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グラニエ城滞在:ライフVS音也①

空港を出発した一行は渋滞に巻き込まれたのもあり予定よりかなり遅くグラニエ城に到着した。


音也は初めてみるグラニエ城に圧倒されて口をポカーンと開けながらキョロキョロと周囲に視線を見渡しながら車からおり、エンリーの後をついて歩いた。

既に先にテマソンの車は到着しており、グラニエ城のヴィクトリア専用のリビングにはテマソンのお車に乗った碧華とライフと優の四人が座ってくつろいでいた。


「遅くなりまして申し訳ございません」


扉をノックしてそういいながら入って行ったエンリーの後を栞が入り最後に音也が続いた。


音也は中に入ってホットした。

下にひかれている絨毯やテーブルなどは確かにすごく高そうなのだが、豪華そうな絵の額や花瓶や置物など所狭しとが置かれているのを想像していたが、とてもシンプルな部屋だった。

可愛い様々な置物を飾ったガラス張りの棚の上には家族の写真らしきものが飾られていただけだった。


「これでみんなそろったのね、もう晩餐会の用意はできているのよ。先に部屋を案内させるから、荷物をおろしてから食堂に集合でいいかしら?」


「ママン、先に紹介しておくわね。この子が写楽音也くんよ。音也くん、この人がこの城の現在の当主のヴィクトリア・レヴァントよ」


扉の前で棒立ちになっている音也に近づき、

碧華が智也を手招きして奥の椅子に座っていたヴィクトリアの前まで音也を導いた。


「はっ初めまして、写楽音也といいます。この度は城にご招待して頂きありがとうございます。これは日本の京都の名産品です」


「あら、ありがとう。あなたに会うのを楽しみにしていたのよ。今日はもう遅いから明日ゆっくり城の中を案内させますから、滞在中は楽しんでね」


「はい、ありがとうございます」


音也はそういって手土産を手渡した。


「あのねママン、実は私とテマソンは、今夜食事が終わったら仕事に戻らなきゃいけないの」

「あら残念ね」

「ごめんなさい。子どもたちのことよろしくお願いします」


碧華はそういうとヴィクトリアは笑顔で頷いた。

その後、碧華とテマソンは言葉通り、食事が終わると早々に会社に戻って行った。

城をでる時に碧華は思いだしたように自分のキャリーバッグの中から浴衣と帯と下駄を取り出し、ヴィクトリアに渡した。


「あら、これは何?」


「カリーナのパーティーに最初に着ていく浴衣よママン。実はあのパーティ―は前半は仮装パーティーなんですって、ママンなら素敵な仮装用のドレスをたくさん持っていると思いますけど、私達みんな、浴衣で行くことにしている、私一応予備を一つ持ってきていたので、私のお古だけど、よかったらどうかなと思って、下駄も栞のサイズであうと思うから予備の持ってきて正解だったわ」


「あら、浴衣?素敵。私も一度浴衣着ててみたいって思っていたのよ。でも私でも着れるかしら?」


ヴィクトリアは碧華から手渡された初めて見る日本の浴衣を興味津々で眺めながら聞き返した。


「大丈夫、和服のいい所は多少のサイズ違いは腰で調節できるから全然問題ないってところなんですよ。ママンスリムだから大丈夫だと思うわ。これは私には少し大きめなんだけど、ママンにはちょうどだと思うし、ママンのパートナーの音也君もエンリーが予備にもう一着持ってきているらしいからそれで何とかなるみたいだし。帯もつけるだけだし、浴衣の着付けは簡単だから私でもできるから安心して」


「そう?じゃあ私も着ていこうかしら?着せてもらえるのよね?」


「もちろん。浴衣の着付けは任せてください。あっでも着替えのドレスも別に用意しておいてくださいね。後半は舞踏会なんですって」


「了解。何だかワクワクしてきたわ」


ヴィクトリアはそういうと、碧華から受け取った浴衣を手に取り嬉しそうにしていた。

碧華とテマソンはそれから子どもたちをヴィクトリアに預けると仕事に戻り、

結局パーティーの当日の朝子どもたちとヴィクトリアとフランス行きの空港で合流することになった。

会社に戻った二人は徹夜で新作発表会用の展示品作りをしている頃、

子どもたちはグラニエ城で旅の疲れもあり、

その夜はそれぞれ早々に自分の部屋に戻り寝てしまっていた。

 


朝、鳥のさえずりの音で目が覚めた優は自分の部屋の窓を押し開くと、まだ太陽が出ていなかった。


時計を見ると五時を過ぎたところだった。

いつもの癖で自然と目が覚めてしまったのだ。

昨夜は夜更かししなかった為に目覚めもよかった。

朝の静けさと澄み切った空気を思いっきり吸い込んだ優はふと下に視線をやると、

向こうからチャーリーが歩いてくるのが目に入った。


「チャーリー大叔母!おはようございます」


チャーリーが優の声に気が付いて頭を上げ、にっこりと笑顔で手を振り返してきた。


「優ちゃん、早起きね」

「いつもこの時間に起きてるから目がさめちゃったんです。大叔母様はどちらにいかれるのですか?」


「これから教会の清掃よ、マティリア様に感謝を込めて教会の掃除をさせてもらうのが私の日課で仕事なの」


チャリーはそういうと教会の鍵をみせて言った。


「そのお手伝い私もさせてもらってもいいですか?」

「あら、お客様なんだからゆっくりしていていいのよ」

「目がさめちゃったから、体動かしたくて」


「そう? じゃあ、手伝ってもらおうかしら、実は今日予定があって急いでるから手伝ってくれると助かるわ」


「着替えたらすぐおりて行きまーす」


優はそれだけいうとすぐ窓から姿を消し、

シャツとジーンズに着替えると髪をゴムで後ろに一つにくくると、

後ろポケットにスマホを突っ込み部屋を飛び出して行った。

優が教会に着くと、チャーリーは既に掃除を始めていた。


「優ちゃんは椅子を雑巾で拭いてくれるかしら、そのバケツを使って、水は今汲んだばかりだから綺麗だから」


そういいながらチャーリーは石づくりの床を別の桶にモップを浸し、絞りながら床を磨き上げていた。

優は早速、拭き掃除にかかった。


しばらくして、開いたままになっている教会の扉をノックする音が響いた。

チャーリーが振り向くと、そこには首にタオルを巻いたトレーニングウエア姿の音也が立っていた。


「おはようございます」


「あらおはよう。えーっと」


チャーリーは夕食の時にあったはずの音也の名前がなかなか出てこない様子だった。


「あっ、音也写楽です。えっとチャーリー様でしたよね。ヴィクトリア様の妹の」

「ああ、そうだわ。ごめんなさい、昨日自己紹介してもらっていたわよね。私中々名前を覚えられなくて」


「いえ、ヴィクトリア様もそうですが、チャーリー様も日本語がお上手ですね。ついここがアトラスだって忘れてしまいそうになりますよ。日本じゃこんなすごいお城はありませんけどね」


「あら褒めてもらえて光栄だわ。音也くんどう、よく眠れた?」


「はい、ありがとうございます。もうグッスリ寝たおかげで早くに目が覚めたので、習慣のランニングさせてもらってました。あの…こんなに早朝から掃除をしているのですか?」


「歳をとってくると朝早くに目が覚めるのよ。朝食前にここの掃除をするのが最近の習慣なの」

「あれ?音也さん、おはよう早いのね」


そういって腰をかがめて教会の扉の真横の長いすを拭いていた優が拭くのを止め顔を上げた。

音也は優が視界に入っていなかったらしく、驚いた顔で優の方をみながら笑顔で答えた。


「あれ優ちゃんもいたのか、おはよう君も早いね。一緒に掃除してるの?」


「実は、昨日の食事がおいしくてつい食べすぎちゃって、まだお腹がスッキリしないから体を動かせば朝食までお腹がへるかなって思って、不順な動機で掃除を手伝わせてもらってるの」


優はお腹の辺りをさすりながら笑顔を音也に向けた。


「クスッ、実は僕もなんだ、あのチャーリーさん、僕も掃除手伝わせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「あらあら、気を使わなくてもいいのに、清掃をお客様にしていただいたなんてお姉様に知られたら叱られるわ。ジョギングなさる方がお腹は減るんじゃないかしら?」


「いえ、ご厄介になっている身ですから、僕に出来ることはさせていただきたいんです。拭き掃除なら慣れてますから」


「慣れてらっしゃるってどういうことかお聞きしてもいいかしら?そういうアルバイトでもなさっているの?」


「いえ、そういうわけではないのですが、家の父の教育方針で、男であっても一通りに家事はできて当たり前だから、掃除や料理もできるようになってこそ一人前の男だって言って小さい頃から週に一日、窓の拭き掃除から廊下の雑巾がけやら掃除をしたり料理をしたりしてるんですよ。家平屋なんですけどやたら廊下が長いんですよ。おかげでいつでも一人暮らしできる程度に料理もできるようになりました」


「音也さんすごいですね。私なんか料理は全然だめ」


音也の話を感心したように聞いていた優がいうと、音也は優しく付け加えた。


「料理なんてその気になったら簡単だよ、それに優ちゃんは今は受験勉強が第一だから受験が終わってから習ったらいいんんだよ」


「じゃあ、無事大学に入れたら私も花嫁修業始めようかな」


「君ならいい花嫁さんになれるよ。あっ僕も拭くよ。この雑巾使わせてもらいます」


音也はそう言って優に微笑みかけると、

扉の横に置かれている水のはいった桶に手を入れて中の雑巾を手に取ると

慣れた手つきで雑巾を絞り、優が立っている反対側の長椅子を拭き始めた。


「あらあら、こまったわねえ・・・こんな若い子たちが掃除してくれてマティリア様もお喜びになられていらっしゃるでしょうけれど」


チャーリーは困惑した顔で音也の様子をしばらく眺めていたが驚いた表情をして言った。


「優ちゃんもそうだけど、音也くんも拭き掃除上手ね。今時の子は雑巾もきちんと絞れない子が多いって聞くのに」


「あら大叔母様、日本じゃ小学生から学校でみんな教室やローカを自分たちで掃除するんですよ。私も今でも学校で当番の日は教室やトイレを掃除してますよ」


「あらそうなの?すごいわね。でもそういう教育っていいことね。掃除する側の気持ちが小さい頃からわかっているとゴミを平気で捨てることをしなくなるわね」


「だといいんですけどね、平気でゴミを捨てる人は日本でもいますよ。ああいうやからは自分の家で同じことをされると嫌がるんですけどね。自分のテリトリーでは嫌がるくせに公共の場では何とも思わないようですけどね」


「そうよね。私も時々見かけるわポイ捨てする人」


「あら、でも日本ってすごく街を歩いててもきれいなんでしょ。どこの国にも色んな人がいるけど、多くの人がきちんとしようという意識があるから日本はきれいなんだと思うわ・・・ゴミを捨てることはいけないことだって意識をアトラス人ももっと持ってくれると、自然も汚れなくていいのに、はあ・・・ゴミ拾い今日も一日がかりになるのかしら」


チャーリーはそういうと大きなため息をついた。




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