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俺と聖女でひとつの身体  作者: 天川 和
四翼世界編
67/268

66:魔王救出戦5(勇者ボルトVSレムスタリア)


「さて、では本気の聖女モードとやらを見せてもらおうかの?」


 試合が開始される。いつになく真剣なレムリ。高まる魔力。


「ふ…………」


 勇者ボルトですら、その魔力に構えを取った。


「ふ?」


「ふにゃ…………」


 突然、レムリはその場にへたり込んだ。


「あれ?力が……入りません……」


 それと同時に、ハジールを囲んでいた『蒼鏡』の魔力も飛散し始める。


「スタアお姉さん、まずいよ!牢獄を維持して!」


 非常事態に素に戻るルクス。


「こちらは大丈夫。問題ありませんわ」


「そう、なら良かった」



 会場の中央では勇者ボルトの勝利が宣言されていた。



「……に、しても。今のあの子は一味も二味も違うはずですわ……とは、誰の言葉だったか?」


「さ、さあ?」


「ふにゃ、しか言っておらんぞ。基本的に戦闘は早く終わる世界だが、過去最短じゃ」


(やはり我のレムリヘッポコ説は正しいようじゃ)



 場内の観客は何が起こったのか理解していないようだ。


「何、何?」


「開始と同時に勝負が終わったわね」


「勇者様に恐れを成して降参したんだろ?」


「流石、勇者様」


「でも、戦う姿も拝見したかったわ~」


 湧き上がる勇者コール。勇者側の二勝に会場は異様な盛り上がりをみせる。


「君?大丈夫?立てる?」


 手を差し出す勇者ボルト。敵であってもこういった行動を取ってしまう。基本的にいい人なのだ。


「貴方の助けは結構です」


 レムリにしては珍しい、好意に対する拒否だった。


「そう?じゃ、僕は戻るね」


 勇者ボルトは歩き出す。


「いやいや、待て。ボルト。立てない女の子を見捨てて戻るのは勇者のすることじゃない」


「だって、彼女がいらないって……」


「もういい、代われ。俺に任せろ」


「君はいつも強引だなぁ」


 俺はレムリまで引き返す。


「まだ、何か?」


 俺は、片膝をつきレムリの目を見つめて言った。


「ここまで来るのは大変だったか?第三聖女()()?」


「え?」


「大丈夫だ、俺の手を取れとは言わない」


 駆け寄ってくるスタアの姿が見えた。レムリ自身にも後遺症などの心配もないようだ。


 『不戦勝』か……。これ、やはり無敵じゃないか?しかもアクティブ・スキルって常時発動かよ。


「ひとつ、魔王ルクスに伝言を頼みたい」


「伝言?」


「黒死とニージェは元気か……と」


 その言葉にレムリは考えを巡らせているようだ。スタアがやって来た。俺とレムリを交互に見る。


「レムリ、立てる?」


「ありがとう、スタアちゃん」


 スタアの肩を借りて立ち上がった。


「では、俺はこれで」


「お待ちください。伝言するにあたってひとつ条件があります」


「ん?」


「一つ質問に答えてください」


「質問?……分かった」


「二つの心を持つ者がいます。でも身体は一つ。いずれは一方が消えなければならないとしたら、貴方はどうしますか?」


 答えは決まっている。


「どちらも救う」


「それが可能ですか?」


 これの答えは、『可能だ』だ。だがレムリが求めているのはそれじゃない。だから俺はこう答える。


「ん?ああ、出来るよ」


 …………と。


 レムリの瞳から涙が一気に溢れ出す。スタアもそのやり取りで気づいたようだ。


 そして、俺は勇者陣へ向けて歩き出す。



「…………見つけた。見つけたよ。スタアちゃん」


「そうね、あんな台詞を真面目な顔で言えるのは、あの人くらいよ」


「…………スタアちゃんもこの前言ってた」


「そ……そうでしたわね」


 スタアの目にも涙が光っていた。


「でも、何でこんな伝え方?手間が掛かるだけで……」


「何か理由があるはず。とにかくルクスちゃんへ伝えないと」


 レムリは無意識に仮面を取った。取ってしまった。


 本人は涙を拭こうとしたに過ぎないのだが、素顔を晒してしまう。


「なんだ?あの魔族、すんげー可愛いんだけど」


「まじか、リセルナ様と甲乙つけがたいぞ?」


「何、泣いてるの?」


「負けて涙とか、俺やばいかも」


「本気か?魔族だぞ」


「可愛いに魔族も何もあるか、正義だ正義」


「何て名だっけ?」


「レムスタリア」


「蒼の聖女っていってたな。俺、信じた」



 そして、この行為がやがて四翼世界にひとつの革命を齎す切っ掛けとなることを……知るものは誰も居ない。



「ご苦労様でした」


「無敗だな、ボルト」


 到着した時点で俺はボルトに代わっている。


「うん、ありがとう」


「でも、これで勝ちが確定したな。例え後二敗しても五戦目でボルトが出れば三勝だ。もっとも俺も負ける気はしねぇけどな」


「では、次は私が……」


「いや、俺が出る。リセルナは最後だ」


「何故です?」


「まぁ、あれだ、戦いの血が騒ぐってやつだ。じっとしていられねぇ」


 勿論嘘だ。リセルナはボルトの傍が一番安全。ウォボスはまだ、魔族達のリセルナ狙いの可能性を捨ててはいなかった。ならば、自分が出て三勝してしまいさえすれば危険は格段に減る。もちろん、勝利が確定したからと、魔族が大人しく引き下がるとも考えていなかった。


「じゃぁ、行ってくる!」


 ウォボスは中央に向かう。ミユウは自分の殻を破り強さを手に入れた。それは肉体的な事ばかりではなく精神的な意味でもだ。


(俺だけ置いて行かれる訳にはいかねぇ!)




「葵、いいわね?貴方には負担を掛けるけどお願いね」


「はい、式神は使わず呪術のみですね。了解しました」


「後、聞いていたと思うけど、ファウ様が勇者の中に居る可能性が高いの」


「引き伸ばしですね」


「そう、魔王ルクスが対策を練るから出来るだけ長く。頑張って!」


「はい!」


 葵には一つ後悔がある。それは、既に記憶でしかなく実際には無かったことになってはいる。しかし、ファウ=バルドが魔王ルクスに消されたときにその場に居ながら動けなかったこと。ただ、見ているだけしか出来なかったこと。


 それが、この場に居る可能性が出てきた。ならば、これはあの時できなかったファウを救う戦いだ。


(あのバカを、今度こそ救う!)



 二人は中央で対峙する。それぞれに想いを込めて。


「ウォボスだ。手加減はしねぇが、殺しやしねぇ。安心しな」


「魔王軍四天王、真巫女アオイです。私も手加減はしません。死んでも恨まないで」


「おいおい、死なせたら負けだぜ」


「ええ、でも、この戦いにはそれ以上に大事なものが掛かっているの」


「了解した。受けて立つぜ!」




「「三回戦!ウォボス対アオイ!」」



銅鑼の音が響き、三回戦が始まる。



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