸する。


「何のことだ?」


デルタを追って着陸した俺は、デルタの言葉の真意を問う。


「ふっ、天使の記憶は戻らずじまいか。お前は、いや俺たちは『ウォール』を守るのと同時に、この天使と呼ばれるモノを破壊するのが目的で生まれたんだ」


「な、に……?」


俺とデルタはあの空に浮かぶ天使を破壊するために作られた?!


「そんなわけっ……!」


「いいや、お前も気付いていただろ? 工場地帯で結界装置として天使の紛い物を破壊しただろう?」


天使の紛い物、確かにあいつのコアを破壊する時に俺の腕が起動したが……。


「あの紛い物のコアでさえ、我々でないと破壊はできない」


「それが、どうした……」


「なに?」


俺は自らの使命も出生についても振り切って、叫んだ。


「それが、どうしたんだよ!! 俺は俺で、お前はお前だ!! 兵器じゃなくて、人として生きれるんだよ!!」


「奪い続けておいて、ふざけたことを!!」


隻腕で紅い腕を形成し、デルタは駆ける。


――速い!!


「っつううううう!!!」


紅腕が目前に迫るところで、片腕の蒼腕でそれを紙一重に払った。


完全にいなすことが出来ずに魔力で形成した片翼が破壊される。


「翼の一つはくれてやる……! けど、これで最後だあああああああ!!」


もう片方の蒼腕を構える。


「ここまで、のようだな」


デルタは限界のようで、完全に動きが止まっていた。

達観したように、近づく蒼腕を目前にデルタは冷笑じみた声で呟いた。


「終わりじゃ、ない!!」


トライは蒼腕ではなく生身の腕でデルタの頭部を殴りつけた。


衝撃でデルタは天使の上で倒れる。


砕けた鎧の頭部からは、トライと全く同じ顔が覗いていた。


異なる黒色の髪だけが印象的だった。


「なぜ、蒼腕で殺さなかった?」


デルタは立ち上がり、睨みつける。


「さっきも言っただろ。俺たちは兵器じゃない、殺すだけが生き方じゃない!!」


「ならば、その奪い続けた汚れた手でどう生きて行く?」


「確かに、俺は奪い続けた」


後悔と罪悪感が襲いくる。


――けれど。


「奪った罪を背負って、今度は誰かを守ることも出来るだろ?」


「それが、お前の見つけた生き方か。……俺には合わない生き方だ」


「そんなことないだろ。世界はこの壁の中だけじゃない。その外に広がっているんだ」


世界は、広がっている。


――だから。


「俺たちとここから出よう。外の世界で生きて行くんだ、デルタ」


鎧の男、デルタへ手を差し伸べた。


「……甘いやつだな。せっかくの提案だが、遠慮しとくよ」


「なんでだよ!?」


デルタが断る理由が分からなかった。


「トライ、動くぞ」


デルタが言うと地面が揺れ始めた。


ーーいや、そこは地面ではなかったのだ。


「なっ……!?」


曇天の空を割り、美しい青空と日の光を携えて。


天使が急降下を始めた。


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