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第一回ディオレス・ルイオークション④

いよいよディオレス・ルイ初のスタッフによるオークションが開催された。

最初の開催の挨拶にテマソンが登場すると、会場にどよめきが起こった。


「本日はお忙しいところ、ディオレス・ルイのオークションにご参加いただきました皆々様、誠にありがとうございます。


本日の商品は、我が社の社員たちがそれぞれが一生懸命に作りました品々でございます。まだまだ、未熟なデザインもございますが、気に入っていただけます商品がございましたらぜひ、オークションにご参加いただきますよう、よろしくお願いいたします。


さて、本日のオークションのラストには、百名様限定ではありますがプレゼント争奪クイズ大会も企画しておりますので、何卒最後までご観覧、ご参加いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。なお、本日のオークション終了後には今回のオークションにかかわりましたデザイン担当者、並びに、縫製製作者が一堂に皆さまにご挨拶いたします。何卒最後までご覧いただけますようお願い申し上げます。なお本日のオークションの売り上げの一部は、ブルム財団の恵まれない子供たちの為の就学金として寄付させていただく予定としております。それでは皆さま、オークションの始まりです」


テマソンの挨拶で会場中から拍手が起きた。


その後、オークションが司会者によって順調に進行されていった。


「オークションもいよいよ中盤にさしかかってまいりました。さて、本日ディオレス・ルイ上限価格、千マルドル目玉企画もいよいよこれがラストの商品となりました」


そう司会者が言った後、舞台中央に運びこまれたのは、薄い水色の帆布の布地の面中央にペンギンと梟のイラストの刺繍が施された、持ち手部分は濃いブルーのトートバッグだった。


「ああ、私もあれ狙ってたのよね。私も参加したいな~」


碧華はモニターに写しだされた画面をブツブツいいながら見守っていた。

碧華も気に入っただけあって、スタート一秒で千マルドルの札があがった。それも五百人の会場の中ほぼ全員の札が上がっていた。その後、抽選が行われる主旨を司会者が告げると、先ほどまでの上限千マルドルまでの商品ではブーイングが起きずスムーズに抽選が行われ落札者が決まっていたのだが、今回はかなりのブーイングが起きているような様子だった。


モニター室でも動揺がはしり、あわただしくスタッフたちが動きはじめていた。そして何やら館内放送が入れられた様子だった。碧華は何が起きたのか気にはなっていたのだが、邪魔をしてはいけないとその場を動かずじっとモニターを眺めていた。どうやら休憩が入った様子だった。


その時、モニター室にアドルフが入ってきた。彼が入ってくるなり、バタバタとしていたスタッフたちが一斉に碧華の元に集まってきた。


「えっ?えっ?なっ何?」

「社長から何かトラブルがあれば碧華さんの指示を仰ぐように言われておりました」

「えっ?私?どうして?他にも偉い人たくさんいるでしょ?」

「ですが、社長が結論がでない場合は碧華さんに指示を仰下と」

「なんですって!テマソンたら余計なことを・・・」

「あっあの時間がないのでよろしいでしょうか?」

「わかったわ。どうぞ」


「今、会場から事情を確認したのですが、どうやら、他の千マルドル上限オークションのようにくじ引きでは嫌だというお客様の声が多く上がってきておりまして、普通のオークションに変更しろという苦情が会場中に起こってしまっているようなのです」


「どうしてあれだけ?」


「どうやらお客様方はあれが社長が自ら縫製もしたかなりレアアイテムだとご存じのようでして、それが千マルドルで手に入るということは前代未聞ですので、かなり殺気立っているご様子なんです」


「ええ~。あれテマソンが作ったトートバッグだったの?彼が自分で作るとそんなに高価になるの?でもうちの娘なんか彼に作ってもらったトートバッグを普通に学校に置きっぱなしにして使ってるわよ。そんなにレアだったの?」


「はい、社長が自ら縫製した商品など普通店に並ぶことはまずありませんから」

「でもどうしてわかったのかしら?」


「我々でもわかりますよ、縫製の仕方も違いますし、何より、あの刺繍されているデザインは社長のデザインの特徴がありますから、我々もあれは千マルドルの枠に入れるのは反対したのですが、オークションはお祭りだから、一つぐらい宝さがし的に誰でも買えるチャンスを与えてあげたいとおっしゃって」


「そう、じゃあ・・・やっぱり、このまま千マルドルで誰かに買っていただかないといけないわね。そうねえ・・・くじ引きがだめなら・・・仕方ない最後の手段ね」


碧華は驚くスタッフたちを尻目に、休憩中に会場中にいるスタッフにこれから行うことの説明をするよう伝えた。ただし、テマソンのいる控室のスタッフたちにはこのことは内緒にするように伝えた。





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