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心とプレゼント①

「おはようございます」


アドルフは大きなあくびをしながらオフィスに入って来た。


「あなたまた夜遊びしてたの?」


パソコンを打ち付けながら隣の席のビビがあきれ顔で言った。


「ひどいいわれようだな。昨日は一日母の用事と僕の用事が重なって大変だったんだよ」

「あら、あなたの用事って、飲みに行くことじゃないの?それともコンパ?」

「違うよ、僕だって欲しい物があるんですよ」

「あら用事って買い物なの?」


ビビの言葉を聞いてアドルフは椅子に座った後、かばんの中から一冊の本を出した。


「じゃーん、碧華さんの限定本、サイン入りをゲットしてきたんだ」

「あ~!あなたも行っていたの?私も行ったんだけど、完売してて、予約注文してきたのよ」

「それは残念だったね。碧華さんのサイン入り新作初版本ゲットできなくて、僕なんか昨日は三時間も早くから並んだんだぜ、帰ってから何度も読み返してるんだけど感動しまくりだよ。もうおかげで眠くて」

「ああ~いいなあ、ちょっと読ませてよ」

「いいよ、だけど、丁寧に扱ってくれよ」


二人がそんなやり取りをしていると社長が大きなあくびをしながらあらわれた。


「みんなおはよう。今日も頑張りましょう」


そういいながらもテマソン社長もまた眠そうだった。



昼すぎ、テマソンの携帯に書店から連絡が入った。碧華のファンからのプレゼント二十箱分が今ディオレス・ルイ社に向けて出発したとの知らせが入ったのだ。


「二十箱もあったの、どうしようかしら」


テマソンはそんなに大量の荷物を客間に運びいれるのをどうするか考えていた。

結果、スタッフ三人を呼び、荷物が届いたら上に運び入れるのを手伝ってくれるように指示を出した。やがて届いた荷物を客間いっぱいに運び入れたテマソンは碧華の携帯に苦情の電話をさっそく入れた。


「碧華、あなた今どこにいるのよ?」


〈えっ、今エステしてるのよ。すごいわよ〉


碧華ののんきな声にムッととしてテマソンが声を荒立てた。


「いいわね・・・こっちは汗だくであなた宛の荷物を運び入れたっていうのに・・・」


〈あっ、プレゼント届いたの?ありがとう。明日仕分けに行くわ〉


「ものすごい荷物よ、どうするつもりなの?」


〈そんなに多いの?日本に送るんだったら、高くつくわよね・・・〉


「はいはい、この荷物全部持って帰ってくれるんだったら、私が出してあげるわよ」


〈本当?わかった。優をつれて仕分けにいくわ。写真とっときたいし、大量のごみ袋とかある?〉


「あなたいらないものは捨てるの?」


〈なるべく捨てないけど、あんまりたくさん荷物送ったら栄治さんにしかられそうだから、外箱とか写真だけでもとってファイリングしてから欲しいのといらないものを整理しようかなって思ってるんだけど、そんなに多いのか・・・〉


「まっあなたらしいわね。ゴミ袋ならたくさんストックあるから、客間に置いといてあげるわ。リリーの鍵まだ持ってるでしょ。それで勝手に入っていいから、明日は早くから片づけてよね」


〈わかった。じゃあねえ、仕事頑張ってね〉


「仕方ないわね。仕事頑張るとしますか。フフッ、まったくいい気なもんよね」


テマソンは文句を言いながらもご機嫌な様子で鼻歌を歌いながら下におりて行った。



翌日の9時頃、碧華はレヴァント家の車で、優とライフの二人を連れてディオレス・ルイ社の裏側についた。買い物袋三つも抱えてテマソンの自宅へと上がって行った。


「うわー!想像以上だね。こんなにただでもらったんだ。僕も本書こうかな」


ライフは目の前に積まれたたくさんのプレゼントを見て叫んだ。


「さて!作業開始するわよ。明日までに片づけないといけないんだから。まず全部の写真撮るわよ」


碧華はそういうと、鞄の中からデジカメと買い物袋から白い紙とマジックとはさみを取り出し、白い紙をはさみで五センチの四角形に切りマジックで数字を書き始めた。百まで数字を書き込むと、まず箱を1つ開いた。箱の中には様々な大きさのプレゼントが入っていた。


「ねえ碧ちゃん、もしかしてファンの人たちって碧ちゃんの歳知らないんじゃない?」

「あらどうしてよ」

「だって、五十前のおばさんにこんなかわいいぬいぐるみのプレゼントって変だよ」



そう言って、透明な袋に可愛い大きなリボンが付けられている大きなフクロウのぬいぐるみを取り出し言った。それを聞いた碧華はにっこりと笑うとライフに向かって一言言った。


「ライフ、忠告1」

「何その忠告って?」


ライフの質問に碧華は答えず、無言でライフからフクロウを受け取ると、白い壁際に置きその前に番号を置くと写真を撮った。無言で作業をしている碧華にライフは横にいた優に小声でたずねた。


「ねえ優ちゃん、忠告って何?」


「あのね、ママね、私やお姉ちゃんがママに対してカチンとくる言葉や態度をとったら、ママに忠告の数を増やしていかれるの。でっ忠告が十点に達したら何か小さなお仕置きをされるのよ。他の人にはしないけど、ママ曰く、相手が嫌だと思うような言葉は言わないようにっていうママ流の教育の一環であえて忠告してるんだって、言わないと、相手がどの言葉に傷ついたかわからないままでしょっていうんだよ。私の場合のお仕置きは制服にアイロンかけてもらえなかったり、駅まで荷物運びに自転車で迎えにきてくれるのにカバンを重い方を持ってもらえなかったりかな」


「碧ちゃんらしいね。迎えには一応きてくれるんだ」


「当たり前でしょ。だってもしもよ、後でこんな理由で行かなかったことを後悔する事が起きたら悔やむでしょ。ほら、無駄話していないで早く手伝って、どんどん写真撮っていくから、中身が分からないものは出して写真をとるから、メッセージとか書いていないかちゃんと確認してね」


二人の会話を聞いていたのか優の代わりに碧華自身が答えた。


「そうそうライフ、心配しなくてもあなたへの罰はリリーお姉様にお願いするから安心してね」

「ええっ、それやばいよ。うちのママ容赦ないんだから。それだけは勘弁してよ」

「あら、大丈夫よ。あなたまだ忠告1だから。いい事をすると消えるから頑張って手伝ってね」

「えっ消えると何かいい事あるの?」

「ありがとうの笑顔一つ」


そう言ってにっこり笑って見せる碧華にライフは苦笑いを浮かべ、負けましたとばかりに作業に取りかかった。


「あっこれ栞ちゃん喜びそう」


優がそういって取り出したのは大きなキツネのぬいぐるみだった。


「本当ね。あら?これ、Fox to the favorite daughter.って書いてある。お姉ちゃん宛だよ」


「あら本当だ、daughterって娘よね。あら、私の日本語のブログを読んでくれている人がいるのね。もしかしたら他にもあるんじゃない?」


そういうと箱に中をあさってみるとプレゼントのリボンと一緒のタグには旦那様へとか娘さんへとか、日本語で書かれているものも多かった。中にはイラストレーターさんへと書かれた箱一つ分のペンギンなんかもあった。


「こっこれ叔父さん宛、ええなんでペンギンなんだろう?あんなおっさんにぬいぐるみって?」


「ペンタの事知ってるのね。あっこの子女の子なんだ、ペンコだって、ペンタにガールフレンドできたのね。後で、テマソンのベッドに置いてきてあげなきゃ」


「ペンタって?」


ライフは不思議そうに聞き返すと、碧華はニヤリとしただけで、あとでねというだけで作業にかかった。


「メッセージは見えるように前においてね。ここだけじゃすぐいっぱいになるわね。とりあえず、終わったものから部屋の外の通路に順番に並べましょうか」


そうやって順番に写真を写していった。全てを写し終わると、通路どころか、リビングも埋め尽くしていた。


「碧ちゃんこれからどうするの?」


「そうね。きちんと撮れているか写真現像したいから、あなた下の企画室に行ってこのSDもってこれに印刷してもらってきてくれないかしら?テマソンが印刷してもらえるように話を通してくれているはずだから」

「えっ?僕が行くの?ここのパソコンでできないの?」


「できるだろうけど、勝手に使えないでしょ。そのためにあなたにもきてもらったんだから、お菓子もたくさんあるから、きちんと撮れていたら、後でみんなで食べましょうよ」


「わかったよ。じゃあ、さっきの忠告取り消してよね」

「あらライフ、気にしてたの?可愛いわね」

「フン、僕は別に気にしてないけどさっ、じゃあ行ってきます」


ライフは少しすねたような仕草をしながら碧華からSDカードとL版の写真用紙を受け取ると下におりて行った。碧華と優は通路やリビングに所せましと置かれたプレゼントを順番に眺めた。


「ねえ、ママ宛のものばかりだと思ってたけどそうでもなかったね」


「そうね、でもよかったわ。大きいのはテマソン宛の抱き枕が多くて、テマソン戻ってきたらビックリするわね。ベッドの中に抱き枕がたくさん入っていたら」


碧華はその様子を思い出しながらクスクス笑いながら言った。


「今夜ここに泊まることにして正解ね」

「夕方、栞ちゃんたちもこっちに荷物を持って合流するんだっけ」

「そうよ、もう十一時過ぎだもんね。そう言えばお腹すいたわね」

「ねえ、テマソン先生お昼休憩に様子を見にここに来たりしない?こんなにちらかして叱られない」

「そうね!」


そういうと碧華は急いで玄関に走った。ちょうど、ライフがエレベーターに入ろうとしている所だった。


「ライフ、先にテマソンの所へ行って、お昼食べる時間になったらどこか外へ一緒に食べに行こうって誘ってね。このありさま見られるとさすがにヤバイわ」


「了解!」




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