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カリーナの夏祭りパーティ―②

ソフィアはそのことに対して何も言えずにいた。ソフィアの周りにいた取り巻き達も一人また一人とソフィアから離れて行ってしまった。


「もう、私は気にしてないわ。この写真よくみたら、場所を特定できるものなんて何も映っていないわよ。ねえ、エンリーもそう思うでしょ」


碧華は横に来ていたエンリーにも向かって言った。


「そうですね、確かに、家全体が映っているわけでもありませんし、これだけで場所の特定は難しいと思います。この写真で問題なのは、碧華ママの格好だけだと思いますよ」


「そうね、私達は日本でいつも見慣れているママのスタイルだから気にならないけれど、今のママの姿しかイメージがない人がみればすごいイメージダウンだと思うわ」


その写真をエンリーの後ろからのぞき込んでみた栞が言った。優もまた大きく頷いていた様子だった。


「そうかな、僕はこの碧ちゃんも好きだけどな。だってこの写真可愛いじゃん。とても五十まじかのおばさんの写真には見えないよ。かなりレア写真だよね僕この写真欲しいな」


「まあライフ、そんなお世辞言っても何も出ないわよ」

「僕の本心だよ」


ライフがそういうとその横にいた音也ものぞき込んで付け加えた。


「そうですね、僕もライフくんに同感ですよ。とてもチャーミングに映ってますよ。家のママがみたら欲しがると思いますよ。こんな碧華先生の写真」


「僕も同意見ですね。この写真をみたからと言って碧華さんらしいなという印象を持っただけで、幻滅はしませんね。むしろ可愛いと思いますよ。五十歳に近づこうとしている女性がスッピンで髪はポニーテールだし、半そで短パン姿で外を平気で歩けるなんてすごいですよ。ねえ母さんもそう思うでしょ」


次に答えたのはフレッドだった。フレッドも自分の横にいたシャリーをちらりとみて感想を言うと、シャリーも頷きながらも少し口元を膨らませながらいった。


「そうねえ、確かに碧ちゃんのこの写真は可愛いわ。でもフレッド、あなたは私にはこんな格好ができないでしょっていいたいの」


「できるんですか?」

「悔しい~どうせ私はぽっちゃりですよ」


シャリーは可愛くまた膨れて見せた。


「あらそこがシャリーの可愛い所じゃない」


碧華が隣で膨れているシャリーに言うと、ヴィクトリアも頷いてから付け加えた。


「ふふふっ、そうねえ、確かにレディとしては失格の写真だけど、可愛い写真ね。でもソフィアさん、この子を貶める写真なら、もっと家全体を写した写真の方がよかったんじゃなくて、これでは家の小ささがわかりませんわよ」


「ちょっとママン、確かに私の家は小さいけれどその言い方はないんじゃありませんか?」


「あら小さいじゃない。わたくしビックリしたのよ、最初見た時は、こんな小さな家で暮らしているのかって、でもね…さすが日本よね、すごく快適で家族団らんができる素敵な間取りで感激したわよ」


「だよね、おばあちゃま最近自分の部屋の隣に和室を作らせたんだよ。確かにあそこは居心地よかったよ」


「えっそうなの?」


「そうなのよ、畳は最高ね、碧ちゃんの言うように、暑い時はあそこに大の字になって寝ると気持ちいいのよね。冬はコタツを置くつもりなのよ。はだしでうろうろできるなんて最高よね。あなたの気持は少しはわかりますよ。でもね、十代じゃないのよあなたは、年相応のかっこうというものがありますよ」


「はい…反省してます」

「ソフィアさん、そういうわけだからI do not mind.ですわよ」


碧華はそういいながら、ソフィアに笑顔で近づくと右手を差し出した。


「ごめんなさい」


ソフィアは片言の日本語で碧華にそういうとわあ~と両手を覆ってその場で泣き出してしまった。その時、騒ぎを聞きつけた一人の老紳士が慌てた様子でソフィアの元に駆けつけ、碧華に向かって深々と頭を下げた。


「もうしわけありません。うちのお嬢様が失礼なふるまいをいたしました。まさかこの写真を皆様にお見せしてしまうとは思ってもいませんでしたので、碧華様申し訳ありません。あなた様の許可なしにこのような隠し撮り写真を撮ってしまって、そちらの写真に関しましては写真用紙に印刷したのはその一枚だけですのでデータはこちらにあるのが全てですので、お渡しいたします。残りの写真も全てこちらで責任を持って処分いたしますのでどうかお許しくださいませ」


そういうと、その老紳士はその場に土下座をしてポケットからデーターをだした。


「碧華、あなたはそれでいいの?」


その様子をまだ納得できていないと言いたげなテマソンが碧華の隣で通訳しながら碧華にたずねると碧華は首をかしげながら何かを考えている様子で返答がなかった。


「碧華?どうしたの?」


テマソンの問いかけにも答えずに碧華はその土下座して頭を下げている老紳士に近づくと、自分も腰をおろして首をかしげながら日本語でたずねた。


「ねえ、あなた私と会ったことなかったかしら?」


碧華の言葉に老紳士はゆっくりと顔を上げて言った。


「はい、京都で一度ぶつかった際お会いしています」


その紳士は流ちょうな日本語で答えた。


「京都、あ~そうよ、あなたに私返さなきゃいけないものがあるのよ。ちょっと待ってね…確か今日も入れてきたはずだから」


そういいながら手に持っていた巾着袋を膝の上にのせ、中身を探り始めた。


「あった。よかったあ、あなたあの時、娘さんとアトラスから来たって話していたでしょ」


「その節は失礼いたしました。京都の仏像の写真に夢中になってしまいぶつかってしまうとは思いも致しておりませんでしたので」


「あら、私も同じだから、あらもしかして、一緒にいたサングラスの娘さんってまさかソフィアさんでしたの」

「はい」


消え入りそうな声でソフィアは頷いた。驚きながらも探していたお目当てを探し当てて碧華がその執事にジッパーに入れられた小さな何かを差し出した。


「そうだったの。でもよかったわ。今夜お会いできて、もしかしたらどこかで会えるかもしれないと思ってずっと持っていたの。これぶつかった時に私の持っていたおみやげ用の鞄の中に入ったみたいで家に戻ってから気が付いたのよ。今更警察に届けるって言ってもこんな小さな落とし物で名前もないんじゃああなたの手元に戻らないだろうし、また会える気がして持ってきていてよかったわ」


そう言って碧華の手に握られていたのは、小さな黄色のおさげ髪の女の子の人形のキーホルダーだった。


「こっこれは…」


老紳士はその碧華の手のキーホルダーをみた瞬間、目から大粒の涙がこぼれた。そして震えながらそのキーホルダーを受け取ると何度も何度も頭を下げた。のちに聞いた話だがそのキーホルダーはなくなった奥様の大切にしていたキーホルダーだったそうだ。帰国の飛行機の中でなくしたことに気が付き、ショックでしばらく食事が手につかなかったと笑って話してくれたが、感謝しきりに頭を下げていた。


「あの時すぐに気が付いていたらよかったんだけど、お返しするのが遅くなってしまって。本当にごめんなさい」


碧華はそういうと老紳士に立ち上がるよう促し、頭をさげた。


「碧華、京都ってあなたいつの話?」


 その話しを聞いたテマソンが碧華に聞き返した。


「えっ、え~っと、先月急遽アトラスに来た帰りよ」


「ちょっとあなた、この間って確かフレッドと食事するってシャリーとフランスに行った時よね。フランスから真っ直ぐに家に帰らなかったの?」


テマソンの言葉に碧華はやばいといった顔をして口ごもってしまった。


「そうよ、フレッドったら、自分から碧ちゃんを誘ってきたくせに仕事が入ったからってドタキャンしたのよ」


碧華の代わりにシャリーが返事をした。


「母さん、その件でしたら謝罪したでしょ。お詫びに三か国の旅行費用僕が全額だしたでしょう」

「当然でしょ」

「?」


不思議そうにしているテマソンに碧華が渋々説明を始めた。


「そう、あのね、フレッドとの会食がなくなったからシャリーがあの後、ティムと写真を撮りに行くっていうから、面白そうだから私も一緒について行ったの。確か・・・イギリスとドイツとイタリアへいろんなお城や建築物を見学したのよ、もちろん栄治さんの許可はとったわよ。エンリーもいいって言ったから」


「はあ?あなた疲れてるっていいながらあれからまだあちこち行ったの?まったくもう、あの時は私も出張でアメリカにすぐ行ったから連絡はメールだけだったけど、あの時は何も言っていなかったでしょ」


「えっだってテマソンにいうと早く帰れってうるさいじゃない。せっかくただで行ける観光なんだもん、行きたかったのよ」

「そうよね、この子ウザイ時あるわよね」

「わかりますママン」


「もちろんですよ。テマソン、あなた過保護すぎるのよ。あなたの子供でも奥さんでもないのよ碧ちゃんは」


「そっそんなのわかってますよ。わっ私はアトラスに着ている間は栄治さんから預かっているんですから、責任があるのよ。もし何かあると大変でしょ。英語もしゃべれないだから」


「大丈夫よねえ」


「ええ、私こう見えても運はいい方だから。何とかなってるわ。それにシャリーとテイムと一緒だったんだもん」


「でもね碧華」


テマソンがまだブツブツ言っているのを遮って碧華はソフィアに向き直って聞き返した。


「するとソフィアさん、京都で会っているっていうことは私が日本に帰るまでに、三か国まわっている時もずっと私の後をつけたんですか? 飛行機とかタクシーや電車なんか行き当たりばったりだったのに」


碧華のその疑問をようやく落ち着いてきていたソフィアに質問を投げかけた。碧華の言葉をエンリーが通訳した。


「yes」とソフィアはそういうと、

フランスの空港で碧華とシャリーを見かけ、たまたま同じ飛行機の航空チケットでしたのでそのが後、ずっと後をつけたことを告白した。


そしてバッグから一冊の写真集のような本を一冊取り出した。



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