97:そして世界の真実は明かされる(2)
聖女リテリ=ユイーシ=ルクルブの戦闘とはエナジー・コンバージョンによる相手の攻撃の吸収変換。それを月に集める。
月を使うことからイメージとして月に偏りがちだが、実際はそうでは無い。
その場から動くことなく相手の攻撃を吸収しそれを攻撃に変えることからこう呼ばれる。
『静の聖女』。
ならば、『月の聖女』と名乗ったリテリとは?
リテリから炎が噴き出した。色は黒。
それはリテリの身体から抜け出すと傍で二人の子供の姿を成した。
「あ~あ、バレちゃった」
「バレちゃったね。バレちゃったねー」
「何者だ!」
ソフィアが問いかけた。
「ん?何だろう?」
「お母さんは。燃えカスって言ってたね。言ってたねー」
「燃えカスだと?」
出現方法さえ目にしていなければ、ただの子供だ。だが、見た目がそのままのはずが無い。こちらにもルクスと言う見た目子供がいるのだ。
「やっぱり、退治されちゃう?」
「そうかもね、そうかもねー」
「お兄さん、嘘つき?」
「そうかもね、そうかもねー」
「違う、ファウ様は貴女達を庇ったの。その世界を暴いて崩壊させるつもりなんてなかった。貴方たちを救おうとしたのっ!」
「私達を救う?」
「レムリ、ありがとう。そこから先は俺から話す」
そこにはファウ=バルドが座り込んだ姿のまま現れた。そして、立ち上がる。
「今回の事を語る前にもう一度世界の事を説明しておくよ。少し永くなるが付き合ってくれ」
「マスター?」
ディアレスが顕現しファウ=バルドを支える。つまり、ディアレスはファウ=バルドと居たことになる。
魔神ボルト戦終了後、ファウ=バルドが取り込まれて消えた後にファウ=バルドの下へ帰ったことになる。
だが動かなかった。
それはファウ=バルドが望んだことだから……。
「八つの世界の成り立ちはもう知ってるな?前世界である俺の世界が滅んだことだ。そうなって初めて、神々は今の世界を創れる」
「滅んだ原因は『魔神ボルト』だが、真の原因は『過去改変』にて『魔神ボルト』がそうするように仕向けられた事だった。つまり、それが行われないことには、この八つの世界の誕生が無い」
「この『過去改変』に使用されたのが『時間の概念』と呼ばれているモノだ。穏やかで良い人物だったボルトを豹変させたのを考えれば『望む結果に相応しい原因をつくる技術』と予想出来る。こればかりは確かめた訳ではないので俺の想像だ。原因に選ばれたボルトは本人の意思と関係なく虐殺の魔神に変えられた」
リセルナの表情が動いたが、ここは発現する時ではないと自重する。
「世界の滅びの原因となった技術、『時間の概念』を危惧した神々は、新たな世界から『その技術』を八つに分けて『宝珠』とし各世界に隠した」
「中でも女神アニージェの『八翼世界』は念を入れ『過去の世界』『未来の世界』のない『現在だけの世界』を創る。勘違いしないでもらいたいのは『過去』や『未来』が無いのではない。『世界』が無いのだ。明日を思うことも予想することも希望を持つことも出来る。過去を悔やみ、反省し、繋げることも出来る。だが『世界』が無いので行くことも戻ることも出来ない。こうして、時間に干渉できない現在だけの世界が生まれた」
「そんな世界は今を、今だけを精一杯生きる。良い言葉だが、僅かな歪みが生まれはじめる。リリス、それが何か分かるか?」
行き成り問われて少し慌てるリリス。
「えっと、本来なら存在するはずだった『過去の世界』と『未来の世界』だよね?」
「リリスに分かるなら皆、理解しているな。過去は『燃えカス』未来は『現在の為の燃料』そんな歪んだ世界でソレは生まれた。それが一連の原因」
「時間から切り離されてしまった為に、何処にでも存在しながら、何処にも存在を許されないモノが誕生してしまったんだ。自身の存在を否定しながら否定できない。全てに矛盾を抱えたモノを誕生させてしまった」
「本来の歴史、ボルトが魔神にならずに済む世界では誕生できない。だが、誕生している以上、そうしなければならない。改変しなければならない。改変がもはや正史と化した」
スタアは思う、これは以前にルクスが答えていたことだ。
(卵が先か鶏が先か、自分は蝶の夢をみているのか蝶が自分の夢をみているのか。どちらも正解でどちらも不正解。しかし真実は、別のところに用意されているためにフェイクじゃ。テーブルに団子を置いた、しかしそれを誰も見ていない、実際に無い。なら嘘か真実かを決めるのは……)
それを、女神アンニージェは遮るように話を進めた。ルクスは何と言うつもりだったのか?
そして、女神アンニージェはその会話を……何故、遮ったのか?
「本来なら『過去の世界』として、そのまま存在し得た想い、思い出、喜び、悲しみ……人が持つ感情。こぼれ落ちて無いものとされた歴史そのもの『燃えカス』。『燃料』とされた『未来の世界』。ソレが九つめの世界と呼ばれるこの子達だ」
「その存在にとってはそうすることが、当たり前の事だったんだ。そうすることが真実だった」
レムリはそれを聞いて、納得したように答えた。
「それでファウ様は、その者を救おうとされたのですね?」
ファウは、頷く。
「それなら、そうと初めから話してくれれば!」
「そうよファウ!」
「その通りです、バルド様。勇者様がそんな事になっているなら」
リテリ、葵、リセルナだ。
「済まない、こいつらは臆病でな。直ぐに姿を隠す。隠したらもう探せない。こいつらには時間は無縁のモノだからな。例えるなら捨てられた子供だ。親の都合で切り捨てられた子供の様な者だ。捨てた親は女神アンニージェだがな」
正に今回の事は女神が引き起こした神ゆえの矛盾だった。神ゆえに自ら修正することは出来ない。何故なら、それは自らが過ちを犯したことを認めることになるからだ。神は間違わない。間違ってはいけない。
だが、下界の者が何かしようと動くことは構わない。
そこで、ファウ=バルドがソレを条件に転生した。それが以前に、口止めされているとしたファウ=バルドの秘密。
考えてみれば同じ人間が二度も転生できる確率とはどの位だ?そこに条件があったのだから当然なのだ。
しかも、それを自然の流れとして行う。神の間違いを修正する為に動く……ではダメなのだ。結果的にそうなってしまわなければならない。
まず、ファウ=バルドが転生しなければならない理由が女神によってつくられる。そして、それらはファウ=バルド本人には知らされずに行われる。
何処にも存在して何処にもいない者。その者には勇者ボルトの神の目、『ワールド・サーチ』の比ではない慎重さが必要とした。
レムスタリアの『呪い』との転生理由は、こうして女神によって理由付けられた。
これを、ファウ=バルドは一度の失敗後に成功させた。
失敗時の『挿げ替え』は誰が行ったか?。勿論、女神だ。女神以外の誰がこんな奇跡を起こせると言うのか?
だが、頑なに女神の関与は否定され……したのは魔王、魔王軍の誰かと誘導された。
リリス=バルド
ファウ=バルド第二の試練。
ファウ=バルドが至った結末には必要不可欠となった存在。
この結末を予想出来ていたわけでは無いが、欠けていたならばここには辿り着けなかった存在。
勇者ディアレス
前世の絆から、ひたすらファウ=バルドを探していたディアレスの想いが暴走。勇者を投げ出してサポートスキルとなるが、この暴走がなければ達成できなかった事も多い。
葵
『星読み』
女神にとっては、これこそが危惧されたこと。ファウ=バルドに与えられた第三の試練。
『挿げ替え』を誰が行っているか、気づける可能性のあった真巫女。偶然にもファウ=バルドによって『星読み』が信じられなくなり、行うことは無かった。
ソフィア=ヴァルキュリア
第四の試練。
それは生き残ることが目的だった。ファウ=バルドが失敗する可能性が高かった脅威。だが、勝つことによって流れが大きくこちらに向く。正に奇跡の勝利と言っても良い。
無論、失敗を繰り返してして『挿げ替え』は行われている。
リテリ=ユイーシ=ルグルブ
第五の試練。
戦うことなく味方につけ、ついに最終目的のメンバーが集まる。しかも魔女。
ルクスにより灰となる。
予定外は、何も知らない葵、リテリと魔王ルクスが戦闘になったこと。
『挿げ替え』の確認の為のファウ=バルドの死亡となっているが、本来の目的は勇者ボルトへファウ=バルドを送る事が目的だった。『ロクヌス』では『不戦勝』により弾かれる可能性が高かった。
これは、魔神であるかの確認と宝珠を集め出す理由をつくる事が目的だ。
改変によって人格を歪められているボルト。現状の脅威である勇者ボルトの排除と同時に八つの宝珠を集める。
そして八つの宝珠を持った事により、ファウ=バルドはついに『燃えカス』と呼ばれるモノの干渉を受け彼らの世界に取り込まれる。
ついに招かれたのだ。
何故なら、自身の存在の脅威となり得るから……。元の世界の復活など、嘘を匂わせたこともより脅威と認識される。
それは、どの様なやり取りの結果だったのか?
そして、仲間が真実に気づけたのなら、ひとつだけファウの言うことを聞く。
ファウが負けたらこの世界で一生過ごすとゲームが開始される。
干渉出来る数は先手が六回。
後手のファウが四回。
初めから不利な条件だったが、臆病で慎重な子供達を参加させるにはこの条件を呑むしかなかった。
ファウはヒントを残すことに使い。
その者はファウ=バルドの駒を盤上から退場させることに使用する。
ここからは今起こった事だ。説明の必要は無いだろう。ただ一つだけ付け加えるなら、リテリが干渉され消されたのは一番初めだったこと。絨毯の染みが物語っている。
最後は『レムリに騙されろ』を理解したレムリが演じてくれた。演じた中に真実が混じっているのだから、レムリとはやはり真に聖女候補なのだ。知性、知識、それを使用した総合判断と状況判断が優れている。
そして現状。
「さて、俺の勝ちでいいか?」
「まぁ、約束だしね」
「しょうがないかな」
「なら、少し付き合え」
「何処にさ?」
「何処に?何処に?」
「もちろん、お前たちの母親の所にだ!」
そう、これが最終目的。自らの意思で、女神アンニージェに対面する。




