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78:日常


「ディア?」


「今は食事中だが?」


 ディアレスは俺の膝の上に横向きに腰掛け、腕は俺の首、顔を近づけて言った。


「ですから、愛のこもった口移しです。マスター。あーーん」


「あーーん、じゃないよ!」


 直ぐにレムリが引きはがす。


「離れてくださいっ。ファウ様のお食事の邪魔ですっ!」


「お二人はもう既に、夜な夜な可愛がってもらったと思いますが、私はまだなんですっ。これくらい、大目に見てもいいじゃないでしょうかっ?」


「「かっ、可愛がって」」

「「してませんっ!」」


 うん、今日も息ぴったりだな。


「ま、ますたー……うそ、でしょう?」


 何でお前がショック受けてるんだよ。訳分からん。


「お二人はかれこれひと月ですよね?健康な男女が一つ屋根の下に暮らして何も無いなんて……」


 確かに当初の予定ではそろそろ本命が来るはずなんだが、一向に姿を見せない。来るのは『魔神討伐』で名を上げようとする二流、三流冒険者。一流はそもそも来ない。自分達の太刀打ちできる相手ではないと理解しているからだ。


(そもそも俺は『魔人』を名乗ったのであって『魔神』ではない)


 レムリとスタアに負けて追い返された冒険者たちは、いかに強い相手だったかを街に戻り語る。その結果、『魔神を守る双子の鬼』の噂も今では常識になってしまった。


(こんな可愛い鬼が居てたまるか……)


 レムリと目が合った。


「はい、お茶ですね?お待ちくださいね?」


 スタアと目が合う。


「お代わりね?今日のは自信作ですわ」


 別に貴方の為に作った訳では無いと言いながら厨房へ消えていく。


(これって新婚生活みたいだよな……)


「これって、新婚生活みたいですねっ!」


 ディアが大声でワザとらしく叫んだ。


 お茶を注いでいたレムリがこぼし、厨房で皿の割れる音が聞こえた。


「私も混ぜてくださいよっ。マスター?」


「混ぜるってなんだよ」


「レムスタリア様が本妻。私は愛人でいいですよっ」


 テーブルのこぼしたお茶をふき取っていたレムリが湯飲みを引っかけて又こぼす。厨房では鍋が転がる音がした。


「ね?いいですよね?レムリ様?」


「本妻、本妻……。いいですね……」


「ほら、本妻の愛人許可がでましたよ?マスター」


 いや、今のは愛人許可じゃないだろうが。


 そもそも、こんなに和んでいていいのか?俺達にはやるべきことが……。


「そうだ、天気もいいし、お昼は庭で食べましょうっ!」


「なら、お弁当に詰めますわね?」


 スタアが厨房から顔を覗かせた。


「では、午前中でお掃除とか終わらせてしまいますね?ファウ様。午後はゆっくりできそうですね」



「張りつめてばかりだと、切れてしまいますよ?」


…………そういう事か。


「そうだったな、ディア。昼は庭にするか」


「はい、マスター」





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