表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クレイドル〜忘れられし天使の都〜  作者: アルス
第1部 クレイドル〜忘れられし鋼鉄の都〜
21/59

第20章 * 双氷の試練 *

螺旋階段のその先、頂上へ繋がる通路を眼前にトライ達は立ち止まっていた。


――2人の強力な魔術師、シャルの両親を前にして。


「……お父様、お母様。私よ、シャルよ!」


シャルは声に涙を滲ませながら叫ぶ。


――この先の未来までを予感した上で。


俺もバリスも声が出なかった。


シャルと同じようにこの先を直感したからだ。


――シャルの両親は、あのミカゲと同じ雰囲気を纏っていた。


「……」


2人の返答は、なかった。


いや、あったのかもしれない。


しかし、それは言葉ではなく。


ガチリと氷の刃と盾が構えられる音がした。


「……ッ!」


シャルは一瞬顔を伏せ、次の瞬間には覚悟を決めた表情で前を見据えた。


「バリス、遠慮はいらないわ。ちょっと付き合ってもらうわよ!」


シャルは凛とした声でバリスへ言う。


「……ああ、任せな!!」


バリスも覚悟を決めたように大剣を構えた。


「2人とも、俺も」


言いかけたところで、シャルが遮るように言う。


「あんたは私たちが道を開くから、先に行きなさい」


シャルは杖を構えた。


「シャル、いいのか?」


俺は焦る気持ちを抑えて聞いた。


「ええ、まだあなたは助けられる、助けるべき人がいるでしょ!」


シャルは笑顔で俺を前へと促す。


バリスも笑顔で頷いている。


「……ああ、分かったよ。2人とも俺の道を斬り拓いてくれ!!」


叫びと同時に駆ける。


「おうよ!! 任せな!!」


バリスが剣に炎を纏わせる。


「行きなさい、トライ!!」


シャルは杖から氷の鎌を展開する。


2つの冷たい影がそれぞれの武器を振り上げる。


「「トライ!!」」


2人の叫び声に押されて、2人の番人の隙間を駆ける。


トライに向けて、巨大な氷の刃と美しき氷の盾が振り下ろされる。


ギィンと鈍い音が響いた。


「あんたらの!!」


バリスが氷の刃を弾き、相手へ肉薄する。


「相手は!!」


シャルが軽やかに氷の鎌で盾を絡めとる。


「「こっちだあああ!!!!!!」」


トライは走った。


背後で繰り広げられている死闘を振り返らず。


ただひたすら、螺旋の先、光がさす方へと進んだ。


その先にフィが無事でいてくれることを祈りながら。


NEXT

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ