第20章 * 双氷の試練 *
螺旋階段のその先、頂上へ繋がる通路を眼前にトライ達は立ち止まっていた。
――2人の強力な魔術師、シャルの両親を前にして。
「……お父様、お母様。私よ、シャルよ!」
シャルは声に涙を滲ませながら叫ぶ。
――この先の未来までを予感した上で。
俺もバリスも声が出なかった。
シャルと同じようにこの先を直感したからだ。
――シャルの両親は、あのミカゲと同じ雰囲気を纏っていた。
「……」
2人の返答は、なかった。
いや、あったのかもしれない。
しかし、それは言葉ではなく。
ガチリと氷の刃と盾が構えられる音がした。
「……ッ!」
シャルは一瞬顔を伏せ、次の瞬間には覚悟を決めた表情で前を見据えた。
「バリス、遠慮はいらないわ。ちょっと付き合ってもらうわよ!」
シャルは凛とした声でバリスへ言う。
「……ああ、任せな!!」
バリスも覚悟を決めたように大剣を構えた。
「2人とも、俺も」
言いかけたところで、シャルが遮るように言う。
「あんたは私たちが道を開くから、先に行きなさい」
シャルは杖を構えた。
「シャル、いいのか?」
俺は焦る気持ちを抑えて聞いた。
「ええ、まだあなたは助けられる、助けるべき人がいるでしょ!」
シャルは笑顔で俺を前へと促す。
バリスも笑顔で頷いている。
「……ああ、分かったよ。2人とも俺の道を斬り拓いてくれ!!」
叫びと同時に駆ける。
「おうよ!! 任せな!!」
バリスが剣に炎を纏わせる。
「行きなさい、トライ!!」
シャルは杖から氷の鎌を展開する。
2つの冷たい影がそれぞれの武器を振り上げる。
「「トライ!!」」
2人の叫び声に押されて、2人の番人の隙間を駆ける。
トライに向けて、巨大な氷の刃と美しき氷の盾が振り下ろされる。
ギィンと鈍い音が響いた。
「あんたらの!!」
バリスが氷の刃を弾き、相手へ肉薄する。
「相手は!!」
シャルが軽やかに氷の鎌で盾を絡めとる。
「「こっちだあああ!!!!!!」」
トライは走った。
背後で繰り広げられている死闘を振り返らず。
ただひたすら、螺旋の先、光がさす方へと進んだ。
その先にフィが無事でいてくれることを祈りながら。
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