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86:魔人バルドVS魔神ボルト(3)


「!!」


 魔人ファウ=バルドの渾身の一撃を……。


 『魔神』ファウ=ボルトが受け止める。ファウ=バルドに方向性を持たせて展開した高重力の壁は、全てのエネルギーを相殺した。


 呪いのオーラが残像を作り、消えていく。


 ソフィア=ヴァルキュリアを撃退した『呪い』がボルトには通用しなかったのだ。


「あははははは!!バカかてめぇはよ!!」


「…………」



「蒼きょ……」


「ダメっ!スタアちゃん!」


 『蒼鏡』を展開しようとしたスタアをレムリが止めた。


「これは、ファウ様の願い……」


 レムリは胸の前にて自身の手を握り締めた。



「切り札は最後に使うもんだろうがよっ!それで、俺を倒せると考えていたならお笑いだ!」


 ソレはファウ=バルドの最高の攻撃手段だったはずだ。それを、魔神ボルトは受け止めた。受け止めてしまった。


 ファウ=バルドには魔神ボルトが何を言っているか聞こえない、見えない。


「多分、お前は……俺を倒せると思っているのかと言ってるんだろうな」


「俺を倒せると思っているのか……?」


 ファウ=ボルトの笑いが消え、ファウ=バルドが笑う。


「だから、俺はこう答える」



「「「「ん?ああ。出来るよ」」」」



それは、レムリ、スタア、葵、リテリ、リリス、魔王ルクスの声だった。


「『ブラックホール・バレット』!!」

「消えろ、カスがっ!」


「『八翼天翔・千方陣』!!」


 それは身体に魔力で刻んだ無数の死点から、常に魔力が漏れ出す。魔王ハージルの『呪い』を再現し強化したモノだった。


 背後には、八つの翼を持つ勇者ディアレス。


「後ろがお留ね、ボ、ク。貴方を倒すための偽りの物語は。続いていたのよ?」


 ディアレスが魔力消失を起こして消える演技までが今回の作戦だった。ボルトが最も警戒したのはディアレス。ならば、その存在が無力化したと思わせればいい。


「ディアは俺のサポート・スキルだ。俺の一部。俺がケリをつけるとの嘘は言ってない」


「そうです、マスターと一心同体です」


「き…………きたねぇぞ……バルド」


 魔力を維持できなくなった魔神ボルトは墜落する。大地に叩きつけられ、ダメージを無効化することも出来ずに全身を強く打ってうめき声をあげた。


「ぐあっ!!」


 だが、それはファウ=バルドにも同じことが言えた。元々がディアレスが作り出した肉体。そこへ、『システム』による強引な肉体改造とも呼べるスキル付与。更に『呪い』の浸食……限界が来ていて当然だった。


「マスター?」


 ファウ=バルドが黒い霧をまき散らしながら落下した。


「マスター!!」


 ディアレスが後を追いかけて抱きとめた。


(意識が無い?)

「マスター!マスター!!」


 この後は『ロクヌス』でレムリの身体に戻る予定だったのだ。意識が無ければそれも叶わない。


「ルクス!!マスターを助けて!!」



「いかん!!レムリ、急ぐぞ!!」

「ファウ様!?は、はい!」

「ファウ!」

「お兄ちゃん!」

「ファウ様!!」


 皆が駆け出しファウの下へ向かう。


 だが、魔王ルクスが到着した時にはファウ=バルドであった名残が黒い霧となって空中に飛散する場面だった。


 ディアレスはファウを抱きとめた姿勢のまま動かない。


「ファウ様?……なん……ですかこれ?」


「これも、予定の内なのですわよねっ!?」


「お兄ちゃんが……消えちゃった……」


「魔王ルクスっ!どうなってるのっ!」


「ルクス様……?」



「間に合わなかった……お兄さんは……」


 ルクスは最後まで口にしなかった。


「そ、そうですわっ、『挿げ替え』」


「そう、それがあっ……」



「いけません!!」



 一同が声の主を見る。ディアレスだった。


「これを、マスターの願いを、前世界の希望を背負ったマスターの願いをっ!無かったことには出来ませんっ!」


 視線の先には魔神ファウ=ボルトが倒れている。


「……そうだね、『挿げ替え』た瞬間、世界は滅ぶね」


 そうだ、そして『挿げ替え』『滅び』『挿げ替え』『滅び』……後は、永遠の繰り返しが起こる。




『魔神』の脅威から世界を守る代償。それはファウ=バルドの命。


 この現実を頭では理解しつつ、納得できる者は誰も居なかった。


 こうして、『魔人ファウ=バルド』は歴史に名を残したまま永遠にその姿を消した。




魔人編の終わりです。駆け足ですいません。

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