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年末年始長期休暇①

「Why are you here?」


テマソンは思わず叫ばずにはいられなかった。テマソンは十二月二十四日の仕事を終えて二十二時発の便に飛び乗った。日本に到着したのは後、東京で一泊し、テマソンは翌日桜木家の玄関に立っていた。碧華の車がなかったが誰かいるだろうとチャイムを鳴らし、玄関の戸が開いて最初に顔をだしたのがリリーだったのだ。


「あらいらっしゃい、テマソン」


テマソンはあまりの驚きに手に持っていたお土産に買ったお菓子を落としてしまった。慌てて拾い上げながらリリーを睨みつけた。

リリーはおかしそうに笑いながら答えた。


「なぜって遊びにきたからに決まっているじゃない。ばかねえ」

「・・・・」


テマソンは怒りが沸々とこみあげてきた。


「あなたいつから来てるの?いつまでいるつもり!」


「昨日からよ。ママンがね、広さんと日本の神様がいる神社めぐりがしたいっていうからどこに行こうかって今話していたところよ。でもとりあえず、今日はゲートゴルフっていうのをしに行くのよ。あんたも行く?」


「ちょっと待って!ママンまで来ているの?」

「当然でしょ。私はあなたと違ってママンをほったらかして年末の忙しい時期に日本にきたりしないわよ」


二人が玄関先で声を荒げて話しているところに、碧華が車で家に到着した。栞を学校へ送って行ってきたという。


「いらっしゃいテマソン、寒いでしょ。早く中に入りなさいよ」


そういいながら、碧華は慣れた様子で車を車庫に入れ、車からでた。テマソンはまだ不機嫌そうにしていた。自分だけの計画のはずが、先を越されたのだ。面白くないのは当たりまえだった。

碧華は家の留守番を頼んでいたリリーと共にテマソンを連れて隣の広の家に移動したが、まだテマソンの機嫌は直っていなかった。


「いつまで膨れているのよ」

「私は別に普通よ」


二人の会話を聞いていたヴィクトリアが二人の間に割って入ってきた。


「テマソン、あなたを誘わなかったのは悪かったと思っているわ。でも私も一度来てみたかったのよ。あなたは仕事の都合がつくかわからなかったし」


「ママンが悪くないのはわかってるわよ。でもママン、城のミサとかはどうしたの?毎年恒例なんでしょ」


「チャーリーと執事に全部任せてきたわよ。私は残り少ない人生を楽しむことにしたの。今は私が主よ誰にも文句はいわせないわ。長生きはするものね。こんなにワクワクした旅行は初めてよ。碧ちゃん達が一緒に観光できないのは残念だけど」


そう言ったヴィクトリアは少し残念そうにしながらも楽しそうにほほ笑んだ。テマソンはあまりの驚きで言葉をなくしているようだった。


「ごめんなさいヴィクトリア様」


「いいのよ、学業第一だもの。今回はアトラスで一緒に過ごせるし、それにね私すごく楽しみにしていたのよ日本の神様にあうのは初めてだから」


リリーとヴィクトリアは目の前の観光ガイドをパラパラとめくりながら言った。碧華はきたばかりのテマソンの為に、暖かいコーヒーをカップに注いだ。


「じゃあヴィクトリアさん、そろそろゲートゴルフ行きますか?」


広が立ち上がりいうと、ヴィクトリアも立ち上がった。


「広さん、私はこのかっこでいいのかしら?」


ヴィクトリアは自分のロングドレスをみながら言った。


「そうねえ、リリーさんはその恰好でもいいですけれどヴィクトリアさんはそのロングドレスだと動き辛いと思うんだけど、ズボンとか持っていないかしら?」


広がいうと、ヴィクトリアは首を横に振った。


「じゃあなるべく動きやすい服は?」

「それならあるわ」


「そう、じゃあ私のズボンでよければ履きますか?多少丈が短くてもこの際目をつむるとしてウエストはベルトをすれば大丈夫だと思うから、着替えて行きましょう」


二人はいそいそと着替えに隣の和室へと行った。


「テマソン、せっかく来てくれたのに悪いんだけど、留守番しててくれる?お母さんたちをゲートゴルフ場まで送って行ってくるから」


「いいわよ。私はテレビでもみてるから」


テマソンは不貞腐れたような顔をしながら言った。



昼過ぎ、ヴィクトリア達三人を再び迎えに行き、すぐに碧華は栞を学校まで迎えに行き、ようやく家に戻ると、優が駅から一人で帰ってきており、テマソンも隣の家から家に移動して二人で楽しそうに話しをしていた。


「ただいまー」


栞は靴を脱ぐと真っ先にテマソンの隣に座った。


「テマソン先生いらっしゃい。いつまで日本にいられるんですか?」

「お帰りなさい栞ちゃん、まだわかんないわ。あなたたちもずっと学校あるんでしょ?」

「そうなんだけど、テマソン先生がいると楽しいから」

「あら~うれしいわねえ。栞ちゃんがそう言うならいようかしら」


ご機嫌そうにいうテマソンに、夕飯の準備を始めた碧華がリビングに顔をだして口をだした。


「えっ、リリーお姉様とヴィクトリア様達は明日から、京都と三重に観光に行くんですって。急だけど、ホテルも予約取れそうだってさっき話してたわよ。あなたも一緒に行ってくればいいのに」


「何よ、あの二人の付き添いなんて余計疲れるからごめんだわ。私はのんびりしにきたのよ。じゃまだったら私出て行くわよ」


碧華の一言にその不機嫌さをかくそうともしないテマソンに碧華は小さく笑うといった。


「あらよかった」

「なっ何がいいのよ。あなた私に出ていけって言ってるの?」

「いいえ、一緒に行っちゃったらどうしようかと思っただけよ。私、あなたに無償で手伝ってもらいたいことあったのよね」

「大掃除なんか手伝わないわよ」

「あっそうか!それもしないといけなかったんだ」


碧華はポンと両手を合わせた。


「でもそれだけじゃないのよ。実は、私も一月のオークションに出品したいものがあるのよ。それをあなたに手伝ってもらいたいなって思って」


「あなた興味ないって言っていなかった?」


「うん、でもアドルフとメールで話してて気がかわったのよ。彼もデザインを考えて制作部の子たちと休暇の間に何か作るって言ってたわ。あなた休暇中、作業室を自由に使える許可だしたんですって、やさしいじゃない」


「あんまり大勢が使いたいって頼みにくるもんだから仕方なくよ。企画と作業所以外は鍵をかけて立ち入り禁止って言ってるけれどね。まあ使用許可を申請して名簿と鍵の管理責任者もきちんと報告してきたから特別に許可をだしたのよ。何?あなたもカバンを作るの?」


「いいえ、私が作りたいのは、これよ」


そう言って、コタツの横の紙袋の中から取り出したのは三種類の革の布地を組み合わせてフクロウの形にきった。キーホルダーだった。


「可愛いでしょ。カバンの横につけたり。鍵につけたりするキーホルダー、私ね。あなたのカバンに前から何か物足りないなあって思っていたのよ。でっ、ようやく気付いたってわけよ。カバンにつけるキーホルダーがお揃いの布地で作ってあったらもっと可愛いのになあって」


「確かに可愛いわねえ。これを作るのを私に手伝えっていうの?」

「いいえ、テマソンにはいろんな動物のデザインをしてほしいの」

「デザイン?」

そうよ、テマソン絵が上手でしょ、いろんなキャラクターがあるといいなあって思ったんだけど、だめかな?」


「いいわよ。なんだかおもしろそうだし。アイデアとしてはいいと思うわ。でもねえ・・・あなたに手伝って私に何かメリットがあるの?」


テマソンはしばらくその作品を眺めながら答えた。


「ああ~そんなこと言うんだ。ケチねえ・・・はあ・・・そうねえ・・・う~んと、じゃあ・・・そうだ、二十九日からのアトラス行きを二日ほど延ばして、遊園地に行く?」


「はあ?あなた頭大丈夫?どうして遊園地なのよ?この歳で遊園地なんて行くわけないでしょ」


「ええっ、そんなことできるの?私行きたい!遊園地」


話を聞いていた栞が真っ先に叫んだ。


「あなたに言ってないでしょ栞。テマソンは遊園地嫌いなの?」

「なっ何よ、遊園地なんて・・・いい歳したおじさんが一人で行ったってちっとも楽しい場所じゃないでしょ」

「ええ!ねえテマソン先生、一緒に行こうよ。私富丘キュ―ランドに行きたい!あそこジェットコースターがたくさんあるんだよ久しぶりに乗りたいなあ~」

「私も行きたい!ねえテマソン先生行こう」


今度は優がテマソンに話かけた。両方から誘われるテマソンはまんざらでもなさそうだった。


「どうしようかしら、私遊園地なんて行ったことないのよね」

「えっ!遊園地行ったことないの?」

「そうねえ・・・記憶の限りじゃないわね」

「じゃあいこうよ。絶対楽しいよ」


栞と優が同時に叫んだ!


「あなたたちはその前に宿題は全部しておくことが条件よ。その後アトラスにいくんだから、宿題持って行かないといけなくなるわよ」


「は~い。ねえ、テマソン先生、数学と英語わからないとこだらけで進まないんだけど、教えてえ~」


「もう仕方ないわね。のんびりしようと思ったけど、あなたたちに付き合ってあげるわ」

「やったー!、ママ本当に遊園地行くの?」


「今年はママたくさん仕事したから、パパさえいいっていったら行ってあげるわよ。でも、ホテルの予約が取れなかったりだとか、飛行機変更できなかったら諦めるのよ」



その日の夜、栞は仕事から帰ってきた栄治に予定を変更してもいいか聞いてみた。すると意外な返事が返ってきた。


「好きにしたらいいよ。ママと三人だけで行くっていうなら反対だけど、テマソンさんが一緒で、アトラスにも連れてきてくれるんなら安心だし、それに元々二十九日に向うに着いたら、パパだけ、ビルさんとジャンニさんの三人でキャンピングカーで釣に行く予定になってるからお前達が遊園地に行くならパパは先におばあちゃんとアトラスに行ってるよ。どうせおばあちゃんはヴィクトリアさんと過ごすみたいだし」

「やったー!ママ!パパのオッケーでたよ」


栞はそう叫ぶと台所にいる碧華の所に走って行った。その言葉を聞いた碧華が台所から顔を出し栄治にたずねた。


「栄治さん本当にいいの?私たちだけ別行動しても」

「どうせ向こうについても別行動し、富丘キューランド行きたいってずっと言ってたしな。予算何とかなるんだったらいいよ別に。けど今から飛行機の日程変更できるのか?ホテルも年末だし予約するの難しいんじゃないか?」

「テマソン先生に聞いてくる」


栞と優は嬉しそうに隣の家にいるテマソンに報告に向かった。



「テマソン先生、パパがいいって!飛行機変更できそう?」

「それがねえ、キャンセルはできそうなんだけど、今からだとキャンセル待ちしないと無理かも・・・やってみるわ」


テマソンはスマホで検索し始めた。その時広の家の玄関のチャイムが鳴った。






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