88:疑問は謎のままに出来ない(リテリ)
ファウ様、わたくしは貴方の成そうとした事の力になれたのでしょうか?
子供の時、『魔女の呪い』から救ってくれた少年。
約束とも言えないような約束で、『魔女』でありながら『聖女』を目指した。
今考えれば、無謀としか言いようがない。
助けてあげると約束しながら、果たせなかった。
ファウ様は、黒い霧となって消えてしまった。
でも、全て終わってこうしてみると、わたくしには疑問が残る。
それは、『決まり事』についてだ。
誰がつくったものなのか?
それは神、若しくはそれに近い存在で間違いない。
では、それらは何故つくられたのか?
つくられたからには理由がある。
物事を円滑に進めるためだったり、快適に過ごすためだったり、秩序を守るためだったり。もしくは、何かから守る為……。
思えば『決まり事』だと言われたら疑いもせずに納得してしまってた。何故なら、それが既に『決まり事』だから。
……けど、『決まり事』だとされた明らかな嘘。
魔王が死ぬと世界は消滅する。
宝珠を奪おうとしたルクスが『聖女リセルナ』へと近づき、ファウ様に濡れ衣を着せようとした。ファウ様はリセルナを助け、『宝珠』を奪って逃走……と短く纏めるとそんな『嘘のシナリオ』に使用された『偽ルール』。
でもこれは本当に必要なことだったのだろうか?『偽ルール』を設けないと実行不可能なシナリオだったろうか?
この行為が及ぼした結果は『決まり事』を地に貶めた。『決まり事』を信用できないモノへと変えてしまったのだ。
でも……二人の狙いが初めからソレだったとしたら。
「この世界の『決まり事』で最も重要なものと言えば……それは……」
リテリはメモを見ながら考えていた。
ガチャン!!
カップが滑り落ちて割れた。
「リテリ様?いかがされました?」
ドアの前から葵の声がする。
「お茶を零しただけよ。心配しないで。代わりをお願いするわ」
「かしこまりました」
コン、コン、コン
新たなお茶を準備した葵がノックする。
「はい」
リテリの声がした。
「お茶をお持ちしました」
「入って葵。ごめんなさいね」
ドアを開け中に入る。
「失礼します……リテリ様?」
そこにリテリの姿は無かった。今、声がして、今、開けたのに?
「リテリ様?リテリ様!」
絨毯は染みになっていた。何時間も前にいや、何日も前に零したお茶が乾ききったように。
「え?」
では、では……私は今、誰と話したの?
窓の外は月が出ていた。
二つの月は立ち尽くす葵を照らす。
そして、足元のメモを見つける。
決まり事
奥に行けば行くほど遺跡物のレア度が上がる。
月は魔女の魔具にして唯一単体。重複しない。
剣や盾では魔法は防げない。魔力の総量が同じならば相殺できる。
六翼世界が滅んだことで宝珠は移動すると確定。
虹の聖女でも魔力合成にて同じ色から名称の違う色を作れない。
血は魔力で生成しても時が来れば消滅する。
時間へは干渉できない。
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後半は、魔王と、勇者に関する事だった。
「リテリ様、何をされていたのですか?そして何処へ?」




