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呪いと魔女とテマソンと②

「ねえねえリリー、私ずっと前から思っていたんだけど、テマソンさん、ほんとはおかまさん演じているだけなんじゃないかしら?」


「あらどうしてそう思うのシャリー」


「だってテマソンさん、どうみたって碧ちゃんに恋してるでしょ。碧ちゃんは既婚者だから、正常でも本当は恋しちゃいけない相手だけど。テマソンさんってもともとバイなんじゃないかしらって思うのよね」


「えええええ?テマソンが私みたいなおばさんに恋?冗談でしょ。確かに、テマソンとは気が合うけど・・・」


「碧ちゃん、ここだけの話、旦那様のことはこの際おいといて、ぶっちゃけどうなのよ?私も聞いてみたかったのよね。あなたテマソンのこと男としてどう思っているの?」


「リリーお姉様までどうしてそういう話になるの?」

「あら女同士、旅行に行った夜にする話っていえば恋バナって相場が決まってるでしょ」

「そうそう、僕も気になる」

「ライフ、あなたは男でしょ」


「あら、じゃあこの子の耳をふさいでいてあげるから本音を教えてよ。誰にも口外はしないって誓うから」


そういうとリリーは息子の両耳をふさぎながら言った。


「えええ、僕も誰にも言わないから聞かせてよ」


そういいながら、ライフは必至で母親の手をどけようともがいていた。


「あああっいいいなあ、やっぱり息子って可愛いなあ。いいなあ、シャリーも三人もいるんでしょ。いいなあ」


「あら、家の子はこんなに性格可愛くないから相手してくれないわよ。いつも私を小ばかにしているような目でみるんだもの。私は碧ちゃんがうらやましいわ。娘っていくつになっても友達感覚でいられるでしょ。碧ちゃんと栞ちゃんたちのやり取りみてるとうらやましくなっちゃうもの」


「あら、お互い無い物ねだりね」

「でっ、どうなの碧ちゃん」


結局ライフの力が勝ちで、耳からリリーの手を引き離したライフが聞いてきた。


「う~ん私本気の恋ってしたことないからわかんないのよね。栄治さんともお見合い結婚で大恋愛しての結婚ってわけじゃないし、昔から人に恋をするってこともなかったし・・・どういう気持ちが恋なのかわからないのよね。テマソンは確かに、時々ドキッてするほど格好いい表情する時あるけど、ずっとテマソンのことを思って眠れないってことないし、なんていうのかな空気みたいな存在なのよね。いるのが当たり前みたいな。だからといって全てを捨ててどこかに二人で逃避行なんてしたいとも思わないし・・・正直よくわからないなあ」


碧華の返答にしばらく何もいわなかった三人だったが、ぽつりとリリーが言った。


「可哀そうなテマソン、おかまの振りをするしかないわね」

「そうだね、叔父さん可哀そうに・・・」

「同情しちゃうわね、報われない恋かあ・・・切ないわね」


碧華以外の三人は何を納得したのかため息をついて碧華をただ眺めてきた。


「なっ何よ三人とも?私はなんて答えればよかったのよ。私にもわかんないんだから・・・」


必死でいう碧華に三人は笑いだした。そしてリリーが言った。


「碧ちゃん、たぶんそれが正解よ。今のままでいるのがね。私も今のままの方がいいと思うわ。テマソンはかわいそうだけど」


「そうだね、その方が僕も都合いいしね」

「そうよね。テマソンと栄治さんがもめたらあなたも他人事じゃなくなるものね」


リリーはライフを見ながら言った。碧華はなんのことかわからなかったが、シャリーにはわかったようだった。


「あっそういえば、テマソンさんの魔女の呪いって結局何?おかま?」


シャリーは思いだしたようにリリーにたずねた。


「聞きたい?」


「秘密なら無理には聞かないけど、興味あるわ。本当にそんなことがあるのなら?」

「私も」

「僕も」


「そうね、このことは口止めされていないからいいか・・・実はテマソンは、女性アレルギーの呪いがかかっているのよ」

「女性アレルギー?」


リリーの言葉を聞いた三人が同時に叫んだ。


「そうそうアレルギーっていえば、一月のオークション大変だったわよ」

「えっママも行っていたの?」


「ええ、行くつもりなかったんだけど、テマソンに呼び出されたのよ。私すぐ近くにいたから、一人じゃ無理だから手伝ってほしいって、ほら私、美容師できるぐらいメイクも髪をセットするのも得意だから」


「知らなかったわ。全部テマソンが一人で仕上げたのかと思ってたわ」


「あの子、碧ちゃんにいいかっこしたかったんじゃない、あの後碧ちゃん倒れちゃってたでしょ、だから声をかけずに帰ったのよ」


「そうだったんですか。ごめんなさい、あの事私が勝手に引き受けてテマソンに頼んだんです。まさかテマソンアレルギーがあったなんて・・・」


「いいのよ、自分の会社のトラブルなんだもの。私は少し手伝っただけよ。でもね、面白かったわよ。テマソンもすごい形相になってたから。手にハンドクリーム塗りまくって、ナイロンの手袋なんかもして完全武装して格闘してたわよ」


「そうだったんですか?でもだからなんだ、あの時テマソンすごい嫌な顔をしたのよね。体質ならそういえばよかったのに、私の髪の毛や化粧は平気で素手でしてくれるからそんな体質なんて全く知らなかったから・・・・あれ?よく考えてみたら、テマソンが女性アレルギー潔癖症?でもテマソン、私には最初にあった瞬間もまったくそんな素振りなかったわよ。平気で家に上がり込んできたし、握手もした気がするし」


「それって叔父さん、碧ちゃんを女性として認識していないってことかな」

「!」

「そうなの?じゃあ私はなんなのかしら?」

「あらそんなことないと私は思うわ」


シャリーの言葉にリリーも頷いていた。


「そうよ、碧ちゃんのほうがテマソンを男として意識してないみたいだけど、テマソンは違うと思うわ」

「そうなんだ、僕は相思相愛なんだと思ってた」


「あらライフ、あなた忘れていない、私既婚者よ」


「あっそうだった。栄治おじさんいたんだった。じゃあ碧ちゃんにとって叔父さんはなんなの?愛じゃないなら」


「そうね、愛にもいろんな形があるのよ」

「そうそう、お子ちゃまのあなたにはまだわからないわよ」


リリーがライフにいうと、シャリーも同じように頷いていた。ライフは首をかしげていた。


「でも驚きだわ。テマソンにそんなアレルギーがあったなんて、もったいない。あんなにイケメンなのに」

「あら、昔は普通だったわよ、そうねどっちかっていったらエンリーくんみたいなタイプだったわよ」

「えっ、叔父さん小さいころからおかまさんじゃなかったの?」

「ライフ!女子トークに割り込まないで、早く自分の部屋に戻って寝たら、魔女伝説の話は終わったんだし」

「ああ、僕だけ仲間はずれにする気なんだ」


ライフは可愛くすねてしまった


「もう仕方ないわね。ここに入る?」


リリーは碧華と自分の間にすき間を作ってライフに言った


「えっいいの?」

「いいわよ、いらっしゃい」

「やったー」

「もうあなたのそんなとこ大好きよ」

「えっどんなとこ?」

「ライフくん、普通の十八歳の男の子はお母さんと一緒に寝ようっていわれて喜んだりしないわ」

「えっ?そうなの?」


ライフだけじゃなく碧華も驚いた顔をしてシャリーにたずねた。


「えっ碧ちゃんも同じ反応なの?」


反対にシャリーが驚いて聞き返した。


「私、独身時代は夏なんか自分の部屋にクーラーなかったから、毎年夏は両親の部屋で一緒に寝てたわよ。私お父さん大好きだったから、いつも用もないのに夕食食べてからもぐだぐだ一緒にテレビみたりしてたわよ。それに私たち兄妹はみんなお母さんに今日のことを話してたし」


「あらそうなの?」


「もしかして碧ちゃんってテマソンのことお父さん見たいな感覚なんじゃない?」

「・・・そういわれればそうかも」


「碧ちゃん、それ叔父さんに言わない方がいいよ。叔父さんが聞いたらショック受けるかもしれないよ」


「あら、あの子なら安心するんじゃないかしら?」

「どうして?」

「アレルギーはあなたには効いていないってテマソンも気付いているからよ」

「何それ?」


「女性に素手で肌を触られるとアレルギー反応を引き起こして倒れちゃうのよ。だからあの子夏でも長袖は欠かさないでしょ」


「えええ~そんな怖いアレルギーあるの?僕なら生きられないや」

「えええ~テマソンさんそんなアレルギーもちだったの?でも私やお得意先の方にも普通に接してるでしょ」

「そうよね」


「そうなのよね、あの子普段はハンドクリームを欠かさずつけてるから、手で触れる分には支障ないみたいなのよ。問題なのは素手で触った時や、あの子に色目眼鏡でぽ~っとなってる子が触ってきた時ね。昔はすごかったんだから、アレルギーで発疹がでて、過呼吸になっちゃうのよ」


「そうなんだ」


碧華はまだ納得いっていない様子だったが、その話を聞いたライフがおもしろそうに言った。


「もしかして碧ちゃんに触れても叔父さんが何ともないのは、碧ちゃんが叔父さんに恋していないからじゃない。女性アレルギーがでるのは、叔父さんに好意を持ってる人間限定だったりして、だからシャリーおばさんも一緒にいても平気なんじゃない、だってシャリーおばさん、叔父さんのことなんとも思ってないでしょ?碧ちゃんを独り占めするムカつく奴って思ったとしても」


「あらライフくん、それは言い過ぎだわ。私は何もそこまで思ってないわよ。少し嫉妬しちゃうけど、でも・・・確かに私はテマソンさんのことは全く男性としては好意は持ってないわ。人としては好きだけど」


「シャリー、私はあなたも大好きよ」


碧華は隣にいるシャリーに抱きついて言った。


「あら私も」


二人は笑いながら抱き合ってると、リリーが二人の上に覆いかぶさった。


「こら!また二人でぬけがけしてる。私を仲間はずれにしちゃだめだっていつも言ってるでしょ」


碧華はリリーにも笑顔をむけながら言った。


「二人とも大好き!」

「叔父さん可哀そう・・・やっぱり叔父さんの片思いなんだ」

「あら碧ちゃんはテマソンにちゃんと恋してるわよね」

「そうねえ、私テマソン好きよ。イケメンだしね」

「恋じゃない好きなんだ」

「そんなとこかしら」

「だからなんじゃないかな。アレルギーが碧ちゃんだと効かないのは、碧ちゃんが異性としてみていないから」


「そうね、もし呪いがかかってるんだったら、碧ちゃんは問題外としても栞ちゃんや優ちゃんにも反応してもおかしくないけど、あの子たちも問題なさそうだものね」


「そうだよね。やっぱりテマソンさんが女性アレルギーになるのはテマソンさんに色目を見る女性たちに反応するのよ。だって、まあ私ももうおばさんの部類だからかもしれないけれど、テマソンさんと握手しても普通の反応だし、ご自宅にも泊まらせてもらったけれど、普通だったでしょ。多分、私もだけど、栞ちゃんも優ちゃんもテマソンさんを男性として意識してないからテマソンさんも何も感じないんじゃないかしら」


「そうかもしれない」

「でもね。テマソンさんは碧ちゃんのこと本気で大切だと思っていると思うわよ」


シャリーの言葉にリリーもライフも頷いていた。


「またまた、ただの相棒よ、私達は」


「いいえ、私もそう思うわ。本当に驚いたのよ。お城で会った時にね、あの子とうとう見つけたんだって

思ったわ」

「みつけたって?」

「本当の運命の相手をよ、じゃなきゃ城へは連れてこないわよ。家族も一緒になんかね」


「私が運命の相手?それならテマソンがかわいそうね。私、テマソンの子供産んであげれないもの。万が一栄治さんと離婚したとしてもね。一生独身はかわいそうじゃない」


「それはそれでいいんじゃないかしら。人それぞれ幸せは違うから」


「そうね、私が気に病むことではないわね。私にはどうしてあげることもできないもの。邪魔なら日本に帰るわ」

「あら、テマソンが邪魔だって言ったら私たちがいるじゃない。ねえシャリー」

「そうよ碧ちゃん、私はいつでも大歓迎よ」


シャリーは真剣な顔で碧華に言った。碧華は笑顔をシャリーとリリーに向けた。


「ねえママ、さっきから僕気になってたんだけど、叔父さんのアレルギーって何かきっかけになる事件でもあったの?」


「あったわよ。碧ちゃんは知りたい?」


「う~ん知りたいような聞いちゃいけないような、複雑ね。でもやっぱり聞かない方がいいかな、だってテマソンのことはやっぱり本人から直接聞きたいし」


「そうねライフ、あなたももし今夜聞いちゃったら、あなた女の子が怖くなって、今夜は一人で眠れなくなるわよ」


「じゃあ日本は日曜の朝だからエンリーか優ちゃんにテレビ電話して朝まで相手してもらうよ」

「あなたらしい発想ねライフ可愛い」


リリーは嫌がるライフをギュッと抱きしめるながらいった。ひとしきり息子とスキンシップをとると、碧華に向かって真顔で聞いた。


「ねえ碧ちゃん、もしテマソンのアレルギーが無くなったらテマソン、ほかの女に夢中になっちゃうかもしれないわよ。男はまだまだ子供作れるでしょ。そうなったら、今みたいな関係じゃなくなるかもしれないけど、そうなったらどうするの?」


「そっかあ・・・じゃあ、仕事だけさせてもらってこっち来る時はいちいちホテル探さなきゃいけないわね」


「僕女の人って怖くなってきちゃったよ」


「あら、人生楽しまなきゃもったいないじゃない。人の心は他人にはどうすることもできない時ってあるもの。あなたも私たちぐらい生きたらわかってくるわよ」


「そうね、私もようやくわかってきたわ。諦めも必要な時があるわよね。でも碧ちゃん、私は当分はあなたをあきらめるつもりはないですからね。相手がテマソンさんでも」


「あら私もシャリー大好き。親友だもん。腹の立つ時もあるけど」

「あらお互い様よ」

「こらー、私をのけ者にすると許さないわよ」


リリーはライフを押しのけ碧華とシャリーに向かって飛び込んできた。


「痛いよママ」


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