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06:聖女は真実を語るか?(2)


 気を取り直そう。『天然』ではあるが故に会話の中に矛盾がみえる。逆に嘘つきならば破綻している。ハッキリとした真実。


「少し、いいかな?」


「はい?」


「さっき、貴女(あなた)はこう言った」


「あの状況を乗り切れたのは俺のお陰です……と」


「はい」


「ただ……あの状況が、先程の戦闘に対するモノだとしたら……。『心』『技』『体』『魔』『学』5つのトータルスペックで王国三位の第三聖女様が……神様に祈るほどの戦力じゃないんだ。あいつら」


「……」


 『レムスタリア』の顔から笑顔が消えた。


「貴女は嘘つきではない。今までの会話から上手に人を(だま)せるようには思えない。まぁ、色々と残念ではあるが……悪意はなさそうだ。そこで、本当のことを話していたと仮定すると……この一点」



「貴女にとっては()()()()()を前に、『何』を神に祈ったのか?」



 確かに神に祈ったのだろう。でもそれは、別の何かに対してだ。暴漢から救ってくれと祈った訳じゃない。


 命の恩人と成る方……と言った。まだ、成ってはいないのだ。暴漢から救ったことに対してで無く、これからなのだ。状況を乗り越えた?では、状況とはどんな状況だ?


 『レムスタリア』の表情は変わらない。


「結論を言います。わざですね?」


「わざと?」


 声が低くなった気がする。


「現に死人は出なかった。『聖女』の癒しで傷もふさがり自力歩行出来るまでに回復していた騎士達。『聖女』の力ならそれも可能かとも思った……」


()()、『ファウ』には心から感謝してますわ」


「俺はね、実際に貴女の身体を使って戦闘したんですよ。近接職でもない『聖女』での近接戦闘。流石(さすが)のスペックでした。」


「実際見たことはないが、得意の魔法を使っていれば騎士を巻き込むことなく更に簡単に制圧できましたよね?俺は、魔法が使えないから試せなかったけど」


 ここで一呼吸おく。




「言いたいことがあれば聞きますよ?」


「何故、()()そんな真似をする必要ありますの?」


「それが一番の謎だ」


 確かに幾つかの理由付けは出来るが確証は何もない。


「ひとつ、俺の仮説を聞いてもらえますか?」


「ええ」


「まず貴女は、本当は襲われていない、全て芝居(しばい)だったという説です」


 『レムスタリア』の肩がピクッと動いた。


「実は、敵側の剣の型。あれは間違いなく王国騎士団の型です」


 これは、俺の『解析』でも明らかになっている。


 『レムスタリア』は何も答えない。


「考えられるのは……。ひとつ、王国騎士が貴女の命を本当に狙った。ふたつ、王国の派閥が、貴女を人質に交渉の材料に使おうとした。みっつ、王国騎士団を首になり冒険者となった者が、恨みを晴らすために『聖女』を狙った」



「まだまだありますよ。ただ、それらに意味は無い。全てがひとつの条件下にて真実でなくなる……貴女の存在だ」


()?」


「そうです。先程も言いましたが『聖女』を襲うにしては戦力不足なんですよ。そして貴女が、戦闘に参加した形跡がどこにもなかった」



 沈黙が流れる。



「自分でも半信半疑なのですが、あの時あの瞬間に……」


 状況を乗り切った。状況とは何だ?……そう、俺が無事『聖女』の中に『転生』(?)することが目的だったと仮定すれば全て繋がる。


「俺が貴女(あなた)の中に入ることを知っていましたね?」


「そうして、一芝居(ひとしばい)打った。敵、味方といいましたがあそこには味方しかいなかった。確かに血の匂いは本物でした。しかし俺は傷を見たわけじゃない。倒れていて血塗れなら切られたのだと思い込んでしまうでしょう?」


(俺の『解析』で感じた殺意や欲情にしても聖人でもなければ妬みや嫉妬、ましてこれだけの外見なら色の対象として無意識化で感じていてもおかしくない。元々演技の才能のある騎士が混じっていた可能性もある。それがこの『聖女』様の頼みなら尚更張り切るだろう。俳優とは役になり切る者らしいからな。いずれにせよ『解析』の感度が高すぎるのも問題だ。最終判断、それをどうとらえるかは俺次第ってことか)


「……」


「血液は、病院の輸血用でも使ったのですか?」

 

 俺は姿見に映る『レムスタリア』から目を離さない。表情は(うかが)えない。


「ただ、これらは俺の想像でしかない。何故、芝居までして戦場を演出する必要があったのか」


 理由が分からない。




「もう……さ……い」


「ん?」


「あ~~~~めんどうですわっ!」


「え?」


「もう~いいわ!やってられませんわ!これもウザイし!」


 そう言って自分の胸元に手を入れると姿見に向かって何かを投げつける。


 なんだっけアレ。あぁそうだ。見たことあるよ。


 俺の妹も使ってたからね、胸パット。


「えーーーー!パット!?」


「ですから、大きさは個体によりけりですので、気を落とすことはありませんよと申しました。魔導パット。装着者の肌と一体化し、本物と見分けがつかなくなります。私の目を欺くことは出来ませんでしたが、普通であれば、まずバレる事はないので問題ないかと思われます」


「『ディア』よ、大か小か、真か偽かは重要なんだよぉ~!」


「マスター、今重要なのはそこではありません!」



 そして、目の前の姿見には不機嫌そうな顔をして、足と腕を組んだ小柄でペッタンとなった『レムスタリア』の姿があった。


 せ……『聖女様』はやっぱり『腹黒』?


(妹よ、やっぱり兄は女性不振になりそうだよ)


(マスターの空気妹のことは、今はどうでもいいです)


(空気妹とか言うな!なんか空気で膨らむ妹みたいになってるじゃねぇか!いるし!本当に妹いるし~)


(はいはい、訂正します。エアー妹ですね)


(訂正、そこじゃないよ!)



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