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俺と聖女でひとつの身体  作者: 天川 和
世界解明編
90/268

89:疑問は謎のままに出来ない(リセルナ) 


 まさか、勇者様が魔神だったなんて……。


 今まで自分たちを騙していたことになるのだけれど。


 確かにこれでハッピーエンドとはいかないまでも、世界は守られ最悪の事態は防げた。しかも、前世界からの因縁にも一応の決着が付いて終幕。



けど、わたくしには疑問がある。



 ウォボスを庇って呪いを受けた勇者様。仲間の事を第一に考えてくれた勇者様。その勇者様が『魔神』なんて信じられない。例え『魔神』だとしても人々を虐殺し世界を破壊したとは思えない。


 きっと、好きになってしまった贔屓目もあるのだとしても、わたくしは信じている。


 あの時、わたくしは動けなかったけど意識はあった。多分、他の二人もそう。


 ミユウの形態変化・黒が解けて裸になっていないのが証拠。ウォボスもスサノオを降ろしたままだった。勇者ディアレス様がわたくし達にも聞かせる為にそうしたのだろう。


 バルド様の前世界の話に、勇者様は否定しなかった。むしろ肯定。六翼世界を壊したことまで認めた。



 だけど、わたくしは見ている。あの時、勇者様の『色』が染められてしまったこと。何か、ドロドロしたもので塗りつぶされた。


 あれが何なのか、わたくしにも分からない。


 ただ、あの時何かが起こっていた。



「ね?勇者様?」


 ボルトを囲む五本の柱は星を成し、結界の役割を果たしていた。ウォボスが部屋に設置したモノ。


「…………」


「勇者様?」


「何故だ、何故生かしておく?」


 ディアレスの『八翼天翔・千方陣』を受けたボルトは現状、以前と同じだ。魔力の充電なしに生きられない。そしてそれを行えるのはリセルナだけだった。


 例えばどんな罪を犯していても、前世の罪で死刑となったら理不尽過ぎるだろう。六翼を滅ぼしていても、別世界の人間が裁く権利はない。


 出来ることは、自分達の世界の危機を未然に防ぐこと。その為の『八翼天翔・千方陣』だった。



 魔神ボルトの生死はリセルナに委ねられていた。


「?」


「何故、こうして俺に魔力を分け与える?俺が恩に着るとでも思っているのか?」


「いいえ?そんなことは思っていません」


「なら、どうして」


「……好きだからです」


 ついに言ってしまった……とはにかむリセルナ。


「はぁ?」


「勇者様に他の女の子が近づくだけで『嫉妬』してしまう程、好きだからです」


 この女は、何を言っているのだ?俺は自分で言うのも何だが大悪党だ。人の命を何とも思ってない。そんな男を好き?


「お前はバカか?俺は何百億、何千億、いや、それ以上を殺した男だぞ?それを好き?」


「はい。好きな人が『魔神』であっても。好きなものは好きなのでどうしようもありません」


「……聖女だろ、お前」


「あ、不本意でしたが今は、聖女ではなくなりました。ただのリセルナですよ?」


「…………」


「それに、わたくしは信じています。あのこれを……」



リセルナが何かを手渡そうとした瞬間。


リセルナがボルトの目の前から忽然と消えた。


「え?」


(……リセルナ?)


床に落ちた手紙と、宝石を拾う。



  ボルト様


 人間であるボルト様が魔神と呼ばれる所以に疑問を持っています。どんなに優れていても人が魔神……神になれるものでしょうか?


 原因は多分、あの時のドロドロしたモノです。そう確信しています。色は覚えています。なので痕跡を辿れば正体が掴めるかも知れません。


 論より証拠ですね。ボルト様。証拠が無いと誰も信じてくれないのは理解しています。ですから、わたくしはある場所に向かいます。


 これは、私の魔力を蓄えた宝石です。これでしばらくは持つはずです。


 こちらからの連絡は出来なくなりますが心配しないでください。


 必ず戻ります。


 楽な道のりでは無いですが、わたくしを信じて。  リセルナ

                  


 ボルトの手紙を持つ手が震える。



「ウォボスーッ!俺をだせっ!!リセルナがっ!リセルナがっ!」



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