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80:勇者と魔神


「これはこれは、お初にお目にかかるの。四翼世界の勇者殿」


 そう告げた老人は周りを一瞥した。


「実に見事ですな……『不戦勝』ですかの?」


 そこには戦闘不能になった者達が倒れていた。武器を抜いた形跡すらない。戦闘の意思を向けただけで無力化される。勇者ボルトの『不戦勝』。


「これは、失礼しました。挨拶がまだでしたな。わしは『世界鑑定協会』代表。ダギルス=オーニンと申す」


「単刀直入に聞くね。何故、八翼世界の『世界鑑定協会』が、わざわざ異世界である四翼世界の勇者一行に情報を流したのか?それも、この世界には伝承にすら残っていないはずの『魔神』に関する情報を……答えてもらえるかな?」


「もちろん。その為にお呼びしたのですからの。まずは、掛けぬか?」


 ダギルスは椅子をすすめる。ボルト、リセルナ、ウォボス、ミユウの4人は無言で座った。


「『魔神』の情報は四翼世界の者が無視できない情報だ。四翼世界の者なら誰でも知っている『魔神』。それが復活するかもとすれば必ず動く」


「僕らを動かすために偽の情報を流した?」


「そうではない。嘘ともいいきれない……が、真実とも断言できぬ」


「なんだよっ!煮え切らねぇなっ!」


 ウォボスが声をあげる。


「ウォボス、うるさい、だまって」


「す、すまねぇ」



「そもそも『魔神』とは。どういったモノなのかの?」


「どうとは?」


「ずば抜けた力を持つ一個人かの?軍の様な集団かの?」


「魔の神……と言うくらいですから、個人なのでは?」


 リセルナが答えた。


「わしら『世界鑑定協会』の目的は旧世界の文明の復活だ。そこで、遺跡発掘やらオーパーツの鑑定などして得た技術から世界間を移動し調べてきた。そうすると不思議な事が分かる」


「不思議な事とは?」


「四つの世界では『魔神』の痕跡は微塵も無く、四つの世界では『魔神』の伝承が残る。そこで、こう考えた。つまり今のこの八つの世界は『魔神』によって滅んだ世界と『別の理由』で滅んだ世界の寄せ集めではないのか……と」


「「「…………」」」


「話が逸れたの、『受け皿』とのモノがある。正に旧時代の技術の結晶とでも言うべきモノ。ソレの解明はわしらの悲願じゃった。その技術を広め豊かな世界を再び手にする。その為には悪事も謀略もおこなった。そして解明された。本来の名称は……」



『魔神システム』



「魔神……システム……?」


「そう、どう思われるかの?勇者殿……これは使って良い技術なのか?」


「悪い予感しかしねぇな……」


「私も、そう、思う。世界を破壊した、『魔神』を冠する、システムなんて、良いモノの、はずがない」


「おそらく、そうなのだろう。だからアノ男、ファウ=バルドは協力を拒んだ。これの危険性を感じ取っておったのか……」


 ダギルスの独り言のつぶやきだが、その男の名前ははっきりと耳に入った。


「ファウ=バルド?その男なら……今は自ら『魔神』を名乗っています」


「何?死んだと聞いておったがっ!」


 勇者一行は顔を見合わせる。アレはなんと表現すればいいのか?生きている?死んだ霊体?魂だけの存在?だが、あの時点では肉体を得ていた。


「そのファウ=バルドについて聞かせてくれないかしら?」


 私の身体から『宝珠』を奪った男。自身の中にあった『宝珠』の役割を知ったのは奪われてからだった。もし、知っていたら対処のしようもあったのだろか?


「元々は協会の一員。だが、『受け皿』の件で我々と対立関係になった。奴の『解析』優秀での……『鑑定』を超えるモノだったのは確かだ。奴が『解析』した技術は多い」


「他には?」


「か、家族が居た。……そ、それだけだ」


(ん?何かやましい事でもあるのか?)


 ウォボスはその反応をそう捉えた。



「理由は分かった。だがよ、この世界にだって勇者は居るだろう?以前来た時には三人の気配を感じたが?そいつらを頼れば……」


「二人は四翼の勇者の足元にも及ばない。もう一人は……」


「もう一人は?」


「勇者ディアレス。アレはダメだ。勇者と呼ばれながら何故、勇者と呼ばれるのかが皆目見当が付かんっ!アノの勇者は壊れている。そもそも勇者と呼ばれるべき存在ではないのだっ!」


 勇者ディアレス。八翼世界の勇者。ボルト達も会っている。


(壊れてる?とてもそうは思えなかったが……)



「そもそも、こちらが本題。恐らく四翼の勇者だけが勝てる。あの壊れた勇者に勝てる。『魔神』がシステムか個人か特定できておらぬが、個人であった場合……奴こそ『魔神』なのだ。根拠も存在するのだ!それがわしらの出した結論なのだ!どうか、勇者殿っ!」



「あの魔神を倒してくれぬかっ!」



「『魔神』かぁ、それが本当ならね。本来、そのつもりで八翼に来たんだし」


(バルドは『魔神』を名乗り何かしようとしている。勇者ディアレスは『魔神』だと言う。『魔神』の伝承が残る四つの世界と残らない四つの世界。神話が残る四翼世界はニッポンがあった世界の名残だ。伝承が残ることから、『魔神』で滅んだ……これは、知ってるけどね。むしろ……)


「勇者様?どうかされました?」


「ん?ちょっとね……」


(では、ここで『魔神』だとされるディアレスとは何者だろう?……不安要素は間違いなく彼女だけだ。まだ様子見か?しかし、彼女はアレを八個持っている)


 ボルトはリセルナを見る。


(頃合いか……)



「リセルナ、ディアレスの色は覚えているかい?」


「はい、ハージル城でお会いしてますから」


「なら、魔力探知をお願いするよ」


「どうなさるので?」



「決まってるさ、本人に会って確かめる!」



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