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碧華の長い一日①

教会をでた後、六人でテマソンの部屋に戻った碧華たちは、テマソンの部屋に飾ってあった純度の高いラピスラズリの球体をかけて五人でトランプ勝負を始めた。


「ちょっと、栞、優、あなたたちこの二人が勝ったらもらうつもりでしょ。ずるいわよ」

「ママ、勝負は勝負よ。ママもテマソン先生に味方に付いてもらえばいいじゃない」

「栞ちゃん、それはおかしいわよ」


テマソンは離れた椅子に座りながらパソコンで何か作業をしている様子だった。


「テマソン!」


碧華がすごい真剣な顔でテマソンを手招きした。テマソンは、大きなため息をつきながらトランプゲームの輪に混ざった。


「あっそういえば、リリーお姉様は?教会でみかけなかったけど」


碧華は突然思い出したかのように、トランプを配りながらライフにたずねると


「ああ、ママならパーティーが終わってすぐに疲れたっていって寝たよ」

「えっ?そんなに早く寝たの?」


「うん、ママ普段はすごく早く寝るよ。たまに遅くまで起きてる時あるけど、今夜はおばあ様の代理で主賓務めたから疲れたんじゃないかな。ミサは別に強制じゃないからね」


「そうだったの。じゃあ私も寝とけばよかったかなあ・・・でもいいか、ミサなんて経験めったにできないし。明日リリーお姉様にも謝らなきゃ。途中で抜け出しちゃったし」


「ああ、そういえばリリーも言ってたわね。あなたと話がしたいって」

「そうねの、明日私は時間あるから、リリーお姉様の空き時間があるか聞こうかな」


碧華の言葉を聞いたテマソンが思い出したかのように付け加えると、碧華がしばらく考えながら独り言のようにつぶやいた。


「じゃあ、明日はリリーにあなたを預けようかしら」

「テマソン、私は物じゃないわよ」


「あら、何言ってるのかしら、いつもトラブってるくせに、栄治さんも明日帰っちゃうし、ここアトラスでは栄治さんにあなたの面倒をみるようにって頼まれているんだから」


「なによ、栄治さんったら、私は子どもじゃないっていうのに!」


「それだけ、栄治おじさんに愛されているってことなんじゃないかな。碧ちゃんって、少しおっちょこちょいなとこあるだろ、そこが可愛いんだけどさっ。心配なんじゃないかな。浮気とかって意味じゃなく、トラブりに巻き込まれないかっていう意味でさ」


プンプン怒っている碧華にライフが宥めるように言った。


「そう言えばそうか・・・日本じゃお互い放任主義だけど、ここは外国だから気になる気持ちはわかる気がするな・・・私も栄治さんがビルさんと出かけてる間、危険はないかなって少しは気になるし。でも本当に大丈夫よテマソン、明日は一日中城にいる予定だから。心配ないわよ」


「まあそういうことにしておいてあげるわ。私は一日は毎年、仕事関係の会社の社長宅にあいさつ回りをしてるのよ。今年はあなたを連れていこうかと思っていたんだけど」


「遠慮しておきまーす。いってらっしゃーい」


碧華は笑顔でいいながらもきっぱり断った。


「あっ僕らも明日は僕の実家に呼ばれているんで4人で留守になるんだけど、碧華ママ一人で大丈夫?一緒に行きませんか?母も喜びますし」


エンリーは心配そうにたずねた。


「大丈夫よ。子どもじゃないんだから。ゆっくり城の中を散歩したいと思っていたから、城に残るわ。もしリリーお姉様が忙しそうだったら、私部屋で昼寝でもしてるから」

「まっ城にいる分には大丈夫よね」


テマソンはいまいち不安そうだったが、思い直し、明日は一人で出かけることにした。

六人でのトランプ勝負はエンリーの勝利となり、ラピスラズリーの球体は栞のものとなった。その後も1時間ほど遊んでいたがさすがに皆眠くなってきたので、眠ることにした。


翌朝朝早く、ビルの車で栄治と広は空港に向かい日本に帰って行った。碧華は昼食をリリーととり、たわいもない話をリリーと話ながら過ごしたが、リリーに来客がきてしまい、その後も絶えることなく訪問者が訪れていて、自分の部屋にいた碧華に執事が伝言を持ってたずねたきた。そこには、急に昼過ぎまで来客者がくることになってしまい、それが終わるとリリーとヴィクトリアとで外出の予定が入ってしまったので一人で大丈夫かというメッセージと共にお昼は厨房に行けばコックに用意させているという内容のメッセージが書かれていた。それを読んだ碧華は執事に自分は大丈夫だと告げ、碧華はヴィクトリアに午後から城内の散策をしてもいいか許可をもらいたい旨のメッセージを紙に書き込んで十二時に昼食をいただきに行くと厨房のコックにお願いしてくれるように執事に頼みその紙を執事に渡した。執事は碧華のヴィクトリアは各部屋の中以外だったら、城の中を自由に歩いてもいいと快諾したとの伝言をすぐ折り返し伝えにきてくれた。碧華は12時になって厨房に行き、コックのおいしい昼食を食べ、午後から思う存分城内の散策をすることにした。


碧華はぐるりと城内を散策しながら、記憶の片隅にいつもでてくる小さな小部屋に通じる壁らしものを捜していた。そこに大切な何かがある気がして、探さずにはいられなかったのだ。途中すれ違った使用人たちに

その場所を口で説明しても誰も知らないと言われてしまい、仕方なくあてもなく色んな場所を歩いた。

その後、なんとなく手ぶらで歩いていた碧華だったがふといつものリュックを持ちだそうと思い付き、いったん部屋に取りに行き部屋を出た。部屋をでると、いつも使っている下におりる階段がある方角と反対側の通路には行ったことがないことを思いだし、どこに通じているのわからないまま、さらに奥まで続いている通路をひたすら歩いて行った。

すると、やがて突き当たると、古い木の扉が現れた。碧華はその扉を開けると、そこは石づくりの少し古ぼけた石の階段があった。碧華は階段を降りきると、大きな扉がまたあり、その扉を押し開くと、以前テマソンと歩いた囲い庭園にでた。そこから地下に通じている階段や扉は見たところなさそうだった。突き当りも丸い石が一面埋め込まれた石の壁があるだけで、左側は庭園で、右側は石壁があるだけだった、ただ、階段の横にはその下までまだ階段が続いていそうな空間があり、その場所だけは、下の石の模様が違うような気がした。 


『テマソンが確かあの通路の先の階段の下は何もないって言ってたけど、いつも夢ではその先を歩いている気がするのよね。きっと何か隠し通路があるはずなのよね』


碧華はそう独り言をいいながら、階段を降り続けた。階段の降りた段数からすでに地下の領域にあるのは間違いなかった。


階段を降りきると、確かに何もない石の壁があるだけだった。碧華はその石の壁に手をあてると、記憶の中の動く石を探した。背の高さから順番に触って、ちょうど身長の半分ぐらいの高さの部分の右端部分を触れた瞬間動きそうな石があることに気付いた。碧華はその石を力任せに押してみたが何の反応もなかった。


「ここじゃないのかなあ・・・よし、押してダメならひいてみろだ」


そういうと、今度は両手で縦横十五センチの大きさのその石と隣の石の間に手を挟むようにもち力任せに引っ張ってみた。だが、動きそうで全く動かなかった。その時ふとその石上のほうに〇型の石が目に留まった。よくみるとその石の周りは他の石とは違い、すき間が〇型にあるように思えた。


「そうだ、この形、前にヴィクトリア様にもらったブレスレットの形に似てる」


碧華はリュックを背中からおろすと、中に入れているポーチの中からヴィクトリアからもらったブレスレットを取り出し、はめてみた。すると、まるですいこまれるかのように壁に埋まってしまった。


〝ゴゴーッ‶という鈍い音が鳴り響いたかと思うと、反対側の壁が突然開き、新な通路が現れた。中からひんやりした冷たい空気が押し寄せてきた。


碧華はリュックの横にぶら下げていたキーホルダー型の小さなライトを取りはずし、その先を照らしだしたが、更に下へと通じる階段があるようだった。碧華は恐る恐るその地下階段をのぞきこんでいると、突然背中を強い力で思いっきり押され、碧華はバランスをくずしてその地下に転げ落ちてしまった。碧華は薄れゆく意識の中で女性の顔が視界に入った。その影は碧華の魂に語り掛けるかのように囁いた。


「あなたがいけないのよ」


その影はそういうと、開いたばかりの扉を閉じてしまった。碧華をそのままにして・・・・




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