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俺と聖女でひとつの身体  作者: 天川 和
四翼世界編
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67:魔王救出戦6(ウォボスVSアオイ)


(リテリ様の夜を使わせていただきます)


『禁呪・……』


 最後はつぶやきとなり聞き取れない。


 印を結ぶ葵。魔力の発動はない、それは確かだった。


 だが、真っ暗だった夜空一面に星が輝きだす。それは、正に幻想的な眺め。


 会場の観衆がその夜空の美しさに見蕩れた。


「何をした?」


「…………」


「仲良く、星を眺めようって訳でもないんだろ?」


「勿論です」


(何だ、この女。現状、気になる気配も、魔力の行使も感じられねぇ。つまり、何もしてねぇって事だ)

「……んな訳あるかよっ!」


 ウォボスが仕掛ける。大柄で力任せの攻撃が得意かと思いきや、その動作は流れるように美しい。全くの自然体で力みもなくその攻撃は繰り出された。


「「『鬼神剣!!』」」


 その言葉に葵の表情が一瞬だけ動く。


「「『斬馬呪』両断」」!!


 ウォボスの鬼神剣は空間から現れた斬馬刀によって弾かれた。弾いた斬馬刀は黒い霧のように消えていく。


「まさか……神職」


「お?おお。良くわかったな。見えねぇってよく言われるぜ!」


「お前のは……呪術か?みねぇ流派だな?魔族流ってやつか?」


「…………」


「だんまりかよっ!まぁ、いい。こっちは急ぐんでな。早速で悪いが決めさせてもらうぜ!」


 ウォボスの頭の中にはボルトの時間制限の事もある。早ければ早いほどいい。


天叢雲(あまのむらくも)解放!!』


 只の金属の塊でしかなかったウォボスのソレは一瞬の輝きを放つと一振りの剣に形を変えた。そして、流れる動作で構えに入る。


「もう、弾くことは不可能だ!」


『鬼神け……』


「そこで貴方は動きを止める!」


「……ん」


 葵の言葉通りにウォボスの動きが止まる。


「な……う、動けね……」


「…………」


 ウォボスは無防備、本来なら好機のはずだ。しかし、葵は動かなかった。


「てめぇ……なにしやが……った」


 葵は動かない。


(なんだ、こいつ、俺を見てねぇ。何を見てやがる?)


 葵の目線を追う。


「そ……ら?」


 葵はただ、空を見ていた。戦いの最中に、相手はもう居ないかの如く。ただ、そらを見ていた。




「ウォボス?」


 構えたまま動かないウォボスを不審に思うリセルナ。しかし、自分の『魔力探知』でも反応はない。つまり、あの場では何も起ってはいない。


 そんなはずはない、現にウォボスは動きを止めてしまった。対する魔族は夜空をただ眺めている。何かが起こっているのだけは確かだった。



(何故だ、何故動かねぇ?)


 星が流れた。


「……そう、それでいいわ、十分(じゅうぶん)よ」


(……誰と話してる?)


 空を見る。星が流れた。


(そうだ、試合開始と同時に黒一色だった空に星が現れた。なら、原因の一番手はソレだ。魔力使用していない、なら……それに代わるもの)


 葵の使用した術を思い出す。


(触媒だ。魔力の代わりに何かを触媒として使用した)




 会場が騒めき出す。初めこそ動きはあったものの、その後は二人とも全く動かないのだ。


「どうしたんだろ?」

「何?どういう事?」

「初めの試合のように見えてないだけじゃない?」

「いや、あれは動いて無いんだよ」

「でも、あの魔族、凄い汗よ?動いて無くてああなる?」

「本当だ」




 葵の異変に気付いたのは魔王ルクスだった。


「いかんっ!」


 ルクスが一歩を踏み出そうとした。


「来ないでくださいっ!」


 それは、明らかな拒絶の意思。


「!!」


「まだ試合中です、ルクス様。また、私に後悔をお与えに?」


「お主は、ソレで良いのか?」


「はい」


 一瞬の間の後


「……うむ、分かった」


 とだけ、ルクスは答えた



 ルクスにリテリが訪ねる。


「魔王ルクス?どうしたのです?」


「葵の昔の呼び名を知っておるか?」


「ええ……呪いの真巫女でしょ?」


「本来は、『星読みの巫女』じゃよ」


 星の位置から運命を読む。数多くの可能性を読んで。読んで、読んで、関係のなさそうな事柄も含め、排除し、また含め、排除する。それを、数多く繰り返し、その中から真実の行動を正解を見つけ確定させる。


 それが『星読み』。ファウ=バルドと出会ってから『葵』が捨てたモノだった。


「葵はその『星読み』を行っておるのじゃ。いや、正確には真逆じゃな」


「……まさか」


 リテリは自分の創り出した夜空を見上げた。一面に輝く星が連続で流れる『流星群』となっていた。


「自ら星を配置することによって運命を捻じ曲げて結果を確定させたのじゃ」


「そんなことが出来るはずがありませんっ!」


「そうじゃな、正に女神アンニージェの領域じゃ、じゃが、単純な事。例えば人ひとりの動きを止めるだけなら……」


 二人は会場に目をやる。そこには動けないウォボスが。


「ウォボスは動けない……との結果を星を配置して確定させたと?」


「そうじゃろうのう。だが、重要なのはそこではない。使用している触媒じゃ」


(普段は素振りも見せないくせに、これほどのトラウマになっていたなんて……私が、お兄さんを灰にしたこと。それに、お兄さんを助ける為の策を練るから時間を稼いでって言ったのも追い詰めてしまったようね……。葵お姉さん、確かにこれなら確実に時間を稼げるわ。でも、その為に使うのが、たった一人の動きを封じる為に使うのが、自分の『命』なんて……ぜーーーったい、お兄さんに怒られるからねっ!)


「まさか、命を触媒に?なら、直ぐにでも止めないとっ!」


「いいえ、私達の言葉じゃダメなの。そして、勇者の中に居るのが本物なら……必ず動くわ」



 その言葉通り、その門は現れる。



「「「バステルの正門!!発動する!!」」


「「「バカ娘を拘束!!」」」



 呪いの門から放たれた鎖の束が『葵』に巻き付いた。それはもう、ぐるぐる巻きに巻き付いた。葵はミノムシ状態でぶら下げられた。


「バカかお前!!命を触媒にとかアホだろ!!」


(やってしまった……。絶対に(ろく)な状況にならないのにやってしまった)

(はぁ、結局こうなりますか。マスター?考えもなしに行動すると……)

(言うな、ディア)


 夜空の星々が一斉に流れ落ちる。『流星群』が一気に起こった。全て流れ落ち、夜空は再び黒一色に染まる。




「勇者側の介入により、ウォボスの失格!!勝者アオイ!!」



(あ、やばっ)



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