第18章 * 集結 *
鉄橋全体が真紅の炎に包まれようとしている。
「うぉおおおおおおおおお!!!」
灼熱が展開した蒼腕を焦がすように吹きつける。
――この熱量、耐えられるか!?
際限なく迫り来る炎に、蒼腕の吸収が追いつけないのではと焦り始める。
ガチリと義手が軋みを上げている。
このままじゃ……!!
「また会いましたね」
鉄橋の上、鉄骨を駆けてきた人影が急降下してくる。
両腕に装備した巨大な盾が灼熱の炎を遮る。
「すまねえ! ちょっと迷っちまった!!」
上空からもう一つの影が赤龍を目掛けて、急降下してくる。
GUOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!
その影から放たれた雷の槍が赤龍の頭部へ突き刺さる。
炎が止み、影達の姿が露わになる。
「よぉ! 待たせたな!!」
アールの声が響き渡り、煙の中からホーリットクランが現れた。
「どうやら、間に合ったようですね」
イシュが振り返り、無事を確かめる。
「今、魔力を回復いたします」
シエラがバリスへ回復魔術を施す。
「ホーリットクラン……! 無事だったのか!!」
喜びと驚愕が入り混じる声で叫んだ。
「ああ! 地下街道がやたら広くて少し迷ったけどな!」
槍を構え直し、赤龍の前に向き直るアール。
「早く、お前達はあの塔へ向かえ!」
「アール達はどうするんだよ!?」
強大な赤龍を前に、ホーリットクラン全員が構える。
「どうするかって? 俺たちは騎士の国ホーリットのクラン、竜狩りが本分だ!!」
そう叫ぶと、アールは赤龍へと突撃を始める。
「やれやれ、一人で突っ走らないでください」
イシュが盾を構え、アールを追いかける。
「ここは任せて下さい、皆様のご無事を祈っております」
シエラは2人を援護すべく、魔術詠唱を始めた。
「いくぞ!! トライ!!」
「バリス! 大丈夫なのか!?」
「ああ、シエラさんの回復魔術でバッチリだ!」
バリスとシャルが走り始める。
「トライ、フィを助けるんでしょ!?」
――そうだ、俺はフィを助けるんだ!!
きっとあの塔にフィが!!
そしてあの鎧も!!
「ああ、当たり前だ!!」
全力で橋を駆ける。
それを見た赤龍は再び紅蓮の炎を吐き出そうとする。
「させねえよ!!」
アールが雷の槍を赤龍の体へ突き刺す。
「大人しくしててください」
イシュが赤龍の顎を盾で叩きつける。
「行ってこい、トライ!!」
背中にアールの叫びが届く。
「ああ、任せろ!!」
――だから、ホーリットクランの皆も死ぬなよ……!!
互いが生き抜くために前を向いて駆ける。
女神の塔が聳える広場まで来た。
「おいおい、ちょっと多すぎるんじゃあねえか?」
バリスが剣を構えながら苦笑いする。
その広間には魔獣や翼竜、鉄材を纏ったゴーレム等がひしめいていた。
「そりゃそうよね……! ここがやっぱりこのクレイドルの中心地ってことよね!」
シャルも身体を強張らせながらも、杖を構える。
これだけの数を倒して、塔まで行けるのか!?
くそっ、考えても仕方ねえ!!
「やってやる!!」
蒼腕を構え、駆け出すその瞬間だった。
空から複数の影が急降下してきた。
「皆様、お待たせしました!」
巨大な梟が黒獣を蹴散らしながら、地上へ舞い降りた。
「リネ、レーネ、シャズ!」
リィンクランが空から駆けつけてくれた。
「さぁ、ここは我々が道を開きます。皆様は先へ!」
リネが叫ぶと、大量の樹木が大地から生え、塔までの道を開いた。
「ありがとう!! また、壁の外で絶対に会おう!!」
俺は感謝を叫ぶと、一気に塔へと駆けた。
塔の目前まで来て、頂上を見上げる。
「これ、一気に頂上まで行けるんじゃないか?」
「ダメよ。視認できないほど薄いけど、強力な結界が塔の入り口以外全てを覆ってるわ」
シャルが探知魔術で結界を分析する。
「正々堂々登ってこいってことだな!」
バリスが上等とばかりに笑う。
「ああ! さっさと登り切るぞ!!」
俺達は女神の塔へと足を踏み入れた。
その背後に、別の存在を引き連れていたことを知らないまま。
NEXT