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ライフの恋敵たち②

「エンリー、夕食の準備をするからテーブルに運ぶの手伝てくれる?」

「いいですよ」


そういうと碧華はエンリーと共に座卓をリビングに二つ並べたり夕食の用意をした。


「音也くんはお寿司食べれないものある?」


一緒に用意を手伝っていた音也に聞いた。


「なんでも食べれますよ」

「そう?食べ物アレルギーない?」

「はい」

「よかった。じゃああの子達が帰ってきて、落ち着いたら夕食にしましょうか」

「栄治パパさんは待たなくていいんですか?」

「いいのよ、最近遅いから」


その時碧華の携帯の音楽が流れた。


「誰かしら?あら、ママンからだわ。ハローママンどうかなさったんですか?」


電話の相手はヴィクトリアだった。碧華は携帯を片手に食器などを用意しながら電話口から聞こえてくるヴィクトリアと話を始めた。


「なあ、さっきから聞いていたら、碧華ママさんって、お前の家族とそんなに仲いいのか?」


「ああ、ライフの家族とも今じゃ親戚みたいな付き合いだな。碧華ママはあっちで仕事をしてるから、よく一人で行くし、今話してるのは、ライフのおばあ様だと思うよ」


「すごいな…俺の母親もよくイギリスとかアトラス方面に遊びに行くけど、ツアーで行くだけだよ。あっ思い出した。いけねっ母さんに渡せって言われてたのすっかり忘れてた」


そういって客間に戻った音也は何かを手に持って戻ってくると電話を切っていた碧華にその包みを渡した。


「あらなあに?」

「あの実は、家の母から碧華ママさんに渡すように頼まれていたんです」

「えっ?でも京都のお土産はもう頂いたわよ」


「これは別らしいです。実は、エンリーがいつも持っているバッグとかは碧華ママさんの手作りだって話していたら、家の母親、京友禅で作った小物を作るのが趣味なんですけど、よかったらどうぞって。やたらと自分が作ったものを誰かに押し付けたがるんですよ。バッグを手作りする人なら喜んでくれるかもしれないって言って、すみません」


「えっ京友禅の小物?何かしら」


碧華が包みを早速開けながらいうと中身は藍色の手染めされた京友禅で、しかも柄は梟の布で作られた梟のキーホルダー型の小さなぬいぐるみだった。


「なにこれ~かわいい!どうして私が梟が好きなの知ってるの?この生地もすごい梟だわ」


「よかった。実はうちの母親動物のぬいぐるみを作るのが趣味なんですよ。先週こちらにおじゃまするって話したら、さっそくそれを渡すようにって、なんでも一番の自信作らしいですよ」


「でもどうして?私なんかにこんな素敵なものくださるの?」


「エンリーがよく京都で買い物をしていても梟とキツネとオオカミを見かけたらよく買ってるから訳聞いたらキツネは栞ちゃん用で梟が碧華ママさん用でオオカミは優ちゃん用だって話していたんで、それを母親に話ししたら、好きなものも名前も一緒だって感激しちゃって、すごく興奮していたんですよ」


「あなたのお母様も碧華さんというの?」


「いえ、母親の大ファンの作家さんの名前があなたと名前が同じなんですよ。ブログもチェックしているみたいで梟好きっていうのが同じだとか。どれがいいかってもうそりゃあ家中大騒ぎで選んでました」


「あら梟が好きな私と同じ名前の作家さんているのね。世の中は狭いわね。お母様にお礼状書かないといけないわね。すごいわねえ、その作家さん何を書かれている作家さんなのかしら?」


「確か…母が数年前アトラスに旅行に行ったときに偶然見つけた詩集なんですけど、どうやら日本人みたいなんですよ。AOKA・SKYって詩人なんですけどね。もう彼女のブログなんか毎日チェックしてるし、新作が発売されると真っ先にネットで注文して取り寄せてるんですよ」


「なんだ私のことかあ・・・でも日本にもファンの方がいるなんて感激ね」


碧華はその梟を嬉しそうに眺めながら独り言を言うかのように嬉しそうに口走った。


「碧華ママ!」


エンリーが慌てて言ったが時は既に遅かった。

音也はもしやとすごいものでもみるかのような目で碧華に視線をおくっていた。

エンリーはため息をついて碧華をみている。


「あの…もしかして、碧華ママさんはAOKA・SKY先生なのですか?」

「違うわよ。私はAOKA、SKYは私じゃないわ」

「碧華ママ!」

「なあにエンリー?」


碧華は上の空で返事をしていたのか、エンリーの声で正気に戻った。


「日本では秘密だったんじゃないんですか?」

「何が?」


そこまで言ってはっとして音也の方に視線を移した。

時既に遅く、彼もまた驚きで言葉をなくしていた。


「あっいけない!つい梟がうれしくて…あの音也くん?」

「はい!」


音也は今までと態度が急変していた。

実は音也もまた母親の影響でAOKA・SKYの愛読家になっていたのだ、その本人が目の前にいるのである。


「あのね…今の冗談よ。なんてことにしてもらえないかしら?」

「無理です」

「じゃあ、仕方ないわね。エンリー、今すぐ彼に催眠術をかけなさい」

「無理ですよ」


「えええ~あなたでもできないことがあるのね。仕方ないわね。音也くん、このことは口外しないと誓ってもらえるかしら?」


「どうしてですか?有名になりたくはないんですか」


「日本ではなりたくないわ。テマソンがいないし、私は日本ではただのおばさんで過ごすのが気に入っているの。外に出るたびにAOKA・SKYを演じるのはアトラスにいる時だけで十分よ。もう仕方ないわね。もし、口外しないと誓ってくれるならとっておきのものあげるけど、私と取引してくれないかしら、できないというなら、今すぐ、ここから追い出してエンリーにあなたと絶交宣言させるわよ」


「それは困りますね。彼から絶交されると大学の講義の面で支障をきたしそうですしね。でもあなたにエンリーにそうしろと命令できる権利があるのですか?」


「ええあるわよ。ねえエンリー」


「そうですね、それぐらいなら僕は今すぐにでも喜んでできますよ。僕はこいつに無視されても一向に学生生活は困りませんから」


「エンリーお前というやつは、新しくできた親友を裏切るのか?」


「天秤にかける重みが違いすぎるんだよ。碧華ママは僕の命の恩人なんだから、碧華ママが困ることは僕はしないよ」


「どうするの青年」


音也はしばらく考えて突然笑い出した。


「参りました。さすがエンリーがほれ込んでいるだけのことはありますね。ようやくわかりましたよ。こいつが京都に住まず、ここから毎日通う理由が、こんな面白い人が一緒なら無理もないですね。俺も通いたくなりますね。わかりました。写楽音也、誓いますよ。あの・・・母には言ってもいいんでしょうか?」


「そうね、お母さまにはいいわ。でもお母さまにも秘密にするように言っておいてね。よし交渉成立。ネットとかで私の情報が日本で漏れたら、どうなるか?私を敵に回さない方がいいわよ」


碧華はわざとすごんで見せた。

そういっている間にエンリーは自分の部屋に自分のノートパソコンを取りに行くと、

何かを作成するとプリンターから一枚の紙を印刷して音也の前に突き付けた。

それには誓約書と書かれていた。


「なんでこんなものがすぐにだせるんだ?」

「こういうことはきちんと書類で誓約書をとっとかないとな後でもめるとめんどうだからな」

「ごもっともな回答ありがろう。わかったよサインすればいいんだろ」


そう言って文面に目を通した彼はそれにサインすると写メをとり碧華に手渡した。


「ありがとう。私もねこんな面倒なことしたくないんだけど、騒ぎになるとここは日本だから困るのよ」


「そうですね。今のは碧華ママの落ち度ですけどね」


「えええ~だってこんな素敵な可愛いもの見せられたら思考も停止しちゃうでしょ」


碧華は可愛く膨れて見せた。


「ここに叔父さんがいなくてよかったね。叔父さんにばれてたらまた嫌味言われるよ」


その声に振り向くとそこにはライフと栞が立っていた。


「あら、おかえりなさい。大丈夫よあなたがチクらない限りばれないわよ」

「どうしようかな、僕にも何か口止め料くれないと口が滑りそうだな」


ライフはそういうと、リビングに入ってエンリーの隣に腰を落とした。


「あっ君が音也くんかあ。僕はライフ、コイツの幼馴染だ。よろしく、コイツ根暗だから毎日付き合うの疲れるだろうけど、見捨てないでやってよね」


「根暗っていうな!」


「あっははは、根暗かあ…そうだね。確かに、いつも勉強してるし、講義が終わればすぐに家に帰ろうとするし、だけど、面白いんだよな。なんでだろう。一緒にいて飽きないだよな。キャンパス中の女子のアイドル的存在に既になっているっていうのに、女子には全く興味を示さないしね」


「あら当たり前じゃない。浮気なんかしたらここからたたき出してあげるわ。音也くん、この子が浮気しそうになっていたら証拠を押さえて私に報告してね」


碧華はそういうと、碧華のスマホをポケットから出した。


「碧華ママ、僕はそんなことはしませんよ。それにコイツをそんなに信用しない方がいいですよ。碧華ママの個人情報がまた洩れますよ」


「あら、この子は大丈夫よ。私、一目みればわかるのよ。この子から嫌な感じしないからこの子はいい子よ」


「何ですかそれは?僕何かに匂い発してますか?」

 音也は自分の体の匂いを嗅ぎながら聞き返した。


「面白い子ね。大丈夫よ若い男の子のいい匂いがするだけよ。さて私は夕食の準備を始めるかな。後一時間ぐらいで夕食にするわね」


碧華はクスッと音也に笑いかけながら言った。


「あっそうだ。碧ちゃん、ママや叔父さんから僕のこと聞かれても余計な事いわないでよね」

「あら、何かやらかして逃げてきたの?」

「別に何もしてないよ」


ライフはそれ以上は言わなかった。碧華は了解とだけ返答した。




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