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どうしてお前がここにいるんだ?

悩めるライフに追い打ちをかける出来事が彼の耳に再び入ったのはさらに数日後のことだった。


今回も栞からの情報だった。

なんと、優にひとめぼれをしたというエンリーの大学の友達が桜木家に週末に遊びにくるというのだ。

その情報を聞いたライフがエンリーに苦情の電話を入れた。


「おい!なんのつもりだよ。変な奴を家に連れて行くなよ」


突然の電話にイラッときたエンリーはわけがわからずそのまま電話を切った。

その後何度もかかってくるライフからの電話を着信拒否にして

ブツブツいっているのを横で聞いていた栞がおもしろそうにエンリーに話しかけた。


「ライフなんだって?」


「なんでもないよ。あいつ最近うっとうしんだ。優ちゃんも気をつけたほうがいいっていっといて。ライフのやつ優ちゃんのこと変に勘繰り過ぎているからさ。あれだけうっとうしかったら優ちゃんも迷惑だよなあ」


「ふふっ面白くなってきたわね」


「栞ちゃん?もしかして優ちゃんのことライフに色々吹き込んでいるの君なのか?」


「あらママだと思っていたの?なんかライフが毎日かかってくるのよ。ほら、ママがずっとアトラスだったから優情報が入ってこなかったでしょ。適当に相手してたらいつもタイミングよく面白い優情報が飛び込んでくるんだもの」


「あいつ毎日君にかけてくるのか?着信拒否すればいいじゃないか」


「あらかわいそうじゃない。ライフったら優に直接聞けないものだからもうオロオロしっぱなしみたいで面白いのよね。最近優もモテ期到来みたいだしね。でも、優にはその気がまったくないみたいだけどね。音也くんもそうなんでしょ。優にしつこくラインきてたみたいだよ」


「ごめん、この間の京都観光からだろ、ちゃっかりライン交換してて消せって言ったんだけど聞かなくて」


「いいのよ、優もライン楽しそうだったし、彼面白い子だもんね。タイプがライフと似てるのよね」

「栞ちゃん?もしかして音也ともやり取りしてるの?」


驚いて栞の顔をみたエンリーだったが、栞は悪びれる様子もなく頷いた。


「うん、時々ラインくるよ。あれ知らなかった?この間、京都に行った時私とも交換したんだよ。あれ以来時々やり取りしてるんだ。たいした会話はしてないけどね。京都のおいしいお店情報とかお勧めスポットとか教えてもらってるんだ。だってもしエンリーに何かあったら大変だから、ライン交換しておいた方が便利でしょ」


「あいつのラインアドレスなんか必要ないよ」


不満そうな顔のエンリーに栞は小さく笑みを浮かべるとエンリーに近づいてエンリーの頬にキスをして言った。


「あら、でもこの間、トラブルで電車がストップした時、大学の講義の提出期限の日に間に合わなくてあなたその時にかぎってスマホを落としちゃって壊れた時あるじゃない。途中の駅の公衆電話からかけてもつながらなくて大学の教授に連絡できなくて困っていた時、私の携帯からラインがかろうじて繋がって音也君に連絡取れて直接教授の所に行ってもらえて、なんとか提出待ってもらえたんでしょ」


「・・・あれは不運が重なったんだよ。提出をしていたのに教授が無くしたなんて言って明日までに提出しろって前日の夜に連絡がきて慌てて持って行った日に限って、トラブルで電車が止まって携帯も壊れるなんてそうそう滅多にないよ」


むきになって反論するエンリーに栞は


「あらママがよく言うわよ備えあれば憂いなしってね。万が一はたまに起こるんだから、でも心配いらないわよ。浮気なんかしないわよ私、エンリー一筋だもん」


栞はそういうとエンリーの腕に自分の腕をからませて頭を肩に傾けた。

エンリーも苦笑いをして頷いた。


「僕もだよ。はあ・・・君にはかなわないな」



それから数日後のある日、突然桜木家の玄関の前にライフが立っていた。


「あらライフじゃない、どうしたの?」


驚いた碧華がライフを中に招き入れながらたずねた。


「四日間大学の講義が休講になったから土日を挟んで遊びに来たんだよ」


「あらそうなの、エンリーの大学のお友達も遊びにきているのよ。どうする?隣に顔をだしに行く?今栞も行ってるのよ」


「そうだね。親友として挨拶をしとかないとな」

「あら、くれぐれももめごとはおこさないでね」

「何を言ってるのかわかんないな、でも・・・後でね」


「あらそう、まっ夕食には顔を合わすんだから今はゆっくりくつろいでいなさい。ちょっと隣に行ってるから」


碧華はそう言ってライフを残して隣に顔を出すと、栞がエンリーの友人と親しそうに話をしている最中だった。


「お話しの途中ごめんなさいね。栞、さっき優から五時台の電車に乗るって電話がきたから、中央駅まで迎えに行ってあげるっていったから、迎えに行ってもらえる?ダメだったら私が行ってくるけど」


碧華は時計をみて言った。まだ夕方の四時半になったばかりだった。


「じゃあ中央駅に着くのは五時半ぐらいだっけ?」


「確か五時三五分着予定かな・・・いつもの場所で待っててって言ってあるから。まあ今の時間帯は道が渋滞するかもしれないから五時前にはでて余裕をみたほうがいいかもしれないわね」


「わかった、行ってきてあげる。ちょうどお菓子も買いたかったし」


そう言って栞が立ち上がろうとした時エンリーが声を挟んできた。


「あっ僕が行きましょうか?栞ちゃん暗くなってくるから運転は危ないよ」

「大丈夫よ」

「わかった。でも気をつけなよ」

「わかってるよ。じゃあ音也くんごゆっくり」


栞はそう言って立ち上がると、先に家に戻って行った。


「エンリーちょっと来て、音也くんちょっとエンリー借りるわね、ゆっくりくつろいでいてね」

「あっ僕はお構いなく」


碧華はそういうと先に勝手口に戻って行った。エンリーはすぐに碧華の後を追って勝手口にきた。

碧華は勝手口のドアを閉めると、エンリーの耳元で小さな声で言った。


「ライフが来ているわよ」

「えっ?」


碧華の言葉を聞いたエンリーは驚いて家の勝手口に慌てて入って行き、リビングで既にくつろいでいるライフを見て叫んだ。


「おいライフ!どうしてお前がここにいるんだ!」

「おう!エンリー久しぶりだな」

「僕はどうしてお前がここにいるのか聞いているんだ!」

「碧ちゃんに会いに来たんだよ」

「あら、そうだったのライフ?」


エンリーの後から顔を出した碧華がいうとライフは平然とした顔で言った。


「そうだよ。僕が桜木家に遊びにくるのにいちいちお前の許可をとる必要はないだろ」


エンリーは何も言い返さなかったがライフが何かを企んでいるのではないかと疑っている様子だった。


「ママ、じゃあ買い物もあるしもう行ってくるね」


その時栞が二階からおりてきて玄関から顔を出した。


「優ちゃんを迎えに行くんだよね。僕も行くよ」

「いいけど、さっき疲れてるって言ってたじゃん」

「いいじゃん、僕こう見えて自動車の国際免許証持ってるから一緒に乗ってると安心だよ」


栞は玄関で靴を履くと、ライフも自分の靴を履きながら碧華に聞き返した。


「いいよね碧ちゃん?」

「栞がいいなら別にいいわよ」

「私なら別にいいよ」

「ライフ!」


エンリーはライフに怒鳴ったが聞こえないような態度でボデイーバッグだけを手に持ち先に外に出てしまった。


「まあまあエンリー、そんなに興奮しないで、ねえもしかしてライフ、優のこと気になってきたのかしら

ね。ふふふっ、音也くんも優待ちなんでしょ」


栞は声をひそめて碧華に笑いながら言った。


「あら、もしかしてそうかも。優モテモテじゃない。今モテ期到来中なんじゃない。いいわね若いって」


「ママも栞ちゃんも笑っている場合じゃないよ」


「あらいいじゃない。優には悪いけど、私こういう状況大好物なのよね」


「栞ちゃん!まったく他人事だと思って、困るのは優ちゃんじゃないか」


「あら、それをいうなら、おしにまけて音也くんを我が家に連れてきたあなたにも原因の一端があるんじゃないかしら?」


「それは・・・」


「もう栞、エンリーをいじめないの。エンリーは私のお願いを聞いてくれただけなんだから、それより、運転気をつけなさいね」


「うん。行ってきま~す」


二人を見送った碧華は玄関のドアを閉めながらエンリーに話しかけた。


「ふふっ、そんな顔をしなくても大丈夫よ。ライフは外ずらだけはいいんだからたとえ恋敵だったとしても、喧嘩吹っかけたりはしないわよ、優と音也くんとを二人きりにはさせないと思うけどね。でも誰に聞いたんだろう、彼が来ること」


「えっ碧華ママが教えたんじゃないんですか?」


「まさか、普通の週末にそんなことを言ったら学校さぼってくるかもしれないじゃない。そんなこと言わないわよ。栞じゃないかしら?最近あの子、ライフとテレビ電話でアニメの話とかよくしてたし」


「えっ栞ちゃんは違うと思いますけど」

「あなたはまだ栞の本性に気付いてないわね」

「えっ?」


碧華は意味ありげな笑みをエンリーに向けたがそれ以上は言わなかった。


「問題は優よね。あの子、栞と違って自分のこと話さない子だから…最近、音也くんからのラインも楽しそうに見てたし、私が邪魔しちゃったけど、最近幼馴染からもライン来てるみたいだし、ああ私もみたかったわ。音也くんのひとめぼれシーン」


「あっそういえば、あいつ褒めていましたよ」

「えっ何を?」

「碧華ママからの警告つきライン感激したって」


「あら本当?よかったわ。気分を害させちゃったらどうしようって反省してたのよ。そうだわ。さっきはきちんと挨拶できなかったから、今のうちに話してこようかしら。あの子達が帰ってきたら険悪な雰囲気になりかねないもんね」


「そうですね。やれやれ、まったくライフといい音也といい、わがままで強引なんだからいやになるよ」

「あらエンリー、ライフは自分の気持に素直なのよ。真っ直ぐで私は好きよ」

「僕もですよ。だけど、優ちゃんはまだ早いですよ」

「あらエンリー、あなたが栞に告白したのは高一の時だったんじゃなかったかしら?優はもう高三よ」

「!」


「あなたは気にしすぎなのよ。優が誰を選ぶのかわからないけど、あなたが気に病むほど心配する必要はないわ。もし優がライフを選んだとして、音也くんがあなたを避けるようになったとしても落ち込んじゃだめよ。あっでも幼馴染の田尾くんも気になる存在よね。でも優も受験性だから恋愛は控えた方がいいとは思うんだけど・・・こればかりはどうしようもないわね。勉強は私にはわからないからエンリー大変だけど、家庭教師お願いね。私ができるサポ―トはできる限りするから。でも、あくまで自分のことを優先にしないと駄目よ、無理は絶対しちゃ駄目よ」


「大丈夫ですよ。通学も途中まで車で行くようになって時間に余裕ができましたから」


「運転気をつけるのよ。無理は絶対だめよ。今年はなるべく私もアトラスに行くのセーブするから主婦業であなたの迷惑にならないようにするつもりだから」


「大丈夫ですよ。僕はもう高校の頃の僕じゃありませんから、自分の勉強もきちんとしてますし、優ちゃんの家庭教師は結構気にってるんですよ。人に教えるのもいいものだなって。それにアトラスには碧華ママを待っているファンがたくさんいるんだから、桜木家の食は僕に任せてください。それに最近は栞ちゃんの料理もおいしいでしょ」


「そうなのよね。エンリー、娘たちのことお願いね。でも、絶対無理しちゃだめよ。何があっても私はあなたの味方よ。きつくなるまで頑張っちゃだめよ」


「はい」


エンリーはそう返事すると碧華は軽く頷くと笑顔で返した。




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