【第34話】最終決戦
「どうぞ、先に攻撃してきなよ。君の手の内は全て知ってるから無駄だけどね。」
「へぇ。手の内を知ってるって?それは本当かい?サニィくん。」
「どうやらお前は過去の事例からさっき使った二種類の魔法しか使えない様だな。IronとGravity。好きな金属を好きな形で出現させる魔法と重力を操る魔法だね?」
「おみごと、おみごと。パチパチパチ」
「ちっ、お前のそのヘラヘラした態度が嫌いなんだよ!」
「そんなキライなら来いよ。もっとキライにしてやるぜ。」
「そっちが来ないならこっちから行くよ。Thunderice!」
「さっき避けられただろ。学習しねぇなぁ。」
「ふん。今に見てろ。」
サニィの周りに先程と同じ様な氷柱が出現する。
こんなの楽勝で避けられる……そう思っていたのだが先程とは速度が桁違いに早くなり、しかも追尾してくる。
避け続けてると一つ、また一つと氷柱が砕けていった。恐らくその形を保持出来る時間制限でもあるのだろう。
だが最後の最後で油断してしまった。最後の氷柱が自分の腕をかすった!
普通の氷柱なら問題ない。だが無駄に電気を纏ってるせいで全身が痺れて動けない。
「油断したな。これで終わりだぁ!Thunderice!」
動けない俺の周りにまたもや氷柱が出現する。動けない俺を確実に始末するつもりだろう。
「サニィ、お前俺の魔法の効果を知ってるのにこんなので倒せると思うか?」
「ふん。お前のGravityは全方向の攻撃には通用しない事も知ってるんだ。」
「Iron」
俺を囲むように鉄で出来たドームの様な物が現れる。
鉄のドームは全方向の氷柱から俺を守ってくれている。
そんな事をしてる間に痺れも無くなった。ドームから這い出て、俺はサニィにおちょくるようなポーズをとってみた。
「…お前は人をイラつかせる天才だね。」
「それ程でも。」
「お前を苦しませてから殺そうと思ってたけどもう我慢の限界だ。地獄へ落としてやる。」
「ごちゃごちゃ言ってないでやってみたらどうだ?」
「これが僕の究極の魔法だ!Limitbreak!!」
「……何か変わった風には見えないけどな。」
「この魔法は僕の魔力と身体能力を何倍にもする魔法だ!食らえ!」
「ごはぁっ!」
見えなかった…!奴の動きが全く見えなかった!俺はサニィに蹴られたお腹を擦りながら攻撃体制をとる。
「無駄だァ!」
一秒にも満たない短時間で六、七発のパンチと蹴りを食らう。まさかサニィがこんなバケモンになるとはな。
「そうだ、魔力が上がってる事を見せてないな。」
「!Iron!」
俺は世界で一番頑丈と言われている"メット鉱石"で壁を作った。
「Dragonbless!」
サニィの背後に龍の頭の様な物が現れ、口から光線を出す。壁は簡単に破壊され、その後ろに隠れていた俺ごと貫く。と、サニィは思っていた様だが俺はとっくに壁の後ろから逃げている。
サニィはそれに気付くのに少し時間がかかっていた。それがお前の敗因だ。
「Iron!」
「ぐはぁ!」
地面から鉄で出来た異常な程長い剣が出現し、サニィを貫いた!
そしてそこに追い討ちをかけるようにIronでナイフを大量に出現させ、Gravityで全部のナイフをサニィに刺す。
これで一件落着だ。
「あのー、」
「ん?どうした?えぇっと……ロミだっけ?」
「確かEnergiestockの効果で生き返るんじゃ無かったか?」
「あ。」
サニィの方を振り返るともう遅かった。何事も無かったかのように突っ立っている。
「よくも……二回も殺してくれたなぁ!?貴様は許さない!」
「二回も?お前はここの村人達を何回殺したんだ?」
「ここでのうのうと暮らしている奴らとは違うんだ!僕は世界に求められている!」
「とうとう頭がおかしくなっちまったか?お前の事を求めてるのは臓器を買う人だけだ。」
「ふ…ふふふ…お前はこの行為の意味について何も分かっちゃいない。」
「あ?ただ金儲けの為にやってる事だろ?」
「それが大きな間違いなんだ!とにかく偉大なる計画の邪魔はさせない!」
「そうか。Iron!Gravity!」
空中にナイフが大量に出現し、そのナイフが一斉に対象に襲いかかるという俺のいつもの戦法だ。
この攻撃が守られるか避けられるかはするだろうが、このまま攻撃していけばいつか隙を見せる筈だ。
「Barrier。」
透明な球体がサニィをナイフから守る。面白味のない技だな。
「お前がその魔法を解いた瞬間に殺ってやるぜ。」
「それが出来ないのは君自身が一番分かってるんじゃないのか?宣言しよう。この魔法を解いた瞬間に君の顔面に蹴りをいれる。」
そう。奴の言う通り俺は攻撃どころか身を守る事さえ出来ないのではないのでは無いだろうか。
どこを攻撃するか言われても対処しようが無い。
今出来る事は俺が一撃でノックダウンしない事を祈るだけだ。でも一応…
「Iro…」
「遅いっ!」
顔が痛いと思っていたら俺は宙を舞っていた。
駄目だ。意識が朦朧とする。どうやら一番恐れていた事態になったらしい。
「むきゅー」
「気絶したか。当然の結果だな。僕は何を怒っていたんだ。こんな簡単に倒せるならずっと冷静にいた方が良かったな。さて、こいつをどうしようか。」
「待て。」
「ん?君はロミとか言う雑魚じゃないか。どうしたんだい?」
「お前の好きな様にはさせないぞ。」
「ふん。ほざくのもいい加減にしてください。元気な状態でも勝てないのに、さらに片腕を失い、さっきの爆破で全身ボロボロ。何が出来るって言うのかな?」
「お前を止めれる。」
「話にならない。一旦死んでもらうよ。Phoenix。」
「うおぉぉぉぉぉ!!」
「!?火だるまになりながら突っ込んできただと!?」
「(このままあいつに抱きつけば相打ちにはなる。その間にあの人が目覚めてくれればいいんだが…)」
「とでも思ってるのかい?面倒な事になるから避けさせて貰うよ。」
「!?あっ。」
「そのまま地面に倒れやがった。何がしたかったんだ?」
「動かないで下さい!」
「次から次へとぉ!次はお前か!」
「少しでも動いたら撃ちます。」
「…お前らの魂胆は全てお見通しだ。本当は君はあの武器を持っていなくてロミに渡したんだろ?やられた振りをして攻撃する。馬鹿馬鹿しい。」
「くっ!」
バァン!
「来ると分かっていたら避けれるんだよ。さて、そろそろ炎で死ぬぞ?」
「う…ああ…」
「!!ロミさん!」
「次はお前の番だ。時間が無いんでな。早めに終わらせる。」
「………」
「……そこに居るのは分かってんだよ村長おぉ!Explosion!」
「うわあああ!」
「!!」
「二段構えか。なかなかやるじゃないか。」
「ああ…ああ…」
「終了だ。」
「…なんてね。」
「?」
「ピイィィィィ!!!」
「があぁぁ!?」
鳥さんの放つ衝撃波に巻き込まれたサニィさんは真っ二つになって地面に転がった。ナイスです鳥さん!
「おま……えら…最初から……これを………」
「動物と話せる村人さんが村長に教えてくれたんです。ロミさんのペットの小鳥さんが来るって。」
「三段構えか……だが僕は…!すぐに生き返る!!」
「分かってます。ですがお兄さんも目覚めた様ですよ。」
「よいしょっと。悪かったね。長々と寝てて。」
「いえ、むしろ目覚めるのが早い方だと思いますよ。」
「お前らァ…お前らお前らお前らお前らお前らお前らお前らお前らお前らァ!どれだけこけにすれば気が済むんだァ!」
「安心しろ、次が最後だ。お嬢ちゃん、鳥さん、下がってな。決着は俺が付ける。」
「これで終わりだ。僕はもう死なない。」
二人ともしばらく見つめ合う。下手に手を出したら死ぬ事は二人とも理解していた。
そしてサニィが動いた!
「(勝った!奴の喉まで3cm。このままこいつの喉を貫けば…!)」
「ごぉはァ!」
「終わりだ!」
「この時を待っていた!I…ron!」
「!?」
俺の腹から大剣が飛び出し、サニィの体を貫通する。
俺達はお互いに地面に倒れた。ここで詠唱が間に合えば…
「………Iron!」
………ん?
「お兄さん!起きたんですか?」
「ああ…サニィはどうなった?」
「お兄さんが魔法でサニィさんを金属の中に閉じ込めてくれたお陰で何もしてこないです。」
ああ、さっき死ぬ間際に身動きが取れない程ギリギリの大きさのメット鉱石をサニィに被せたお陰でなんとかなった。
あんなバケモノによく勝てたな。
「ありがとうな。お前らがいなければ勝てなかった。」
「いえ、こちらこそありがとうございます!」
こうしてサニィの脅威は去ったのだった。