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グラニエ城滞在:ライフVS音也②

「大叔母様?今日は何かあるんですか?」

「えっ?」


チャーリーは心の中でため息をついたつもりが声がでていたことに真っ赤になって手を振りながら答えた。


「私ったら、何でもないのよ、ただの独り言よ」

「何か私でもお手伝いできることがあればします。今日はお城の中でゆっくりするだけだから」

「あら、せっかくのアトラスなんだから、どこか観光に行けばいいのに」


「音也さんもアトラス観光は何度もしていて、別に興味ないんですって、私たちもここではのんびりしようってことになってたんです。私の場合はしばらく受験勉強ばかりで運動不足だから、少し散歩でもしようかなって思ってるぐらいなんです。ここの自然はすごくきれいだし、湖にでも行きたいなって思ってるんですけど」


「あらごめんなさい。私知らなかったから、今日は湖やマジョルカの森の清掃日になってて、森の近くの人たちと掃除するから、のんびりできないかもしれないわ」


「えっ? 掃除ですか? 定期的に清掃してるんですか?」


「ええ、あそこはお姉様個人の所有地なのだけど、森の中の湖やマジョルカの森への立ち入りは禁止していないの。それをいいことに最近観光客の人達が、あそこに来て、ゴミを放置していくようになってしまって、私、あの森の草や葉や花を仕事に時々利用するから、月に一度ゴミ拾いをしているの。そしたら、あの近所の人たちも手伝ってくれるようになって、今は日にちを決めてみんなで一斉にゴミ拾いしてるの。お姉様ったら、いつも私に報告してくれるの忘れるのよ、あなたたちが来るって聞いたのも昨日の朝なのよ。事前に知っていたら別の日にしたのに」


「チャーリー大叔母様、私、いつもこの城に宿泊させてもらっていて何か自分でできるお返しないかなって思っていたんです。今日私もゴミ清掃に参加させてもらっていいですか?」


優がいうと、チャーリーは大きく首を横に振った。


「そんなことしてもらったら、私がお姉様やリリーちゃんに叱られちゃうわ」

「大丈夫ですよ。これが終わったら私、ヴィクトリアおばあ様に聞いてみます」

「でも大変よ、腰は痛くなるし、いろんなゴミが落ちてるから毎回手袋が泥だらけになるのよ」


「手袋が汚れるくらいゴミを拾ったら周辺もきれいになったってことですし、手袋は洗えばきれいになりますから。僕も断然参加しますよ。僕もよく町内の清掃ボランティア活動してるんですよ。ゴミ拾いの後、きれいになった場所で飲む缶ジュースがこれまた美味しいんですよ」


話しを聞いていた音也も即座にゴミ拾いをかってでた。


「困ったわ。じゃあ一応お姉様に聞いてからね。あなたたちは本当に変わってるわね」


チャーリーは二人に笑いかけながら、再び床を磨き始めた。

それから優と音也も無言で拭き掃除を始め、三十分後全ての椅子を拭き終わり、

最後にチャーリーがマティリア像に向かって祈りを捧げている間、

後ろの長椅子に座りながら共に祈りを捧げた。

 


三人が掃除道具を片づけ、教会を出ようとした時、優のスマホが鳴った。


「もしもし」


〈あっ優、あなた部屋にいないけどどこにいるの?〉


「お姉ちゃん、私今教会の前よ、チャーリー大叔母様と音也さんも一緒よ」


〈教会? そんなところで何してるの?〉


「掃除してたのよ、それよりお姉ちゃん、今日ね、湖とマジョルカの森の周辺のゴミ清掃があるんだって、私達も一緒に参加しない?ピクニックはゴミ拾いの後にすればいいかなって思うんだけど」


〈ゴミ拾いかあ、ママに何かできる手伝いがあれば率先してしてこいって言われてたし、エンリーとライフも誘ってみるわ。あっそうだもうすぐ朝食ですって、あっ音也くんはどうするって言ってるの?何だったら男女別行動してもいいし〉


「うん、音也さんはゴミ清掃参加するって言ってくれてるよ」

〈わかった、じゃあ先に食堂に行ってるからあなたも早く来なさいよ〉

「わかった、着替えたらすぐ行く」


優は電話を切ると音也に朝食だと告げ、チャーリーと別れて、

音也と二人駆け足で城の中へと走って行った。

チャーリーは楽しそうに話しをしながら走り去る二人を見送りながら呟いた。


「本当になんていい子たちなのかしら、マティリア様、どうかあの子達をお守りくださいませ」


そういうとチャーリーは胸元のクロスに手をかけ、そっと後ろの教会をもう一度振り向き頭をさげると自分も部屋へと急いだ。



優が自分の部屋に戻り、ワンピースに着替え食堂に着くと、既に全員集まっていた。


優は部屋に戻りすぐ部屋を出る予定だったが着替えの途中、

シャツについていた飾りのボタンが自分の髪に引っかかってしまい、

絡まった髪をボタンからとるのに時間がかかって食堂に着くのがかなり遅れてしまったのだ。

優は大きく頭を下げて、自分の席についた。


「遅くなってすみません」


「いいのよ、チャーリーから聞いたわ。教会の清掃をしてくれたんですって、ありがとう」


優はなんて返事を返せばいいのか迷い、ヴィクトリアに首を振って頭を下げた。


「そうそう、チャーリーから森のゴミ清掃のお手伝いもしてくれるって聞いたんだけど、そんなに気を使わなくていいのよ。ショッピングに行ってらっしゃいよ。車なら自由に使っていいのよ」


「いえ、みんなはどうかわからないですけど、私、一度湖とマジョルカさんの森に行ってみたいと思っていたんです。ゴミ拾いもみなさんの迷惑じゃなければ参加させてもらいたいです」


「おばあ様、私とエンリーも掃除に参加させていただきます。それで今日元々私達の分のピクニックの用意をお願いしていましたけど、清掃には何人かの人達も参加されるのならみんなさんもお急ぎの予定がなければ、清掃の後、一緒に湖でお弁当を食べるっていうようにすれば楽しいんじゃないかと思うんですけど、もちろん、急だから料理長さんの料理の準備が可能であるならの話しですけど、私達何もお手伝いできませんが」


栞が言うと、ヴィクトリアも驚いていたが急に笑顔になって答えた。


「あら素敵ね。今回は私もゴミ拾いに参加しようかしら」

「お姉様も?」


ヴィクトリアの隣に座っていたチャーリーが驚いた顔でヴィクトリアをみた。


「あら、私だって缶を拾ったりするぐらいはできますよ。それにその後のピクニックは楽しそうだし」


「僕は行かないよ」


そう言ったのは、既に食事を初めていたライフだった。


「ライフ、みんな行くんだぞ、お昼はどうするんだ?」


エンリーはライフを見て言った。


「ここで食べるよ。ピクニックは楽しそうだけど、何で僕が誰が捨てたかわかんない汚いゴミ拾いなんかしなきゃいけないんだ。ゴミ清掃なら業者を雇えばいいじゃないか」


ライフの言葉に大きなため息をついただけでエンリーは何も答えなかった。


「そうね、ライフの言うことも一理あるわね」


そう言ったヴィクトリアに対して音也が反論した。


「ライフくん、確かに君のいう事は正論かもしれえないけど、こんなに景色がきれいで今日は天気もよさそうだし、体を動かしてゴミ清掃したらきっと終わった時気持ちいいよ」


「そうよライフ、あなたもたまにはボランティア活動したらどう?」


ライフは音也や栞の言葉にも顔色一つ変えずにNO と言っただけで頑として一緒にゴミ清掃に参加するとは言わなかった。


「じゃあ、ライフは城にいなさいな。チャーリー、私は参加させてもらいますよ」


そういってヴィクトリアには食堂の隅に立っていた料理長を手招きすると、

至急大人数のピクニック用の昼食の用意をするように指示をだした。


食事の間中優はとなりに座っているライフをゴミ拾いに誘うことはしなかった。


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