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冬休暇④

碧華は急いで夕飯の準備にかかった。ライフに別のアニメ映画がみたいと言い出し、見せてあげるとうれしそうにテレビにくぎ付けになった。エンリーはそれほどでもないのか退屈そうにしていたのをみた碧華は、目の前で数学と格闘して悩んでいる優を交互にみてひらめいた。


「ねえエンリー、もしよかったら優に数学教えてあげてもらえないかしら?」

「いいですよ」


エンリーはそういうと、台所にきて椅子に座ると、目の前に広げている数学をさっとみて、すぐに説明し始めた。エンリーの説明が上手だったのか、優はサクサクと宿題が進むのでご機嫌で宿題を進めていた。


碧華が夕食の段取りが全て終わった頃、栞から再び電話がかかってきた、碧華は時刻表をみながら、わかったと電話を切った。


「優、栞駅に着くの六時半ごろになりそうだって」


その後、六時過ぎには栄治が仕事から帰ってきたので、二人を紹介し、碧華は自転車に乗り、栞を近くの駅まで迎えに向かうことにした。


やがて栞が帰ってきて、六人で夕飯を食べることになった。

さすがに六人も入るとコタツはぎゅうぎゅうだったが、それはそれで楽しい夕食になった。



その日の夜。隣の家の和室で布団の中に入ったエンリーはライフに話しかけた。


「なあライフ、明日どうするんだ。もう東京に戻るのか?」


ライフは布団に入りながらスマホを触っているライフに向かって言った。


「そうだな・・・お前はどうしたい?」

「僕の意見なんか聞いてもお前はしたいようにしかしないんだろ?」

「そうだけど、別行動って手もあるだろ」


「そうだな。僕は碧華さんがいいって言ったらギリギリまでここにいたいなと思ってるんだ。この家ってすごく何ていうか、落ち着くっていうか、家に戻ってきたって気がするから、栄治おじさんもいい人そうだし、ヒロさんもいいって言ってたし、日本じゃ年末は大掃除するみたいだから、手伝うのもいいかなって。観光ってあまり興味ないし」


「お前は栞ちゃんとゆっくり話をしたいだけなんじゃないのか?」

「なっ! 僕は・・・」


ライフはエンリーの顔をチラッとみて言ったが図星のようだった。


「実は、僕もここにしばらくいてもいいかなって思ってたんだ。こんな狭い家で息がつまるかと思っていたんだけど、なんていうか、けっこう快適なんだよね。コタツも案外気持ちいいし、寝ながらみかんを食べて、テレビをみるって最高だなって思ってたんだ。テレビ版のアニメ録画も一話からみて見たいし」


「なんだよ、なんだかんだいいながら、お前も碧華さん気にいったのか?」


「そうなんだよな。不思議な人だよな。ずっと前から知っているおばさんみたいでさっ、狭い家にいても気を使わないし、優ちゃんは可愛いし、あの家にいると妙に落ち着くんだよなあ。叔父さんの気持ちが分かる気がするよ」


「じゃあいいんだな。東京見物しなくても」


「ああ、こんな休暇もいいんじゃないかな。学校の奴らに日本に行って何してたって聞かれたら返答に困るけどな」


二人は確かにと頷きあいながら笑い合った。



エンリーとライフは翌日の早朝、起こしにきた碧華に真剣な顔で、三十日まで居候をさせてもらえないかたずねた。すると碧華はすぐに快諾した。


「えっ、三十日までいてくれるの?私てっきり今日もう帰っちゃうのかと思ってたから、栞も残念がって補習さぼるっていって、今もごねてたのよ。よかったわ。ありがとう二人とも。じゃあ、さっそく言ってあげなきゃ。あっ、あなたたちも食べる?後一時間したら、栞を学校へ送っていくから、戻ってきてからだったら二時間ぐらい先になっちゃうけど」


「あっ先に食べます」


「そうよかった。でもいいの?我が家の食事すごい質素だから、ホテルみたいな豪華な料理出してあげられないわよ」


「お気遣いなく、僕ら何でも食べますから」

「そうだ、碧ちゃん。優ちゃんは今日も学校?」

「ええ、もう行ったわよ」

「えっ?そんなに早く?」


「そうなのよ。栄治さんの出勤時間にあわせて途中の大きな駅まで送ってもらってるから家をでるの早くなるのよ。優は帰りは今日も昨日と同じぐらいかな」


「そうなんだ、日本の学校は大変だね。じゃあ・・・買い物って行ける?僕今日は一日アニメを観たいなって思っているんだけど、テレビ鑑賞にはコーラとお菓子って必需品でしょ」


「あらそうね。じゃあ二十四時間営業のスーパーが、栞の学校の近くにあるから、一緒に車に乗っていく?そこで自分の好きなお菓子買いなさいよ。でもお菓子は自分の小遣いでお願いね」


「わかってますよ。よし、エンリーお菓子の買い出しに行くぞ」

「じゃあ十分後に来てね、朝ごはん用意しておくから」


碧華はそういうと先に家に戻って行った。

それから一時間後、四人は碧華の車に乗り込んで栞の学校に向かった。向かう最中、助手席に乗っていた栞が突然碧華に言った。


「ママ、今日は補習午前中だけだから、エンリーくんとラオンモールに行ってもいい?」


「いいわよ。じゃあどうする、あなた制服のまま直接行くの?」

「うーん、できれば着替えたいなあ」


「わかりました。運転手させていただきますよ。電車で行くと時間かかるからもったいないもんね」


碧華は二つ返事で了解し、栞もありがとうといっただけだったが、二人の会話を聞いていたエンリーが口をはさんだ。


「でも碧華さん忙しいんじゃないですか?時間がかかっても電車で行きますから。碧華さん、僕らがいることで碧華さんのすべきことが増えてしまっているなら僕らは遠慮しますから」


「エンリーはやさしいのね。私なら大丈夫よ、ダメならダメってはっきりいうから、なんとかなるからオッケーだしてるのよ。それにね、子どもはわがままでいいのよ。わがままは子どものうちだけの特権みたいなもんなんだから。ねえライフ」


「そうそう、僕なんか全然気にせずに今日は一日中日本のアニメを堪能しちゃうもんね」


明るくいうライフに碧華は笑いながら付け足した。


「そうよ、遠慮しないでね。我が家にいる時はあなた方は私の息子なんだから、私は邪魔だったら遠慮なく邪魔っていうから。気を使わないでね。気を使われる方がやりにくいから」


「わかりました。じゃあお願いします。運転手」


「よし、了解しました。あっでも、明日は私、実家のお餅つきに行く予定だから一日留守にするわよ」


「あっ僕のことならお構いなく、留守番しておくよ」


ライフは完全に明日もDVD鑑賞をするつもりらしい。


「あの・・・餅つきとはなんですか?」

 

聞きなれないお餅つきという言葉に反応したのはエンリーだった。


「あら、お餅って食べた事ない?もち米から作るんだけど、おいしいのよ。機械でつくんだけど、できあがったのを手で丸める作業が大変なのよ。かなりの量をつくから、私の弟家族も実家に集まってみんなでもちをこねたり、中にあんこを詰めたりするのよ。エンリーはどうする?栞は明日は二時頃終わるんでしょ。電車で帰ってきてね」


「うんわかった。エンリー、ママと行ってきたら、わりと面白いよ。それに本当につきたてのお餅はおいしいよ」


「うん、行ってみたいけど、僕が行ったらお邪魔じゃないですか?」


「あら、人手は必要なのよね。いつも家の子たち行かないからかたみのせまいおもいしてたのよね。エンリーが一緒に行って手伝ってくれると嬉しいわ。行ってくれるなら実家のお母さんに聞いてみるけど」


碧華の言葉にしばらく考えていたエンリーだったが意を決して答えた。


「栞ちゃん、じゃあいってもいいかな」

「うん行ってらっしゃい。でも今日は私とデートお願いね」

「わかった。待ってるよ」


「よし、決定ね。そうとなればライフ、あなたどうする?明日も優は帰ってくるの一時過ぎだから、菓子パン買っておくつもりだけど、あなたも明日の昼、菓子パンでも食べる?それともカップラーメン自分で作れる?」


「うーん、菓子パンでいいや。その方が楽だし、テレビ録画観ていてもいいんでしょ」


「いいわよ。そんなに気にいってくれて私も勧めたかいがあったわ。じゃあ決まりね」


碧華はそういうと、運転に集中した。そして栞を学校まで送って行くと、息子二人を引き連れて、近くのディスカウトショップのスーパーに大量のお菓子やジュースや食糧を買い込んだ。

ライフも自分の好きなお菓子とジュースを大量に買い込み満足顔だった。三人は車いっぱいに大量の買い物袋を積み込み、我が家へと戻った。





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