女神マティリアと碧華おばさんのつぶやき
皆様! 初めておめにかかります。
わたくし、聖球星という星の神をしております マティリア と申します。
この星はあなた方の住む地球星とは双子星になります。
互いの星の存在を知るのはそう・・・神々のみ
ですので、あなた方が聖球星の存在を知らないのも当然のこと。
そこで、ここで我が星の事を少しお話ししたいと思います。
我が星は、あなた方の住む地球星とほぼ同じなのですが、唯一違う所が一つだけ存在します。
それが大西洋に浮かぶ島『アトラス島』の存在です。
このアトラス島には多くの人が日々の営みを繰り返しながら世界とも交流が盛んに行われ得ているようです。
言語は英語を共通語としており、今回の主人公が住む日本国とも友好国として国同士の交流も盛んで、イギリス国に近いこともあり、飛行機だけではなく、イギリス国とアトラス国を結ぶ海底トンネルを利用した高速列車も走行しているようですね。
そんな彼らの一生を、時折天界から眺めては楽しんでいるのですが、
今、私は一人の人間になった元天使の人生をのぞき見しようとしている所です。
この元天使がこの物語の主人公である碧華という人物なのですが、もう一人、彼女には分身のような存在がいます。
彼女と共に何度も転生を繰り返しながら、この聖球星で人間として生きているようです。
いつもなら生まれてすぐに巡り合うようなのですが、今回生まれ変わった時代では、中々二人はであうことができずにいるようです。
さあ! 二人がくり広げる人間模様、もしよろしければ私と一緒にのぞき見していきましょう。
******
「ちょっと、このデザイン画は何? こんなのがお客様が喜ぶとでも思っているの?」
テマソンはデスクの上にバッグのデザイン画を投げつけながら目の前の数人のデザイナーに怒鳴りつけた。彼の名はテマソン・レヴァントといい多くの国の弁護士資格を保有し、容姿端麗に加えアトラス国でも由緒正しいレヴァント家の長男で、数年前までは全く異業種の仕事をしていたが突然彼はアトラス国でディオレス・ルイという会社を自ら立ち上げ数年の間に一流ブランド企業にまでのし上がったいわゆる天才であった。現在バッグデザイナー兼ディオレス・ルイの社長も兼任していた。
「申し訳ありません。描き直してきます」
デザイナーたちは一礼すると社長室を出て行った。テマソンはデスクに置かれているコーヒーを手に持つと立ち上がり窓に歩みより、目の前に広がるビル群を眺めて大きなため息をついた。
「はあ…最近イライラしどうしだわ。寝ていないのがいけないのかしら? そう言えばベッドに入ったのはいつだったかしら?」
まだ熱いコーヒーを一気に飲み干した。
「どこかにもう一人私が転がっていないかしら。私の片割れがもしいるのだとしたら、何でもしてあげるのに、お金ならあるんだから。人間には魂がつながった存在があるって聞くけど、私の相棒はどこにいるっていうのかしら、もう四十歳を過ぎちゃったじゃない。どこに隠れているのかしら」
テマソンは顔にかかったサラサラのきれいな金髪をかきあげながらため息をついた。
そう…彼は何故かしゃべり口調がオネエ口調なのだ。だからと言って同性愛者でもなく両性愛者でもないらしい、本人曰く、体質と関係があるようだ。彼がなぜオネエ口調なのかその理由は追々わかってきます。
*******
「はあ、眠いなあ…家政婦さんがいる生活ってどんななんだろ」
碧華は目覚まし時計を止めながらブツブツ言いながらも、お弁当を作るべく起き上がった。
いつもと変わらない朝だ。
彼女の名前は桜木 碧華。アトラスとは遠く離れ得た島国日本国で生活している。生まれも育ちも日本だ。
彼女の最近の悩みは、ご近所付き合いがうまくできないので家を出たくない症候群におちいっているぐらいで、買い出しと子どもの学校への送迎以外は引きこもりがちのただの専業主婦である。
だが暇ではない
ブツブツ日々の愚痴を言いながらも忙しく家族達の世話に明け暮れている。
どこにでもいる平凡な家族ではあるが、彼女にとって家族とは宝石よりも高価な宝物であった。
そういう彼女はいつも独り言をつぶやいている。
「ああ~私は幸せ者だ。だって家族という宝物を持っているから。だけどつまんないな。このまま何もしないで歳をとっていくのかな」
そう…人間の欲というものは果てしなく、幸せを感じつつも欲望や嫉妬と、妬みといった負の感情は消えることはなく、そういう碧華も、欲しいものはたくさんあり、人をうらやみ、ないものばかりを欲しがっているただのつまらない人間の普通のおばさんを生きていた。
彼女の人生を振り返ってもたいした功績はどこからもでてこない。人生の半分近くを生きていて、周りからみれば、ただの「おばさん」である。そして後十数年もすれば「おばあさん」になっているであろうという現実が近づいているのだ。
ため息ばかりつく毎日だ。
街の片隅で平凡なおばさんが小さなことで落ち込んでいても、世の中は変わらず動いている。
そう、毎日の営みを繰り返して生きていかなければいけない。
どんなに落ちこんでいようとも必ず朝はくる。
そんな彼女の周りでも季節はいつの間にか過ぎ、春になっていた。
御年四十五歳、碧華おばさんはまた一段とあきらめがよくなった。仕方ない、まあいいか。
だけどそんなおばさんにも夢はあるようだ。
今日も碧華おばさんは独り言をつぶやく
「親友がほしいな、仕事だってして駄目な人間じゃないって証明もしたい、はあ…どうすればいいのかなんてわからないけどさ、もうおばさんじゃん、どこにいるんだろうな。私を変えてくれる私の分身のようなもう一人の存在、どこかにいるはずなんだけどな…おかしいな」
そんなことをつぶやきながら今日も碧華おばさんの一日が始まる。
******
(ぎゃぁあああー!このおばさん私の娘に何してくれてんのよ!!)
私は読んでいた雑誌を思わず落としそうになった。
今日は長女を連れて美容院にきていた。美容院とはいってもカット1000円の激安のところだ。まあ髪を少し切るだけだし、高い美容院に行かなくてもいいいかなということで、高校入試も無事合格し、中学校の卒業式を間近に控えて、長かった髪を少しカットしにきたのだ。雑誌を見せてこんな感じの長さでと言っていたようなのに、ここの美容師のおばさん何を勘違いしたのか長い髪の毛をいきなりバッサリと切りやがった。栞も唖然として言葉にならず切られて行く髪を茫然と見ているだけだ。
(うわー!これかなりムカついてるなあ。今更止めても切った髪は戻ってこないしなあ・・・)
後ろでオロオロしてみていると。
横にいたお婆さんが
「あらあ、可愛いわねえ、まるでアニメにでてくる女の子みたいね」
(よけいなことを・・・確かにかわいいけれども、切りスゴなんじゃぼけが、なんか自分でバサバサにカットしたみたいじゃんか! しかも何なの後ろの髪ちょちょろと少しだけ長く残しやがって)
怒鳴りたいのを押さえつつ切り終わるのをまってなんとかお会計を済ませる。
栞は既に放心状態
店を出るなり「ママ、こんなんじゃ卒後式にでれない。入学式までに伸びないし」
もう半泣き状態だ。
「栞、でも短い髪の毛も可愛いよ、そうだイメチェンのメガネ買いに行こうか? 高校はまだコンタクトしないんでしょ」
「メガネだけじゃどうにもならないよ、せっかく可愛いセーラー服の高校に行けるのに、台無しじゃん!
ママ私ここ、二度とこないからね!」
「そっそうだね、もうこないでおこう。大丈夫だよあなたすぐ髪伸びるよ」
(ヤバイヤバイなんとかなだめないと、でも短い髪の毛も可愛いんだけど、あの店員前も私の髪の毛にいちゃもんつけてたしな、安かろう悪かろうじゃ最悪だわ)
私は栞をなだめつつ、買う予定のなかったおしゃれな新しい眼鏡を買いにメガネ屋さんに向かう羽目に・・・まあ、後日談だけど、私的には短い髪にメガネ姿の栞ちゃんは可愛いと思ったんだけど、中学の同級生女子には陰口で、失恋したんちゃう、自分で切ったんかな? などコソコソ言われたと言っていたが、まあ忘れなよって言っておいた、だってあの中学校からあそこに受かって進学する子数人しかいないんだしね。頑張ったもんね。高校生活きっといい事あるよ
母の予言は当たるのだ。
そんな会話を確か三月にしたのだが、まさかその予言が本当になるとはこの時に私は思いもしなかった。
アクセスありがとうございます。
碧華とテマソンがこの先どのようにして出会い人生の後半を生きていくのか、
よろしければこの先ものぞいてくださるとうれしいです。