碧華の災難④
テマソンと碧華は社員達に丁重に礼を言って、全ての社員達がエレベーターをおりて行くのを見送ると、玄関の扉を閉じた。
「ふう~テマソンもごめんね。なんかいろいろすごい騒ぎになっちゃったみたいで」
「いいわよ。もう慣れたわ。でも一つ分かったことがあるわ。私はまだまだあなたのことを分かっていなかったんだってことがね」
「あら当然じゃない、私たちであってまだ数年だもの。そう簡単に私の全てを理解できるなんて思わにないでよね。私はそんなにやすっぽい女じゃないわ」
「あらあなたいうじゃない。でも確かにそうかもしれないわね」
「冗談よ。私の価値なんて大したことないわよ。でもみんな素敵な人達ばかりね。感激しちゃった。専業主婦をしていたら味わえない感動よね。感謝してるわテマソン、私を見つけてくれてありがとう」
「どういたしまして」
二人は家の中に入るとリリーやシャリーそれにビルやジャンニ、ライフにヴィクトリアがそれぞれソファーに座ったり立ち話をしたりしてくつろいでいた。
その時、リビングの端にいたシャリーが碧華の元に駆け出し抱きついた。
「碧ちゃん、ごめんなさい。私、あなたの悪口を言ったつもりはなかったのよ。本当よ。あなたのお誕生日パーティーでのお誕生日プレゼントを突然みせて驚かせたかったの。だから、忙しいから出て行っていっちゃったのよ。本当よ。私碧ちゃんのこと大好きなのよ。きっ嫌いになったんじゃないのよ。本当よ」
シャリーは涙で真っ赤になった目で碧華を抱きしめた。
「わかってるわよ。私の方こそ心配かけてごめんね。でもあれ?今誕生日っていった?」
「あっ、みんなごめんなさい喋っちゃった」
「まったく、あなたに隠し事をさせようとした私がばかだったわね」
リリーが腕を組んで大きくため息をつくと、仕方ないわねというような顔をした。
「そうだわ、ビル、ジャンニさん、二人とも今から会社に戻るの?」
テマソンが聞くと二人は顔を見合わせてそれぞれ首を横に振った。
「もう家に戻るだけですよ」
ジャンニがそういうとビルも頷いた。
「じゃあ今から誕生日パーティー開かない?本当は明後日の日曜日にリリーの家でする予定だったけど、あれはあれでするとして、今日はフレッド以外はアトラスの桜木ファミリーがほとんどそろっているし、明後日はジャンニさんとママンもこられないっていってたでしょ。ライフが明日から家にくるっていっていたから昨日食材を大量に買い出しに行ったばかりでたくさんあるから、手分けして作ればいいし、ケーキはないけど」
テマソンは時計に視線を向けて言った。時間はもうすぐ八時になろうとしていた。
「あるわよケーキ」
一同が一斉に声の主を見た。その声を発したのはヴィクトリアだった。
「ママン?」
「実はね、今日昨日のことでチャーリーが謝りたいっていうから、あなたたちが仕事が終わったら一緒に食べようと思ってケーキを買って謝りにここに来ようと思っていた所にテマソンから連絡が入ったからそのまま車に積んであるの」
そう言ったヴィクトリアに一同が一斉にヴィクトリアに視線が向かった。
「あのママン?もしかしてチャーリー叔母様も来ているの?」
そうたずねたのはリリーだった。
「もちろんよ、車に待たせてあるわ」
「ええええ~、ママンがきてからずいぶん過ぎているわよ。ずっと、チャーリー叔母様を車で待たせているの」
「あら?そんなに時間たったかしら?大変、あの子おかしくなっていないかしら」
ヴィクトリアは慌ててバッグに入れている携帯電話を取り出した。
「まあすごい数の留守電が入ってるわ。ハロー、ごめんねチャーリー、うん大丈夫。碧ちゃん見つかったから、今からパーティーするから今迎えに行くわね。えっ?ええわかったわ、こっちから電話入れてみるわ。大丈夫よ、先に私から伝えるから。ええ、じゃあもう少し待っててね」
ヴィクトリアははそういうと携帯電話を切ると、また電話をした。そして電話の相手と短いやり取りをすると、準備を始めている一同に向かって言った。
「みんな!大量のお料理を城から今運んできてくれているんですって、後三十分ぐらいで到着するらしいわよ、だから準備はそんなにしなくてもいいわよ」
「あらママン、どうしてそんなに根回しいいの?」
テマソンは驚いてたずねた。
「実はね、チャーリーなのよ。リリーから私に碧ちゃんが行方不明だって連絡が来ていた時はケーキを買って、こっちに向かっている最中だったのよ」
「ママンが一番最初に会社についていたからどうしてだろうって思ったのよね」
リリーが納得したようにいうとヴィクトリアがさらに説明をした。
「結局地下駐車場に一番先に到着していた私の車に乗っているチャーリーが次々に見た顔の人間が到着するのをみて、パーティーの人数が増えそうだから料理を追加で作って運んでくれって城の料理長に連絡をいれていたらしいのよ」
「グッジョブだねチャーリー大叔母さん」
ライフがいうと、リリーが叫んだ。
「どうしょう。私誕生日プレゼント持ってきていないわ!」
リリーの言葉にテマソンは言った。
「明後日もう一度するんだから、今日はいいじゃないの」
「嫌よ。私とってくるわ」
そう言ってバッグをとって玄関に向かおうとした時ビルが言った。
「リリー、君がいっている誕生日プレゼントなら、まだ君の車の後ろに入れっぱなしなんじゃないのかい?さっき君の車の隣に車をつけた時見かけた気がしたんだけど。あれじゃないのか?」
「あああ~そうよ、私ったらやるじゃない、とってくるわ」
そんな妻をみながら、何かを思い出したのか、ジャンニの所まで行き耳打ちした。
「ジャンニ、我々のあれは明後日にするのか?」
「そうしますか。あれは家に置いてあるし、今から取りに行くとなると時間がかかってしまうから、予定通り明後日シャリーに託しますよ」
ビルとジャンニの会話を聞いたシャリーがジャンニに言った。
「あらじゃあ、今からフレッドに持ってきてもらえばいいじゃありませんか?」
「フレッドが?あいつは明日フランスから戻ると言っていなかったか?」
「ええ、でも今メールを見ましたら、仕事が早く終わったので、一日早く帰国していたみたいで、今家にいるようですわよ」
シャリーの言葉を聞いたジャンニは早速フレッドに電話を入れた。フレッドは疲れも見せず二つ返事で頼まれものを持ってこっちに向かうという連絡が入った。
「あっじゃあ、私は出版部門にプレゼントを取りに行ってきますわ。実は夕方完成したばかりなのよ。間に合ってよかったわ」
「そうだわ、私も荷物下だったわ」
シャリーとテマソンはそれぞれに荷物を取りに会社へとおりて行き、ヴィクトリアはリリーと碧華を伴って、地下駐車場で待ちぼうけをしているチャーリーに会うために地下駐車場へと向かった。




