95:そしてメモの真実は語られる?
ソフィアは難なく皆を救った。理屈は分からないけど、あれは以前目にしたことがある。
そう、お兄ちゃんがレムスタリアの肉体より無理やり引き出された時。あれと同じことが目の前で行われた。
腕を前に翳し、握っただけだ。それだけで空間に何処かから引きずり出されたかの様にレムリィが現れた。
後は次々に消えた皆が現れた。その中には魔王ルクスィちゃんまで含まれていたのだ。
そして、それぞれが持つ情報交換が行われる。だがやはり、それを解明するにはファウ=バルドが託したメッセージの意味を解くしかない。
そしてそれが出来るのは……。
今回、残されたメモの説明をするね。
「そふいあ」
これは、もう分かるよね。お兄ちゃんが皆の行動に干渉して残した四つのヒントのひとつ。
そもそもお兄ちゃんが残したヒントは全てがリリスに向けられたモノ。
その証拠は後で説明するけど、それを前提で考えるね。
でも、考える上で大切なのは、ヒントで答えは言えないとの兄妹の文字遊びに『決まり事』があったって事。
「そふいあ」
つまりこれは答えではないよ。この事態の犯人は『ソフィア』では無い。では何故、名前を伝えたのか?
それは、この事態を収拾可能な人物として思い浮かんだのが『ソフィア』だったって事。
次はそう、これにしよう。
「きおつけろにちじ」
分かりやすくすると「気を付けろ、日時」とでもなるのかな?でも、ルールからそのままを伝えることはない。日時に意味はない。
そもそも、この世界で日付なんてものが表示されたことがあった?無いね。
なら何故、お兄ちゃんは日付なんて言葉を使用したのか。
お兄ちゃんが消え、葵ィがリテリィと会話したとき……。
たった今、会話したにも関わらず、リテリの痕跡は随分前の物となっていたんだよね?
どうすれば、そんなことが可能?
日時とが日付じゃない、『決まり事』。
決定的な八翼世界の『決まり事』である『時間への干渉』を伝えている。
『時間へは干渉できない』八翼でよ?
なら、答えは素直に考えればいい。ここは『八翼世界』ではない。
決定的なことは、葵ィが見た二つの月。そして、葵ィが『星読み』で見た、「九つ」との言葉。
素直に単純にどんなことも起こるのだとすれば、ここは『九つめの世界』なんだよ。
既に『決まり事』は、絶対的なモノではなくなっていた。嘘かも知れないと思えるモノに落ちていた。だがらたどり着けない。
不思議……この答えにたどり着くには、『決まり事』は、やっぱり絶対でなければならないのに。誰かが、『決まり事』を絶対ではないモノにしてたよね?
次は、これ。
「にげろここから」
これは、「逃げろ、ここから」。ここから逃げろ……かな?
九つめの世界だから「にげろ」。でも、本当の事は伝えられない。
なら、どう捉えれば良いのか?
逆の意味ね。
「ここへ来い」
既に有り得ないはずの『九つめの世界』に捕らわれていながら「ここに来い」とは?
こことは、何処?
そこで「ソフィア」が必要になって来るのよ。英雄の魂を自らに取り込み糧としてきた『神に最も近い戦乙女』。
全てを終わらせる為には、始まりの場所に向かうしかないの。
だってそうでしょ?前世界から続いた原因を取り除かないと『本当の終わり』にはならない。
また『嘘の物語が幕を閉じる』だけよ。
そして、最後はこれ。
「だまされるなれむり」
一見、レムリィへの警告よね?
「騙されるな、レムリィ」
本当の事を伝えられない兄妹の文字遊びの『決まり事』。それが、意味を別の物に変えてしまう。
そして、これが初めからレムリィに向けられたものでは無く……。
リリスに向けられたモノなら……意味は真逆。そうとしか考えられない。
「レムリに騙されてはいけない」
全ての嘘、始まりの嘘、その全てがそこに集まらざる得ない。
「そして、魔王ルクスィとお兄ちゃん、ファウ=バルドが嘘に嘘を重ねて隠そうとし、庇おうとする人物」
「それは、レムリィ。貴女よ!貴女が、過去改変を起こし、世界を滅ぼし、九つの目の世界を創り上げ、自ら呪うことによって誘導し、騙し、『魔神ボルト』の意識を操り、罪を着せ、終焉させた犯人よっ!」
リリスはまるで探偵物の決まりポーズの様にレムリを指さす。
その場にいた一同の目がレムリに向けられた。
「わ、わたくしですか?」
「ば、バカな……」
「うそ……」
「レムリ様……」
「レムスタリアが、勇者様、を……ではあのドロドロしたモノは」
「そして、最後に何故これが私に向けられたメッセージなのか教えるわっ!」
「四つのメッセージの頭の文字を並べるとこうなるの」
「きおつけろにちじ」
「そふいあ」
「にげろここから」
「だまされるなれむり」
「きそにだ……『木曽二田 虎雄』……お兄ちゃんの前世の本名よ。そして『キソニダ鑑定屋』は私達のお店の名前」
「虎お……素敵な、名前……」
ミユウが呟いた。
「嫌な事件だったわ……」
リリスは遠くを見つめながらそう呟いた。
「きゃははははは!!」
そいつの笑い声が響く。相変わらず何もない空間。
「お兄さん、木曽二田さんなんだ?」
もはや、名前の事はどうでもいい。リリス……お前は最後の最後でつまらないミスをした。
「でも、これでゲームオーバーだね。お兄さん」
そうだ、終わった。
「では、約束通りに私達と沈もう?」
希望は、潰えた……はずだった。
だが、思ぬところから救いの手が差し伸べられた。
「待て。義妹よ!」
ソフィアだった。
「お前の説には決定的な矛盾が存在する!」




