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カリーナの夏祭りパーティ―③

「あなた、こんなものを持ってきていたの?パーティーへそんな大きなバッグを持って何をいれているのかしらって思っていたらこんなものを持ってきていたの?」


「カリーナ!だいたいあなたが悪いんじゃない!」

「あらどうしてよ」


「だって、そもそも碧華様の詩集を最初に書店で見つけてあなたに教えたのは私なのよ、それなのにあなたが真っ先にファンクラブの代表にいつの間かなってるし、碧華様とも親しくなってて、わたくしのことなんか無視して、だから、あなたのしらない碧華様の様子を自慢しようと思って作らせたの。だけど、今日も私のことなんか無視して碧華様を独り占めばかりするから、だんだん碧華様も憎らしくなってきて・・・」


「無視って…私あなたの事無視した事なんてなかったわよ。今夜は碧華様に無理を言ってきていただいたから接待するのは当たり前でしょ」


「うそよ、だって、だったら、どうして碧華様の新作本の発売の情報も私に教えてくれなかったの?他の方には事前に教えて差し上げていたってききましたわ。そのおかげで、新作本の限定アイテムをゲットできそうだって、私、新作の発売を知ったの発売を発表してから三日後だったから、出遅れてしまって、あわててじいやをディオレス・ルイ社の前に行かせたけれど、もう既に五百人以上の人が並んでいらっしゃるって聞いて、今から並んでも買えないってきいたんだから」


「だってあなた、しばらくアトラスにはこられないっていうから」


「しかたないじゃない、主人がフランス出張中フランスからでるなって海外禁止令を出されているんだもの。携帯も取り上げられていてネットもできなかったんですもの。それもだいたい碧華様がいけないんですのよ」


碧華はその手渡された写真集に見入っていたが、不意に自分の名前が耳に入って顔を上げた。


「えっ?私の名前を呼んだ?」


「だいたい、碧華様がすんなりフランスから日本の家にお帰りになっていたら、私も一週間も留守にしなくてすんで主人にもバレずにすんだんですもの」


今度はソフィアの言葉を碧華に通訳したテマソンが逆に聞き返した。


「一週間?」


「ええ一週間ですわ。イタリア・ドイツ・イギリスの順で合計三泊、東京で一泊、京都で一泊後移動とか含めて、私がフランスに帰るまで一週間かかりましたわ」


「碧華! あなたそんなに寄り道していたの?そういえばしばらくしんどいって寝込んでいたわね。もしかして遊びすぎだったの?」


「あっ・・・あのね、いろいろ用事があったのよ。でもソフィアさん、この写真集、写っている写真はすごく素敵だわ。シャリーと私、建築物の写真はたくさん写したんだけど、自分自身ってとらなかったから後悔してたのよ。ねえ、テマソンもそう思わない、この写真私イケてるでしょ」


「そうねえ、確かに、きれいに映っているわね。でもね・・・話をはぐらかさないの!」


テマソンは碧華から受け取った写真集をパラパラとめくりながら言った。


「いろいろあったのよ」

「何よいろいろって」

「ええ~ここで説明するの?」

「みんなの前では言えないことしてたの?」


「そんなことないけど、あの時は、シャリーと三か国いろいろ観光してから、最終日のイギリスから成田空港行きがすぐあったから、その便に乗って帰ったの。でっ東京に朝着いたから、栄治さんに電話したら、東京の秋葉原で買ってきてほしいものがあるっていうし、娘達も有名なお店の日持ちするスイーツ買って来いって色々な店を指定してくるから、仕方なく、買い物をしてたら夕方になっちゃったから、一泊してよく朝、新幹線で帰ろうと思っていたら、蘭ちゃんから連絡が来て、頼んでいた浴衣が完成したから見に来てほしいって言ってきたから、帰りに京都に立ち寄ったの。そしたら話がはずんじゃって、気が付いたら夜になっていたから蘭ちゃんが泊まって行けっていうから、一泊して、翌朝帰ろうかと思っていたら、蘭ちゃんがどうせ来たんだったら着物を着て京都観光しないかってお誘い受けたから京都観光して、夜に帰ったのよ。それより、ねえソフィアさん、あなた疲れなかった?」


碧華はそれだけ説明すると、ソフィアに向かって聞いた。

「えっ?」


「だってずっと私の後をつけてたんでしょ。私ね、あの後、三日寝込んでしまったのよ」


碧華の日本語を通訳したエンリーの言葉を聞いたソフィアがモジモジしながら返事を返した。


「実はわたくしも五日も寝込んでしまって、主人に何をしてたんだって叱られてしまって、当分の間海外禁止令をだされてしまったんですの。私、碧華様のこと言いたくなくて主人に日本に行っていたこと言わなかったものだから」


「あら・・ごめんなさいね。でもこれをみせれば旦那様も機嫌を直してくれるんじゃないかしら、すごくよくできてるもの。そうだわ。私一筆書いておくわ」


そういうなり碧華は巾着からペンを取り出すと、

テマソンが持っていたその写真集を受け取り一番後ろの白いページに碧華のサインとメッセージを日本語で書き込み、ソフィアに返した。


*****


[親愛なる友ソフィア様へ

素敵な想い出のひと時をこんな素敵な写真集におさめてくださってありがとうございました。また一緒に旅をしましょうね。AOKA・SKY]


*****


「これでダンナ様の誤解が解けるといいんだけれど、ねえテマソン、これディオレス・ルイ社で出版できないかな?すごくよくできてると思わない。まあ色んな店が映ってるから許可どりは必要だろうけど」


「そうね、売れるかもしれないわね。私もあなたの放浪記、じっくり読んでみたいわね。どれだけ寄り道したのかを」


「あら、たまにはいいじゃない、すんごく疲れたけど・・・さすがにね私もやりすぎたなあって反省したのよ」


「But・・・」


 碧華の言葉の後にソフィアが付け加えた。


「でもわたくし、あんなに楽しい旅行は初めてでしたわ。日本の人はみんな親切でしたし、京都は初めてでしたけれど、とても神秘的でしたし、日本に行ったことは後悔しておりませんわ。今日はわたくし、やりすぎてしまいましたわ。実はその写真もわたくしもお気に入りでしたの、だから碧華様の許可が得られれば、写真集を皆様にお配りしようと思って増刷させたものを持参してるんですの。でもこの写真だけは可愛いと思ってわたくしだけのお気に入りにしようと別にもっていたの。でもさっき、携帯を取り出そうと、いれていた写真を落としてしまってついあんなことを言ってしまったんですの。本当にすみませんでした」


エンリーの同時通訳を聞いていた碧華がまだ写真集があることを聞いて目を輝かせた。


「あら! じゃあその写真集たくさんあるの? ねえ、私にいただけないかしら? そうだわ、こうしましょうよ、今度の新作作品私の分を数冊たぶんもらえるからプレミアグッズと一緒に交換してくれない?」


エンリーが碧華の言葉を通訳すると、ソフィアが嬉しそうに顔を上げた。


「Are you sure?」

「もちろんよ」

「いいえ駄目よ」


その言葉を遮ったのはカリーナだった。

カリーナはソフィアに向かっって英語で言い返した。


「そんなのうらやましすぎて反対ですわ。あなたの分はわたくしの次の二番目に既に名前が記入してありますわよ。発売日までにご主人の許可が得られれば、アトラスにきて、朝八時と夕方六時の点呼にはいらっしゃい。あなたわたくしの親友でしょ。二人分並ばせるの大変なのよ」


「カリーナ」


ソフィアはカリーナに飛びついた。


「よかったわ、無事解決ね。でも…その写真集わたくしも欲しいわね」


碧華の側にきたヴィクトリアが安心したようにつぶやいた。碧華も頷いていた。



この日配られたソフィアが作った写真集はその場の出席者に好評で用意していた百冊はその後のイベントの景品となりおおいに盛り上がった。


しかし、その写真集は世に出回ることはなかった。

なぜなら、それをゲットできた百人全員、碧華のファンとなり、門外不出のお気に入りの宝物として大切にそれぞれの家で保管されることになったからだ。


その代わりに数カ月後、ソフィア嬢とAOKAの旅行記として新たにシャリーが撮影した写真も増やされた写真集がディオレス・ルイ社から発売されることとなった。


これもまた、すごい人気になり、そこに写っている日本のお店に外国人が殺到したのは言うまでもなかった。


結局ソフィアが用意した写真集はそこに写っている碧華とシャリーには優先的に配られ、桜木ファミリーがゲットしたのはテマソンとママンの二人だけだった。




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